キーストンというのは、ぼくが知る数少ない馬です。

最速の逃げ馬として連勝し、ついにはダービー馬までのぼりつめたものの、レース中骨折して薬殺処分された悲運の名馬。

なんでぼくが知っているかというと、子供のころ、マンガで読んだから。

「雨のキーストン」というタイトルで、作者は忘れた。読み切り掲載された作品だったと思います。

マンガでは、頂点を極めた後、このレースを終えれば引退・種牡馬としての余生を送れるという間際で骨折・薬殺という悲劇的展開で、おさないぼくは悲しくて泣いたものです。

脚が折れるほど走るって、想像できますか?

走るために極限まで磨かれた宝石・サラブレッドは、全力で走ると体重の何倍もの負荷がその細い脚にかかり、骨が砕けるリスクがあるのだそうです。

そして、一本でも脚が折れると、残り三本では体重を支えきれないため、薬殺処分されるケースがほとんどなのです。

そうまでして走るのはなぜなんでしょう。

馬は賢い動物です。虫が光に向かって飛ぶような、たんなる反射ではありません。

彼・彼女らには、自身のなかに、走る理由を持っているのです。

お金のためではない。

名誉なんてわからない。

競争心もあるとは思います。並べられて、ヨーイドンで走りだす。負けたくない、という気持ちがきっと馬にもある。

でも、負けん気だけで、脚が砕けるまで走れるものでしょうか。

ぼくは、そうは思わない。

たぶん、自分が走って、勝つと、まわりの人間が心から喜ぶから――そのために走るのではないでしょうか。

青臭い理想論かもしれません。

でも、馬には人の気持ちがわかるのです。

調教師や厩務員・騎手の心をのせて、彼らはフィールドを走るのです。

もしかしたら次の瞬間、脚が砕けるかもしれないリスクを抱えながら。

馬は、そういう生き物なのです。たぶん。

あ、言い忘れました。

あけましておめでとう。

今年もよろしく。