民家から考える環境

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今回、私の家「桃源庵」を改修するについて、改めて民家と環境のかかわりを学び考えさせられました。もともと昔の家は、地域の地場の素材で建築されていました。そして、素材ごとの特性を良く知り、それらを巧みに組み合わせて建てられていました。特に伝統的な民家に、立地条件の選択から、素材の合理的な使用方法などを学ぶことができます。

立地

 建物は、天竜川の氾濫原より一段高い丘(河岸段丘)にあり、東側には緩やかな山林を抱え南向きを正面にして立地しています。山の麓からは湧き水が出、これを飲み水や池に利用しています。山林からは、薪炭材、きのこ、落ち葉などが採取でき、暮らしや農業に役立っていました。
 過去の幾度の台風や地震の災害にもかかわらず、この地は大きな被災も無くこれまで経過してきました。過去の人間は、暮らす環境の安全性、快適性について科学技術を用いなくても、自然を理解できる能力(直感「五感」)が鋭く、先人の経験が言い伝えられ、適切な判断ができたのでしょう。
 新たに家を建てられる人は、その地盤が安全か、山崩れはどうかなどと大きな経費をかけてボーリングなどの地質調査を行う前に、その地方で代々続いている民家などを知れば、その周辺は安定した環境であることがわかります。図書館辺りで災害暦を調べれば、過去に河川が何処まで氾濫したかなども解ります。また、地名で〜清水などが多い地域は、湧水が多いことも解ります。環境を知るには、自然科学的なアプローチばかりでなく、歴史文化的なことから学ぶことも大切で、意外に役に立つものです。

建物

 ○建築素材  梁・・・マツ、柱・・・ヒノキ、大黒柱・・・ケヤキ、土台・・・クリ
        風呂・・・サワラ、ヒバ
        壁・・・竹のこまいに赤土+漆喰塗り、間仕切り・・・障子、襖、板
        畳・・・い草
        家具・調度品・・・ヒノキ、ケヤキ、トチ、ナラなどの漆塗り
 全て、再生可能な自然素材で組み合わされ、古くなり傷めば取替えが可能です。また、仮に全てを取り壊しても、自然に還る素材ばかりですから、廃棄物の問題も生じなかったわけです。

  ○気候対応

夏・・・南向きに庇を深く設置することにより、直射日光を避け、南から北に風が通り抜ける構造となっています。日本は温帯モンスーン気候で夏蒸し暑いため、古来より家を建てるときは、「夏を旨とすべし」といわれ、夏に涼しい家を建てることが長持ちさせる重要な要素でした。実際、夏の民家は、土間と吹き抜け構造による効果もあり、外気は30度を超えていても、内部は、20度台に保たれています。もちろんエアコンは必要ありません。
 この庇は、冬になると日差しが家の中まで差し込むように、その角度が夏至と冬至の太陽の位置を考慮して角度と長さが決められています。

樹木等の配置 

 ○正面南向きには、池を配置し、落葉樹中心に植栽され、水と緑により夏涼しく冬暖かい環境を形成させ、北側には、 冬の北風を防ぐために、常緑樹の垣根、竹藪を配し、自然の力を巧みに利用していました。
リサイクルを支える家畜たち 

 ○今はもう何処の家にもいませんが、かつてそれぞれ民家では、農耕用の牛、肉用の豚、ミルク用の山羊、兎、採卵用の鶏、それに池には、鯉がたいてい飼われていました。豚は雑食性で、少しの食べ残しは、ほとんど豚に与えました。唯一唐辛子類は豚の命にかかわるため、必ず取り除いていました。牛のえさの塩分も気をつけなくてはなりませんでした。山羊も、栄養豊富なミルクが取れるため良く飼われていました。山羊は、春のれんげ畑が大好きで、豆科のレンゲを食べるとよくお乳が出ました。乳絞りはたいてい子供の役です。機嫌を損ねるとせっかく絞った乳の器を、後ろ足で蹴飛ばされ、こぼして悔しがったものです。兎は、アンゴラ種を飼い、春に毛を刈り取り販売し、脂分の少ない肉が取れるため、ときどき食用にされました。鶏には、固い殻の卵を生んでもらうため、野草の他に貝の殻を必ず与えていました。鶏は、狐などに捕られないため夕方には、必ず、鶏小屋に追い込んで、鍵をかって管理しました。鯉も雑食性でたいていのものは食べてしまいます。最も好きなのは、昆虫類で、中でも蚕の幼虫、蛹には目がありません。冬にはえさを与えず、内臓をきれいにしておいてから、生け捕り「甘露煮」にして食べます。これは、今でも伊那谷の名物です。鯉は素人には料理することはできません。それは、胸の辺りにとても苦い胆嚢があり、これを包丁でつぶしてしまうと、身が全て苦くなり食べれなくなってしまうのです。このため、頭を落として、次に包丁を入れるときに、位置を確かめつぶさないように取り除く技が要るのです。
豚や鶏の糞は、藁と一緒に堆肥として、有機肥料として利用されていました。

まだ百年持つ民家

 ○桃源庵はすでに築130年。しかし、柱などしっかりしたものを使用しているため、今後100年は十分持つと大工さんからもお墨付きをいただきました。自然素材でしかも良いものを長く使う。自然に帰らないと困ることもありません。これが循環型社会の秘訣です。

近くの山の木で家を造ること・・・循環型社会の基本

○日本は、国土の67%が森林という、世界でもフィンランドにつぐ森林国でありながら、使用している木材の8割が外国材です。建築材、建設資材、木材製品、紙などが主要な用途です。現在は、カナダ、ロシア、北欧三国などからの輸入が大部分を占めています。いくら売れるからといって、これ以上日本の紙にするなという、反対運動が起きている国もあります。一方で、日本の森林は、戦後一斉に植林されたスギ、ヒノキなどの人工林が、間伐期を迎えていますが、木材価格の低迷などにより、手入れをする人は少なく、健全な森林づくりが危うい状況です。間伐が適切に行われないと、モヤシのような木が育ってしまうということになり、いざ国産材が必要になったときに供給できないばかりか、林内が暗くなり下草が育たないため、山の保水力も低下します。日本の年間の木材使用量は、約1億立方メートルに対して、日本の森林の成長量は、約8000から9000万立方メートルと、ほぼ国内需要を賄える状況にある中で、国産材は2割弱しか使用されていません。
 このような状況となったことは、さまざまな要因があります。
@経済のグローバル化により、どこからでも安い木材が手に入るようになった。
A住宅メーカーなどが輸入木材使用による規格化統一化した住宅を売りだし、目新しさ、工期短縮、脱職人化など、   消費者の新たなニーズを喚起した。ある意味で住宅も使い捨て時代となった。
B林業家、製材業者、大工、建築士さらには自治体などが、国産材使用のメリットを十分消費者に訴えられなかったことや、流通体制の効率化や材の規格化などに対応してこなかった。
C大きくいえば、資本主義がグローバル化し、金銭の力で商社などが世界から農産物や林産物を買いあさり、日本の農業と林業は疲弊し、世界の土地・水・緑は消費されたという構図です。WTOの何でも自由貿易化路線は、その国の土地や水や緑という、環境の特性が付いて回る限り、工業製品とは違い農林産物についてははなはだ疑問です。
 しかし、近年になって高度成長期に建築された新建材による建物には、健康、安全、廃棄物の増加などの点から様々なデメリットがあることが解り、現在の消費者は、すこしづつ国産の無垢材で住宅を建てる大切さがわかってきています。全国的にも、近くの山の木で家を建てる運動が広がりつつあるのもその証拠です。
  国産材は、人件費等の関係で確かに価格が外国材より高いですが、実際に住宅に占める木材価格は、多くて2割くらいですので、国産材と外国産材の価格の差は、建築価格全体にはそう大きな影響は無いのです。ただ、建築士からは、地元の材を使用したいが、安定した供給体制がないといわれ、このことも地元材が使用されない大きな原因となっています。
  価格を下げるためには、木材使用の方法や、耐余年数も考慮する必要があります。全て節無しのものを使用する必要は無く、また、使用場所により木の種類、使う木の部分などきちんと使い分ければ、安くも長持ちもできるのです。最近の建築士、大工さんは本当に木を見ることができる人は少なくなっています。このことも大きな問題です。そこで、生産から消費までの関係者が連携して市民活動を行い、森林と住まいの講座等を開催し、消費者に正しい理解をしてもらうことや、建築関係者に木の育成から建築材までの過程を学んでもらうことも大切なことです。
 日本の木を適切に使うことにより、日本ばかりでなく世界の森が守られます。また、地球温暖化防止のため、二酸化炭素の吸収源として森は注目されています。最終的に不要な間伐材や廃材を燃料として使用しても、化石燃料と異なり、空気中の二酸化炭素は増加しないのです。樹が大きくなるときに炭酸同化作用で二酸化炭素を空気中から取りこんでいる為です。住宅材として長く使用すれば、その間二酸化炭素を固定しつづけ、切った後に植林すれば、また若木が二酸化炭素を十分に吸収して育つのです。木は何度でも育てることができるし、建築材としての寿命を終えても、最終的には自然に還元され、廃棄物の削減にもつながります。健康で安全しかも環境に優しい素材であることから、地元の木で造る住宅等をもっと増やす必要があります。夏風通りが良く涼しく、冬は人間自身が少し工夫して過ごすというのが家の建て方の基本です。一年中同じ温度湿度の家を造りたいと考えがちですが、気候の変化があってこそ、五感も適応能力も養われるのです。僕等は、最後は老人になりそのような環境も欲するでしょう。それは、そのような工夫が家の一部にあれば良いことです。特に、生まれたばかりの子供の頃からそんな家ばかりに暮らせば、どんな人間が育つのでしょう。ヒトという生物が永らえていくには何が大切か忘れてはならないでしょう。 皆さん、もっと山林のこと、木のこと、住まいのこと学びましょう。そして、地元の木で家や家具を造ってもらいましょう。

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