2002年に読んだ本

ベスト10

 1、死にぞこないの青(乙一)

 2、聖母の深き淵(柴田よしき)

 3、兎の眼(灰谷健次郎)

 4、翼(村山由佳)

 5、RICO(柴田よしき)

 6、暗いところで待ち合わせ(乙一)

 7、白夜行(東野圭吾)

 8、バグ(松岡圭祐)

 9、群青の夜の羽毛布(山本文緒)

10、冤罪者(折原一)

次、神様のボート(江國香織)

タイトル 作家名 評価 寸評
再生の朝 乃南 アサ ひとつの事故(事件)を通してそれぞれの人生が変わっていく。希薄だった人間関係がトラブルを通しまとまっていく。テーマはありきたりだが書かれている内容は濃い。未来を予感させる朝もいい。
東亰異聞 小野 不由美 伝奇ミステリとしてはなかなかの傑作。鷹司家の運命というか業というか切ない絡みもポイント。ラストに出てくるある人物がなんとも不気味で作品をもうひとひねりしてくれた。
美しき凶器 東野 圭吾 あれ??どうしたのだろうか?東野作品にDをつけることになるとは残念。展開が面白かったのに結末が・・・というのは「イヴの原罪」にひきつづいてのこと。ラストに何かあると思っていたがよくわからずじまい。
イヴの原罪 新津 きよみ 興味深い展開を提供しておきながらこの無責任なオチはなんだろう?これではミステリーとしてもラブストーリーとしてもサクセスストーリーとしても悪女の話としても中途半端だ。途中まで面白いのに・・・。
ガール 桜井 亜美 あまり読者のことを考えてないのだろうか?時代に対する警鐘を自分の文章がしているのだという自己陶酔にひたってはいないだろうか?こういう小説も好きな人もいるだろうが、力量には疑問。
ファイナル・ブルー 永遠 桜井 亜美 トレンディな文体を心がけ今風のスタイルで現代人にメッセージを伝えようとしているのだろうか。完成度は二流で心に何も届かなかった。小説ではなく女子高生の生の声でもまとめたつもりなのかな?
きみにしか聞こえない Calling you 乙 一 切なさを短編で書かせたら東野圭吾を越えるだろう。標題作もいいが「傷〜KIDS」のアサトのピュアで繊細な心と行動にはただただ感動。美しすぎる犠牲愛がそこにある。
失踪HOLIDAY 乙 一 今作はライトタッチミステリーといったところか。大どんでん返しとまではいかないがそれなりに結末は練られている。またその結末がどこかしら温かみを持つものであることはいうまでもない。
三人の悪党 浅田 次郎 個性豊かな三人のキャラをたててユーモラスな話を狙った作品。個人的にはこの個性が魅力的には思えなかったのでそれぞれのエピソードにあまり惹かれなかったのが残念。
死にぞこないの青 乙 一 読了後、しばし放心状態に陥った。間違いなく今年最高の作品。露骨ないじめとは違ういじめがここにある。それに対してマサオがとった行動には注目。ラストのメッセージを聞き漏らす事なかれ!ちなみに読み終えた日、すすずと夜中まで語らいました。→コラム「死にぞこないの青」
天帝妖狐 乙 一 切なくも温かい気持ちを描かせたら本当に一級品。短い文章の中に凝縮されたドラマがいとおしくも哀しい。非凡な才能をここでも感じさせられる。
誘拐者 折原 一 丁寧に構成された作品で解説にもあるとおり中盤の展開に力を感じる。今回残念ながら自分の予想が当たらずも遠からずという感じだったのでトリックを楽しめなったので残念。
夏と花火と私の死体 乙 一 やはり天才というべきだろう。デビュー作(当時16歳)にしてこのクオリティ。文体の幼さがむしろ確信犯とも思えるくらいの余裕を感じる。そして今までのホラーをあざわらうかのような全く無理のない怖さ。こんな題材でこんな展開でどうしてホラーたりえるのか!?もはや衝撃である。
コスメティック 林 真理子 良質のB作品。化粧品業界という舞台でのあつい女の闘いを見事に描ききっている。それでいて泥臭さがなく現実を直視してからっと仕上げている。作者の安定した力を十二分に感じ取れる。おすすめ。
不安な童話 恩田 陸 「小夜子」のような鋭さが感じられなかった。ここのところ精力的に作品を発表している反動か?平凡な印象しか残らず期待はずれの感は否めない。
地下鉄(メトロ)に乗って 浅田 次郎 ノスタルジックな雰囲気にひたりながら読める作品。自分の親の過去に出会ったとき主人公が感じたことは!?子の知らない親の過去。とても温かみがあり優しい物語。
暗いところで待ち合わせ 乙 一 ああ、なんか素敵な話。物語に夢中になる自分がいる。それぞれの心に触れて震える自分がいる。良かったと絶賛している自分がいる。もう本当に最高です。この文章、天才の書くものです。
ワイルドフラワー 辻 仁成 三人の男がそれぞれ自分自身を突き詰めていく。荒っぽいが繊細な物語である。真剣な姿勢、行動が読むものをひきつける。中心となる神秘的な女性も最後は平凡な一面を見せるのが印象的だった。
落花流水 山本 文緒 ストーリーや主題にはC評価としたいのだが作品の構成力が見事というしかない。異なる世代を異なる視点からみつめていくというのは斬新だった。しかも飛ぶ10年が効果的である。
ゼロ 柴田 よしき 残念。「ゆび」で感じたよさはどうやら見当違いだったようだ。設定そのものは非現実世界に終始し怖さもそれに起因してしまう平凡なSF作品に落ち着いてしまった。
兎の眼 灰谷 健次郎 昔、教科書で出会ったすばらしい作品の香りがした。この作品には僕自身が国語を好きになった文章がつまっていた。もう少し児童文学にも目を向けていきたい。教育関係者は必読。
ガダラの豚 中島 らも 展開はなかなか面白いのだが結末にがっかり。○○が本当のキジーツならそれまで本物と思われてたものが何故効果があったのか。矛盾が次々と出てきて納得できなかった。
BAD KIDS 村山 由佳 初期の作品だけに幼稚さと鋭さが同居しているような感じ。ただ彼女の感性は若者の心をつかむだけのものを持っている。一見、幼い表現の中にドキッとさせられることがある。
飛ぶ夢をしばらく見ない 山田 太一 「異人〜」「丘の上の〜」と同じく超常的世界の中、様々な形(世代)の性愛がつづられていく。観念世界だけに頼らない官能的な表現は独特で鋭いが個人的にはあまり好きになれない。
ゆび 柴田 よしき かなり怖かった。最初「ゆび」そのものが怖かったが最終的に人間の業に怖さを感じることになった。ホラーではないが星新一さんもかつてショートショートの中でこういう部分を皮肉っていたのを思い出す。
風神の門 司馬 遼太郎 理由@才蔵が魅力的でないA忍術がつまらないB幸村との関係が希薄C人間味に欠ける 「竜馬がゆく」(A評価)のように人物としての魅力を描かない限り歴史小説はつまらない。たとえそれが史実だとしても。
月神の浅き夢 柴田 よしき 緑子の生き方は本当に壮絶。誰も文句が言えないくらいだ。今回は警察・刑事というものと自分の関わりにまでテーマが広がりますます重厚な世界が展開された。緑子以外の人物も魅力にあふれている。
聖母の深き淵 柴田 よしき 二作目にしてすっかりRICOの虜になってしまった。今作でも前作を上回る出来。孤独で悲しい物語の中、母になった村上緑子の壮烈な生き方が読者の心を強烈に揺さぶる。必読。
仮面山荘殺人事件 東野 圭吾 読了後、強烈な余韻が僕を襲った。本当に切なさにかけて東野さんの右に出るものはいないだろう。懲りすぎた設定に作品としてマイナスをつけたが主観的に評価を与えるならA級作品である。
樹海伝説 折原 一 この作品はあまり評価できない。いつもスムースに結末まで導いてくれる折原作品だが今回は設定に少々無理を感じてしまった。同じ設定なら「異人館の館」のほうが秀逸。
RIKO〜永遠の女神〜 柴田 よしき RIKO(村上緑子)の心の叫びが痛烈に響く。アクションとロマンスの融合。スピード感あふれる展開と仰天の結末。どれをとっても申し分のない完璧な作品。性愛小説としても一品。
ファンレター 折原 一 手紙形式の連作短編集。僕にとって星新一のショートショート以来のヒットとなった。遊び心も満載でユーモアがありかつ切れのある作品。軽快で次々と読み進められる。
死国 坂東 眞砂子 ホラーということで敬遠していたが実は悲しい物語。思えば日本の怪奇現象には悲哀に満ちている。日本古来の「想い」の強さを感じさせられた。視線の怖さの表現が効果的。
二重生活 折原 一

新津 きよみ

夫婦共著の作品。折原一のトリックに新津きよみの語りが加わったというところか。時空を越えた切ない事情は東野作品に似た部分があった。共同制作はもう懲り懲りだとかなんとか。
屍鬼 小野 不由美 全5巻の大作で人間の良心というものを真正面からみすえた点は評価できるし読み応えもある。ただそれにしても前半部はいたずらに長い。謎をひっぱりすぎて頭でっかちになってしまったのは残念。
灰色の仮面 折原 一 今回もやっぱりだまされてしまった。途中たてた予想をあざわらうかのような結末。単純な仕掛けでここまで謎を深めるのはすごい。が、この結末ゆえに物語としてはつまらなくなったのも事実。
亡国のイージス 福井 晴敏 話題の大作。スケールの大きな壮大な作品だが登場人物があまりに多すぎて読解が困難。物語は後半一気に加速するのだがそれまでがつらい。できれば映像化して欲しい。
深い河(ディープ・リバー) 遠藤 周作 人間の思いの表裏を描きながら信仰というものに迫る。それぞれの生き方が見事に描写され信仰者も無神論者も考えさせられるだろう。結論はゆだねられているがこの作品に限ってはなんらかのしめくくりが欲しい。
アクアリウム 篠田 節子 序盤はかなり面白く神秘的な世界を感じるがその後の展開、結末には大いに疑問が残った。せっかくの美しい世界が平凡な思想の闘争によってかきけされてしまう。
キスよりもせつなく 唯川 恵 やさしくやわらかな言葉づかいはこの人ならではだが、文章のどこかでしらけさせられるのは今回も同じ。安易に事を運んだり、周到な準備なしに話をすすめるのはどうか。エッセイ向きの作家さんでは?
李歐 高村 薫 壮大な世界観はうかがえるが作品そのものの方向性がやや中途半端に感じる。トレンディにしたいのかノワールにしたいのかハードボイルドにしたいのか。登場人物も魅力薄。
山妣 坂東 眞砂子 圧倒される展開。とにかくいろいろな事が起こる中、人間の欲の深さなどがからみあって悲劇のラストまで行き着く。ただタイトル名が主題ではないので題名はひとひねりすればなおよかったかも。
異人たちの館 折原 一 折原作品の最高傑作とのことだったがそこまでとは思わない。相変わらずうまい構成で複数の文体を使いこなし読者を惑わせる。物語そのものも興味深く今回も一気に読めた。
走れ!タカハシ 村上 龍 比較的、軽快に読むことが出来た。元広島カープの高橋慶彦選手にからめた話で楽しめる。今となってはなつかしい選手名なども出てきて別の意味でもよかった。
46番目の密室 有栖川 有栖 トリック物なので仕方ないのだが人物に対する描写が浅く感情移入しにくかった。作品に対する興味としても幾分欠けたせいか退屈な印象さえ残ってしまった。
覆面作家 折原 一 無気味な扉絵に惹かれて購入!ホラーということでびびりながら読んだがトリックの見事さにぞくぞくした。作者の力量を充分に感じさせる一品。ラストでは遊び心もいかされている。
断崖、その冬の 林 真理子 華やかな女性キャスターという仕事の裏で、年齢や恋愛に悩む女性の姿がうまくうつしだされておりかなり共感できるものとなっている。多くの人が主人公枝美子に肩入れするだろう。
本を読む女 林 真理子 戦時中の家庭の大変さが上手く描かれている力作。古き時代の封建的な体制から自由を求めようとするものの飛び出せない苦しさを表現。後半部分に関してはA級である。
倒錯のロンド 折原 一 盗作?倒錯?盗作の事件には思わぬ倒錯がからまって仰天の結末へと転がっていく。実は読んでいる途中である程度トリックがわかっちゃったので僕自身の評価はBどまりになりました。
海峡の光 辻 仁成 人の心に潜む小さな悪意、そしてそれが実は小さくないということを感じた。立場の違う二人の心をうまく映し出しているが、事情や行動そのものの理由づけはちょっと苦しいかもしれない。
とかげ 吉本ばなな 久しぶりに彼女の作品を読んだがやはりわかりにくい。言葉の使い方、観念的描写はすばらしいのだろうがいかんせん理解しづらい。ファンの方にとってはそこがたまらないのだろうが。
彼女の嫌いな彼女 唯川 恵 彼女のOL時代の経験がうまくいかされている。二人の視点から語られる手法は僕の好きなところ。テンポのよさも売りのひとつ。しかし相変わらず展開がばればれ。はられた伏線も単純で深みはない。
伏魔殿 松岡 圭祐 今までの松岡作品とは違い読みづらかった。最後の展開はなかなか見ごたえがあったが満足のいく作品とはいえなかった。新しい境地の模索だろうか?
キスまでの距離 村山 由佳 人気シリーズの第一弾。若者向けということもあってやや甘甘の文章となっている。それはそれでいいが三人が一つ屋根の下で暮らすという設定、恋に落ちるパターンはいまさらという気もする。
失踪者 折原 一 数々の失踪事件の真相が明らかになるとき驚愕の事実が浮かび上がる。ありきたりな言い方かもしれませんが本当にそんな思いがしました。あなたも必ずだまされる。
冤罪者 折原 一 犯罪を信じるもの、冤罪を信じるもの、見方を変えればここまで変わる。果たして真実はどちらにあるのか。そして恐るべき結末が用意されている。注目の作品。
震源 真保 裕一 大作。ゆえに600ページでは短すぎる。伏線が数多く練りに練られているだけにすべてが有効になっていなかった。3部作くらいにして丁寧にしあげればAランクの作品。
神様のボート 江國 香織 静かにほのぼのすすむ展開の中、錯覚しがちだが間違いなく挑戦作。視点を変えると日常にひそむ狂気の世界を垣間見る。山本文緒が「恋愛中毒」で挑んだテーマを見事に成功させている。
ジゴロ 伊集院 静 この手の青春物は苦手。ちょっと古い渋谷を舞台に粋な若者が成長する過程を描くがいまいち共感できなかった。
サマー・バレンタイン 唯川 恵 ファンの方には申し訳ないがここ数年読んだ中でもワースト。設定、展開、会話、全てにおいて安直で筆者の能力を疑ってしまう。20年前の陳腐な青春ドラマを見せられたようでこっちが恥かしくなってしまう。
マジックミラー 有栖川 有栖 アリバイトリック。ただいくらアリバイとはいえここまで確率の低い事象を起こすのは反則では?この結末がOKならいくらでもこの手の作品は出来てしまう。トリックを見破る爽快さはないだろう。
奇跡の人 真保 裕一 前半から中盤までは確実にA級。読みやすくひきつけられる展開。後半の結末はやや期待はずれのところもありしつこさも感じないではなかったが十分に読み応えあり。
欲望 小池 真理子 肉体世界と精神世界、それぞれの欲望の頂点とは。性不能におちいった男性との恋の行方は。激しいまでにつきつめる愛の世界に圧倒される。惜しむらくは設定が特異なだけに展開が強引なことか。
名探偵の呪縛 東野 圭吾 東野圭吾の自伝的ともいえる小説。彼の作品に対するけじめやポリシーなどがかくされているようにも思える。世界観も斬新で楽しめたがうけつけない人もいるかも。
翼 -cry for the moon- 村山 由佳 非常に良い作品に出会えた。切なく裂かれるような気持ちになるけれどとても近しく温かくもある。大げさすぎるような事件も効果的かつ不可欠。彼女の人気の理由はここにあるのか。ぜひ読んでください。
探偵ガリレオ 東野 圭吾 作者も認めるとおり科学的な知識を詰め込んだ作品。短編で科学を優先する展開につまらなさを覚えそうになるがラスト3Pでいつものように胸に刻まれる話に変わる。やはり力のある作家さんです。
ボーダーライン 真保 裕一 ハードボイルドタッチでつづられる問題作。最初読みづらかったが読み終えたあとはいろいろ考えさせられた。人間の悪意というものは先天性のものか後天性のものなのか、答えは出ない。
OUT 桐野夏生 面白かった。夢中で読み進めた。それぞれの立場から見る事情と展開が読むものを退屈させずラストまで突っ走る。ただ結末には賛否両論いろいろ出てくるだろう。読んで損はない。
理由 宮部みゆき 読みたかった作品がついに文庫化!ということで発売日の朝早速購入したが期待はずれだった。ノンフィクションの手法はすごいと思うが宮部さんの個性が失われてるのではないだろうか。スピード感がない。
青が散る 宮本 輝 この人の作品はいつも題材が平凡なだけに退屈な時間が生じてしまう。それをカバーするだけの人生が描かれるからその時間をも伏線となりえるのだが今回は退屈なまま終わってしまった。
美神(ミューズ) 小池 真理子 一見美しい女性に惑わされている男性の凋落を書いているようだが実はその女性側にある空しさ、苦しさが最後に表される。高い評価は与えられないもののその手法は評価に値する。
スプートニクの恋人 村上 春樹 村上春樹の作品の中で僕は一番綺麗に感じられた。相変わらず観念的な言い回しは多いものの複雑な心理をつきつめ、素直な感性でとらえられているような気がした。非現実的なのに妙に現実的。
岸辺のアルバム 山田 太一 ドラマにもなった有名小説だが今となってはどうか。当時家庭というものが綺麗過ぎてリアルでなかったことから泥くさい人間模様も映し出そうとしたのだが汚すぎて逆にリアリティーを欠いている。
水辺のゆりかご 柳 美里 作者の何かしら哀しげで物憂げな表情に謎を感じていたがこの作品を読んでおぼろげながらわかったような気がする。彼女は人生をしっかり正面から見つめておりそのことが多大な影響を与えているのだ。
求愛 藤田 宜永 いろんな展開をみせておきながら最後にその手を使うのはだめでしょう。禁じ手です。結末はきっちりしないと展開、伏線すべてが無駄になってしまう、そういう感想を持ちました。
光と影 渡辺 淳一 古い時代の作品だと感じてしまった。「あのときもしこうだったら人生かわってたという」この種のテーマって意外と豊富に転がってるもんだから特別ではないような。「たら、れば」は禁物です。
アニマル・ロジック 山田 詠美 差別意識について彼女なりの世界で鋭く皮肉られているが痛烈ゆえに読者に伝わりにくいのでは。章によってはうなるものもあったが全体をとおしてとっかかりにくいのは否めない。
ロスト・ワールド 林 真理子 バブルのことをとりあげ脚本家の立場から見た画期的なアイデア。ただし語られるストーリーには波がなかったような気がする。鋭さが感じられなかったのは残念。
恋愛中毒 山本 文緒 偶然かしら小池真理子の「恋」と非常に似通った設定に混同しそうになりながら読んだ。恋愛心理のおそろしさを描こうとし成功していると言えるものの作品そのものに感銘をうけなかった。
小池 真理子 官能的小説(この作品がそうというわけではないが)に対し多少抵抗があったのは事実だがこの作品の不思議な力を目の当たりにして引き込まれた自分がいたのも事実。ちりばめられた言葉が美しくはねている。
6月19日の花嫁 乃南 アサ 面白い構成で引き込まれたは事実だが結末が近づくにつれさめてしまった。「凍える牙」もそうだったが僕自身彼女の作品とはどうもあわないらしい。いつも途中までいい感じなのに・・・
光射す海 鈴木 光司 結末が淡白ではあったものの心理描写などはすばらしい。ホラー作家が心理描写にすぐれているのはS.キングなどにもいえることだが鈴木氏もその力を存分に発揮させている。
らんぼう 大沢 在昌 ふたりの個性的な警官を使ってコミカルかつ快活に話を持っていこうとしているのだが今一楽しめなかった。やはり大沢文学にはクールなかっこよさが似合う気がする。
ターン 北村 薫 スキップと続けて読んだがこちらはさらに期待はずれだった。作品そのものが「題材ありき」という感じがしてしまう。小説はストーリーありきであって欲しいというのが本音です。
スキップ 北村 薫 興味深く読んだものの、また評価は高いものの感銘をうけることができなかった。題材があまりに大きすぎるか。たしかに不条理なこととのすりあわせはこれでいいもののなんとなくすっきりせずに終わった。
水の眠り 灰の夢 桐野 夏生 村野ミロシリーズでお馴染みのミロパパ村善さんが活躍する話。村野ミロとの関係などわかってきたのは面白かったがミロシリーズでのカリスマがどのように培われたか、この作品からは感じ取れなかった。
防壁 真保 裕一 作者2作目の短編。しかしこの作家の持ち味は長編でこそいきるのではないか。緻密に練られたものが広がりを見せる前に終わってしまうのはもったいない。
天使の卵 村山 由佳 ピュアでストレートな表現が逆に高い評価をうけている作品。ただそのことが欠点にもなりうることを作者自身が認めている。僕自身は不可。せっかく小説を読むのだから技巧のこらした作品が読みたい。
イブの憂鬱 唯川 恵 たてつづけに大きな事件が起こる手法で読者の関心をひこうとするのはいかがなものか。文章そのものに心ゆれるのではなくその出来事に心が動くだけでいまいち作者の力というものが見えてこなかった。
感傷の街角 大沢 在昌 記念すべきデビュー作。佐久間公シリーズの原点。しかし23歳当時に書かれた作品という事もあってしぶさがない。ハードボイルドには程遠くむしろ甘さが目立ってしまう。
群青の夜の羽毛布 山本 文緒 多くの女性作家が活躍する中、やはり山本さんは頭ひとつぬきんでている。あまりに深い洞察は空恐ろしさを感じてしまう。下手なホラーなんかよりよっぽど怖い作品。
鎮魂歌〜不夜城U〜 馳 星周 前作とはまったくかわった視点からの物語。劉健一のあり方というものがなんとなくうまく描かれていたと思う。相変わらずばたばたと人が死んでいくので疲れる。
白夜行 東野 圭吾 東野圭吾がノワールに挑戦!?それくらい新しい試みの展開が読者をうならせる。謎めいたストーリーは謎を残したままラストまで突っ走る。ますます幅の広がった東野圭吾に圧倒される。
鉄鼠の檻 京極 夏彦 文庫の中でもこれほど分厚い本はなかったのではないか。期待しながら丁寧によみすすめたものの無駄な部分が多く複雑すぎる伏線に嫌気がさしてしまう。
クロスファイア 宮部 みゆき やはり宮部作品は面白い。あっというまに読んでしまう。結末に少し違和感を覚えてしまったがそれでも展開のうまさは随一。はやく「理由」を読みたいのだが。
バグ 松岡 圭祐 これは面白い。作中で様々な人物の物語、事情が衝撃の事件をとりまきながらうまく描かれている。少年達の連続自殺の背後にあるゲームの存在。そしてそのゲーム会社の社長は!クリエイターは!事件を追う警察は!そして感動のラスト。ぜひ読んでください。
凶骨の夢 京極 夏彦 長い説明に耐えられる人がどれだけいるのか。そしてその説明と事件をどこまで関連づけて考えられるのか。わかっているのは本当に作者と京極堂だけではないのか。不満。
プラナリア 山本 文緒 きれいな心もわがままな心も。とにかく正面からまっすぐとらえる作者の力が見事にいかされたすばらしい出来となった。まさに代表作といっても過言でない直木賞受賞に恥じない作品。
魍魎の匣 京極 夏彦 本当に複雑に入り混じった出来事が読むものをあっといわせる結末に導いていく。京極堂もそうだがそのほかの人物たちもそれぞれに魅力を発揮している。
姑獲鳥の夏 京極 夏彦 まさに新しいジャンルの登場。怪奇現象を否定しつつも否定せず、科学を否定しつつも否定せず、相反するこの二つのものを上手く説明しながら話をすすめていく。丁寧で納得のできる説明が良い。
ドナウの旅人 宮本 輝 話の展開そのものはとても面白くヨーロッパの美しい風景を本当に見ながら旅をしているような気分になった。ただ母絹子のわがままぶり、世間知らずなところには少々げんなりしてしまった。