ママゴンの逆襲
| 人間やって、○十年・・・、最近パソコンを始めた。こんなに便利で楽しいもの、若い人だけに使わせておく手はない!一日中、シチュウだ、アップルパイだと、
台所に入り浸りなんて、もう、イヤーダ。 「ママゴンの逆襲だー。」と、マウスをにぎったものの、良い考えが浮かばない。とりあえず、誰にも負けない思い出の数々、好きなように書かせてもらいます。笑わないで読んでね。 Tomoko (2002.3) |
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目 次 ![]()
| 落日 | 2003.9.22 |
| 乳頭登山 | 2003.9.11 |
| ピカソと光源氏 | 2002.10.29 |
| 祭り | 2002.8.16 |
| 雨のち晴れ・・・ | 2002.7.22 |
| プレスリー | 2002.5.1 |
| あめ玉 | 2002.4.28 |
| バイオ | 2002.4.6 |
| 白鳥 | 2002.3.13 |
| 黄色いリンゴ | 2002.3.3 |
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| 「T子ちゃんは、不良だから一緒に遊んじゃだめよ。」 母にそう言われても、不良の意味がわからなかったが、危険な匂いを感じ取ることはできた。終戦から四、五年が過ぎ、T子は中二、私は小学四、五年生の頃だったと思う。 T子の家はとても開放的で、不思議な魅力があった。T子の二人の兄の友達が自由に集まっては楽器をならしたり、最新の電気製品があったり、当時珍しかったミニチュアの汽車を、三つの部屋に巡らした線路で走らせたりしていた。近所の子供達もいつの間にか集まって来て、半日を過ごすのだった。 不思議なことに、T子の両親を滅多に見かけることはなく、一体何の職業なのかわからなかったが、夏の間だけは母親がいて、「氷屋さん」をやっていた。「T子、氷買っておいで。」母親に言われると、T子は私を誘って町はずれの馬鹿でかい小屋に入って行った。 薄暗い小屋の中は、おが屑の山で、ひんやりとして心地よかった。入り口のおじさんにT子がお金を渡すと,おが屑の中の氷を鋸で切り、荒縄で十文字に縛ってくれた。後年、これが氷室だと知った。 炎天の中、T子と私は氷が溶けないように駆けて帰ると、待ちかまえていた母親は、おが屑だらけの氷をバケツの水で洗い、「お駄賃ね。」と言ってイチゴ氷を作ってくれた。 早春のある日、「ハリー、いっしょに行こう。」と、T子は行き先も告げずに歩き出した。そこは町はずれの病院で、長い廊下の一番奥の病室のドアをT子は躊躇なく開けた。青白い八人程の男達の眼が、T子を見た途端、生き生きとして、半身をベットの上に起こした。「T子ちゃん」「T子ちゃん」と、声を掛けられ、アイドルの様に振る舞いながら、うれしそうなT子は、後ろの私に「廊下で待ってて。」とドアを閉めた。 笑い声と楽しそうな様子が部屋の外まで聞こえてきたが、私は寒さに震えていた。所在なく窓の外に目をやると、凍て雲を染めては刻々と変わっていく夕茜の色が、入り日寸前を知らせていた。やっと部屋から出てきたT子の腕の中は、お菓子や果物でいっぱいで、満面笑みを浮かべていたが、病院を出た途端、急に険しい顔で 「今日のことは、絶対誰にも言ってはだめよ。」と、言いながら、黄色いリンゴをひとつ私に押しつけた。 あの日のリンゴを家に持ち帰ったのか、捨てたのか、未だに思い出せない。そして、黄色いリンゴを見るたびに、あの日の茜色の雲が蘇る。 「この程度じゃ不良って言わないよ。」と、今の若い人に言われそうだが、知らない異性と話をするだけで不良のレッテルを貼られた頃の話である。 |