おれさまコラム:不機嫌なアガシ(後編)
(前編まとめ:たまたまであったアガシは日本にうんざり。いかにして彼女のハートをつかめばいいんだ?おれ)
「だいじょぶだよ。無視してりゃいいんだって。わかんないところは訳してあげるから。」
「うーん、ありがと。ちょっとほっとしたわ。」
なんだ、なんだ。友人の友人にはとても悪いが、なかなかいい感じじゃないか。顔はそれほど好みではないが、出会いってのは大切にせねばいかんよ、たぶん。会話はいい感じに進み、日本についての話になった。
「ねぇ、日本語で"ぷぅわん"ってなんていうの?」
「"ぷわん"?"ぷおん"?」
むぅ。韓国語発音は久しぶりだ。ザとかツとかフォとか一部の音は韓国語にないため、どうしても聞き取りづらいのだ。れっちゅごー!ぴじゃ!ぴらでるぴあ!(Let's go! Pizza! Philadelphia!)彼女はいったい何を伝えたいのか?瞬間連想ゲーム開始である。そういえばちょっと前に韓国へ電話をかけたがっていた。が、現代日本には公衆電話はそれほどない。あってもICカード式とかで、そう簡単に国際電話はかけられない。そうか、電話だなぁ?
「"でんわ"だよ、電話」
「denwa...でんわ.....。OK!」
国際交流の第一歩は言葉への関心だ。いやぁ、おれ、いいことしてるよ。これですこしでも反日ムードがおさまれば。すると彼女は友人の友人へつかつかと進み、大声でこういった。
「わたしはでんわ。わたしはでんわ!」
彼が凍りついたのがわかった。しかし彼女はうれしそうにつづけた。
「でんわ!でんわ!」
明らかに電話を探しているふうではない。それではいったい...
「でんわ?ふぉーん?」
「のー!ぷぅわん!ふぅわん!」
おー、のー。彼女は「It's FUN」といいたかったらしい。ならそういえよ、と思うが、彼女なりに必死に発音していたんだろう。聞き取れなかったおれのミスだ。丁重に彼女を引き戻し、再度「たのしい」という言葉を仕込んだ。こんどこそ大丈夫。
「わたしわたのしい!」
「おー、おーけー、ぐーっど。」
通じた、通じた。よかった、よかった。めでたく異文化交流できたよ。いい思い出が出来てなによりだ。その後、帰りがけに友人の友人に「間違った日本語を教えないように」と厳重注意を食らったのはご愛嬌ってことで。