2003年に読んだ本

 

No. タイトル 作家名 評価

寸評

50 手紙 東野圭吾 東野圭吾の新しい代表作になるのではないだろうか。「贖罪」ということに対して厳しい現実をふまえながら真摯に描き切る。独特の切ない世界の中、迎える結末に涙が溢れ出した。
49 舞姫通信 重松清 自殺をテーマにした問題作。肯定するも否定するも深く考えさせられる事は間違いない。僕個人としては否定したい。佐智子という女性の行動には不快感がぬぐえなかった。
48 栄光一途 雫井脩介 物語のテンポがとてもよく快活によみすすめられるのが好感。ただなぜか登場人物への感情移入はあまりできなかった。才能を感じる部分と荒削りな部分が同居しているような印象を受けた。
47 聖なる黒夜 柴田よしき RIKOシリーズ外伝ともいえる山内、麻生の過去を綴った力作。超弩級のエンターテイメントの触れ込みにふさわしく何から何まで完璧といえるクオリティを誇っている。必見!損なし!
46 誘拐症候群 貫井徳郎 「症候群」シリーズ第二弾でも環敬吾の全貌は明らかにされなかった。事件の詰め方がうまいので読者も一緒に捜査しているような感じで楽しめる。情深い托鉢僧・武藤も魅力の一つ。
45 MISSING 本多孝好 ドキリとする鋭い感性に驚かされっぱなしだった。特に「眠りの海」はAランク。その他も全体を通して魅力のあふれるストーリーが詰まっていた。良質の一品。
44 潮流 伊集院静 この人の文章は格好つけすぎではないだろうか?感じる世界は人それぞれだが僕には鼻につく。物語そのものも大して面白いとは思えなかったのだが・・・。
43 嘘をもうひとつだけ 東野圭吾 悲哀に満ちたストーリー。作者が意地悪に思えてくるほどだ(笑)。それぞれの犯人が普通な人たちだけに一層切ない。加賀恭一郎が出てくるがその個性はあまり発揮されなかった。
42 失踪症候群 貫井徳郎 登場する三人の仕事人に加えてそれをまとめる環の活躍を描く「症候群」シリーズ第一弾。しかし今作ではそれぞれの役割などが語りきられておらず今後に期待する結果に終わった。
         
41 水の殺人者 折原一 今回は久しぶりに折原マジックを楽しめた。殺人者リストに掲載されるそれぞれの被害者の視点から見つめていく手法も良い。真相は無理があるのはいつものことか。
40 ワルのぽけっと 灰谷健次郎 表題作「ワルのぽけっと」切ない詩「チューインガム一つ」はS評価。少年少女たちのあたたかく素直な交流を描いている。灰谷文学を読むと失ってしまった何かを取り戻せるような気持ちになる。
39 転生 貫井徳郎 この設定は東野作品「変身」に酷似している。しかしアプローチや結末は全く異なる。スリリングな展開ながら全体的に希望の持てる物語だと思う。それにしても臓器移植というのは大きなテーマだ。
38 Miss You 柴田よしき 林真理子さんの「コスメティック」のように業界がよくわかる作品だった。女性編集者の奮闘を様々な人間関係の中で生き生き描き出している。重すぎず軽すぎず読める佳作。
37 孤独の歌声 天童荒太 「永遠の仔」の衝撃から大きな期待を持って読んだ。今作では「孤独」をテーマにしてそれぞれの生き方、考え方を印象深く描いている。「孤独」を前向きに捉える事ができる気がする。
36 魚の祭 柳美里 家庭における歪んだ愛情を戯曲形式でつづる。登場人物それぞれにどこかしらおかしさ、違和感を感じずにはいられない。どうすればいいのかというところには言及されず不満が残る。
35 光の帝国〜常野物語〜 恩田陸 なんだろう?世界観が最後までつかめずじまいだった。文体に惹かれるものがあっても設定がわからなければつまらない。言葉を極力省いている趣旨はいいと思うがこれでは説明不足すぎないか?
34 ナイフ 重松清 テーマは「いじめ」。この実情を浮き彫りにすべく目を背けたくなるようなことに対し手を抜かずに描写している。心が痛くなる話だが深く考えさせられる事は間違いない。
34 カラフル 森絵都 児童書でありながら幅広い層から支持を得ている作品。とてもいい感じな雰囲気が漂っている。ある程度展開は予想できてしまうが、それはそれで結末を待つ自分を楽しむ事が出来る。
33 図南の翼(十二国記) 小野不由美 恭の国の物語。前作で顔を出したおきゃんな少女・珠晶。個人的にあまり好きではないキャラだが十二国記の中ではまた違った魅力を輝かせているのがわかる。
32 眠れるラプンツェル 山本文緒 僕自身、この作家さんの感性が好きで文体が好きで考え方が好きなんだろう。安心しながらその世界に浸る自分がいる。切ない胸のうちを叫ばせると山本さんは一流だ。
31 雲の階段 渡辺淳一 なかなかスリリングな展開に息もつかせぬまま読みきることが出来た。主人公の深い悩みが否応なしに伝わってくる。しかしながら登場人物それぞれの自分勝手な振る舞いは責められるべきではないか。
30 風の万里 黎明の空(十二国記) 小野不由美 慶の国での自分の置かれた状況に悩み苦しむ陽子。もつれ合う数奇な運命。悲しい現実。集まった少女たち。それぞれの行動は勇気に溢れ読むものの心を震わせる。シリーズ最高傑作。セリフひとつひとつが泣かせる。
29 しゃべれども しゃべれども 佐藤多佳子 派手な事件や練られた構成があるわけではないが題材になりにくい日常というものを温かい雰囲気で描いている。それぞれの行動が読者側まで勇気づける不思議な力を持つ物語。
28 乃南アサ キャラが秀逸だったのでもうちょっと上手く活躍させて欲しかった。全体としては温かみのある柔らかな雰囲気が印象。児童文学の延長的な香りがする読みやすい作品。
27 PINK 柴田よしき 阪神大震災で婚約者を亡くした女性が持ったトラウマはいかにして解消されていくのか。ストーリーそのものの流れよりも結末の素晴らしさに目を向けて欲しい。勇気ある決断がそこに示されている。
26 イノセント・ワールド 桜井亜美 桜井亜美の衝撃デビュー作。彼女の作品はこれから読むべきだった。赤裸々につづられていく告白は美しく、清ささえ感じてしまう。軽軽しいことはいえないが重みのある一冊であることは間違いない。
25 柔らかな頬 桐野夏生 賛否両論わかれるラストだがどういえばいいだろう。感情は否だが手法としては賛。作品そのものにたくさんの試みがあり挑戦作になっている。好き嫌いわかれるところか。梨紗ちゃん、かわいそうです。
24 慟哭 貫井徳郎 これほど犯罪者を憎めず悲しく思える作品があっただろうか!?練られた構成に驚かされかつ最終的には登場人物に対する悲哀を驚嘆の結末を持って印象づけられたこの作品を絶賛したい。
23 ロシア紅茶の謎 有栖川有栖 本格派トリックに対してこんな疑問はタブーなのだろうか?でも思った。「瀕死の状態の被害者がここまで手を込んだ暗号を残すか、普通?」。そういうところに目をつぶれば面白いかも。
22 女友達 新津きよみ なんとも気味が悪く恐ろしい女友達を表現したものだ。読んでいてゾクゾクする感覚はホラーならではというところか。「痛い」表現があまりにリアルで目をそむけたくなる場面も。
         
21 女たちのジハード 篠田節子 ここに登場する女性たちの必死な生き方は別段特別というわけではないだろうがそれぞれにとっては自分だけのオリジナルな生き方を探して一生懸命である。男性にも共感できる物語。
20 花の下にて春死なむ 北森鴻 苦手な短編だったがそれなりに楽しめた。事件を追いかけるときときとして事態を大きく考えがちだが真相は以外に単純だったりする。達観した視点からみつめるビアバー工藤が活躍する連作ミステリー。
19 麻酔 渡辺淳一 最先端技術をもった医療だがそれを扱うのは人間である。医療ミスは病院側に、患者側にどういった影響をもたらすのか。また当事者たちの関係や思いはどうなっていくのか。もう寸評にはできない。
18 三たびの海峡 帚木蓬生 日韓関係の悲しい過去を韓国人の観点から見つめた作品。たんに国家間の軋轢を描くだけでなく、同胞の裏切りや国を越えた愛、親子関係など重層なテーマを持っている。
17 ALONE TOGETHER 本多孝好 この感覚も新しくみずみずしい。女性のような感性を持ち合わせているのだろうか?使う言葉も綺麗で引きこまれる。結末にまとまりのなさを欠いたような気がするが他作品への期待がつのる。
16 マークスの山 高村薫 筆者渾身の力作である事は認めよう。直木賞を受賞するだけの練られた作品であることも確かかもしれない。ただ、単純に僕には犯罪者の心理が不快であり楽しめなかった。評価は独断と偏見です。
15 倒錯の死角(アングル)〜201号室の女〜 折原一 下でせっかくほめていたのに今作は出来がイマイチというかあまり騙された感がないというか。強引な事件設定や行動があまりおすすめできない。表現もちょっと狂気的。
14 ハサミ男 殊能将之 ホラーではなく叙述トリック作品。面白かったが真相があきらかになったあとは不快感も伴った。折原一に比べて読者への情報伝達量が少ないので「やられた」感には欠けたかも。
13 トキオ 東野圭吾 あたたかい話だが同系等の話としては重松さんの「流星ワゴン」のほうがしっくりはまった。時生が拓実に「未来」の意味を訴えるシーンは最大の見所で鳥肌がたった。
12 フォー・ディア・ライフ 柴田よしき 警察くずれの探偵が様々な事情を抱えながら事件解決のため奔走する。痛快ではあるが多くの事件がごちゃごちゃしていてまとまりに欠ける。それがこの作品のカラーなのかもしれないが。
11 東の海神 西の滄海(十二国記) 小野不由美 前二作で名君として登場する延王・尚隆。しかし最初は荒廃した国の復興から始まった。国をおさめることの難しさをうまく描きながら王の資質のなんたるかを説いている。これまた面白い。
10 絡新婦の理 京極夏彦 京極堂シリーズの第5弾。このシリーズは何故前作の登場人物をやけにひっぱるのだろう?相変わらず事件に無理があるものの今回は京極堂と織作碧・葵との論争がかなり楽しめた。
風の海 迷宮の岸(十二国記) 小野不由美 シリーズ第2弾。時代は前作より少しさかのぼって王につかえる麒麟に焦点をあてている。前作では万能に見えた麒麟の苦悩と成長を描く。ますます幅が広がる十二国記の世界。
落下する夕方 江國香織 理屈を越えた不思議な魅力を持つ華子という存在を通して人間関係の面白さ、難しさを表現。ややトレンディな志向が鼻についたが江國さんの持ち味が上手く出されていたのではないだろうか。
月の影 影の海(十二国記) 小野不由美 これは面白い。ファンタジーノベルの傑作だ。何が面白いかって世界設定が抜群に面白い。大作だがライトタッチで読みやすいのもGood!これは慶国の物語だが他の国への期待も膨らむ。
新宿鮫[〜風化水脈〜 大沢在昌 宿敵・真壁と鮫島の再会を中心に複雑に入り組んだ人間関係、事件、過去などが絡み合う。鋭さは消えたがシリーズ中もっとも人情的な香りのする作品となった。
朽ちた樹々の枝の下で 真保裕一 とにかく読み進めにくい作品だった。緻密に練りだし満足感を高める真保作品の持つ諸刃の刃なのかもしれないが今回は満足感にもかけた。何より動機が薄すぎて納得しにくかったのが痛い。
太陽の子 灰谷健次郎 やはりダイレクトで率直な文体が胸を打つ。テーマは沖縄戦だがその是非ではなくその現実を背負って必死に生きている登場人物たちの姿勢に感銘をうけることだろう。
宮本武蔵 吉川英治 序盤はやや退屈だが武蔵の成長とともに物語は盛り上がってくる。闘いそのものよりも精神に重きをおき武蔵の男(侍)としての進化に着眼している。とはいえ身近に感じられる武蔵がそこにいる。
流星ワゴン 重松清 これまたすばらしい作品。自分の親と同じ年齢になったとき見えてくるものは何なのか?気に入った点はやり直しは厳しい現実からというところ。銀河鉄道の夜にも似た素敵な旅が楽しめた。
永遠の仔 天童荒太 年明け早々すばらしい本に出逢えた。親子のつながり、仲間のつながり、ねじれほつれる人間関係の中に皮肉な運命のいたずらが絡み合う。そのときそれぞれが選んだ生き方とは!?必見です。