おれさまコラム:温泉自殺紀行

 会社員にとって休暇ほどうれしいものはない。それも長ければなおさらだ。連休、行楽。なんて甘美な響きだろうか。事前に計画ができれば。

 年末がんばってお仕事をしたぶん、休暇をたんともらえることになった。が、それが決まったのは休暇直前。いかん、他の会社員仲間はもう誘えない。そうそう急に長い休みなど取れるわけもない。主婦も無理。子供は学校に行くからむり。いかん、このままでは一人寂しく冬の海に向かって叫ぶことになる。

「ばかやろーっばかやろーっばかやろーっ


 そんなとき、心強いのはフリーターのみなさんだ。ある程度は融通が利く。今回はうまいことに古くからの友達がつかまった。酒も飲めるし話も合う。しかし性別はオス。結局男二人で冬の伊豆温泉ツアーとあいなった。

 だるーい感じでまとまった企画だけに、出だしからだらけていた。おれが遅刻して乗る予定だった特急に乗り損ね、かつ友達は「これに乗る予定なんだよな?」ということで特急に乗車。品川では集合できず、横浜集合となった。鈍行グリーンというダメなんだかぜいたくなんだか微妙なノリで伊豆に到着。レンタカーを借り、レッツ、ゴー!となるところなんだが男二人ではなんとも様にならない。こういうときだけは女はいいなぁと思う。さまになるから。男2人ではどうしても自殺しにきたようにしか見えない。懸命に観光地図を渡してくれたレンタカーの店員がいのちの電話の番号を教えなかったのは、ちょっとした気配りだったんだろうか。

 部屋に入りたらふく酒を喰らい、地の魚を食ってる間はそらー楽しい。値段を気にせず、眠くなったらここで眠ればいい。旅行の真髄はここにある、と思うのはおれだけか。  翌日、なにも部屋でごろごろしてるだけでは能がないので南の温泉をめざすことに。これもまた絵にならない。かわいらしいホンダヴィ○ツにむさいのが2人。港に立つ日帰り温泉へと向かった。冬の平日、観光客もまばら、というかほとんどいない。これ、やってんのか?と思うと客はいないが受付は空いていた。聞くと露天風呂へは外を歩いて3分だとか。むぅ。海にいくってーのは、またなんとも自殺しそうな...  脱衣所の前に来ると、偶然中から人が出てきた。男2人。女湯に人気がないところを見ると彼らも自殺ツアー中のようだ。向こうもちょっとギョッとしてたが、かまわず風呂へ。そりゃーもー、貸切で。冬晴れ、青い海、少し強い風にあおられるしぶきがなんとも豪快。これはやっぱり自殺っぽいなぁ。風呂はいいんだけどねぇ。やっぱ時期とメンツの問題か。

 帰りの電車を待つ駅で、友達があることに気が付いた。

「意外と多いね、自殺ツアーの人たち」


まぁ、駅にきてるってことはみんな踏みとどまったんだよ。きっと。