死にぞこないの青

 

  この作品を読んだときの衝撃を僕は忘れられません。ここに出てくる主人公・マサオはクラスのみんなからそして先生から嫌われてしまいます。先生は自分んの人気を守るために「マサオ君が〜だから宿題を増やす」「マサオ君が〜だからもう1周走ろう」とマサオを悪者に仕立て上げたのです。すっかり孤立してしまったマサオ。たしかに不器用でややおとなしめの少年であるマサオですが彼は決して露骨にいじめられたわけでもないし無視されつづけたわけでもありません。しかし本人だけがわかる疎外感。明らかに不当な先生からの叱責。それゆえその不公正な現実を訴えても「そんなことはない」「君が卑屈になっている」とかわされてしまい、あげくのはてには「君の考え方がおかしい」と逆に非難されてしまう始末。この苦しい状況を僕は他人事のようには思えませんでした。中学3年のころ僕はクラスの中で孤立してしまいました。僕もまたいじめられっこだったわけではありません。成績もよくスポーツもそれなりにこなしどちらかというとリーダータイプだった僕ですが逆にそのことが疎んじられて夏休みを過ぎた頃には誰もが自然に僕を避けるようになっていたのです。毎日、誰とも心を交わせないまま辛い時間を過ごさなければならなかった。それでももともとリーダー的な存在であるくらいの僕でしたから弱音は吐かず片意地をはって生きていました。それに我儘で強引だった自分という人間を中学生の子供たちが嫌うのも無理ないのは今になっても仕方がないと思えます。けれど僕にとって耐えられなかったのは先生の仕打ちでした。冬休みのある日、家の近所で同じクラスのY君のお母さんに会いました。「あれ、ats君どうしたの?今日はクラスのスケート会でしょ、行かなかったの?」そんな話、僕には初耳です。「あっ、僕、おばあちゃんのところ行くから行けなかったんだ」と必死に答えた僕でしたがショックでした。休みがあけてその話が休み時間などの子供たちの会話で持ち上がったとき「えっ、どこいったん?スケート?誰といったん?」と聞く僕に対してみんなが苦笑いしたり、気まずい顔をして逃げていくのを見てさすがに辛かったですね。でも会話がもれて聞こえてしまうんです。それを聞こえないふりするのは本当に辛かった。先生に確かめても良かった。でも怖くてできませんでした。さらにその後、卒業を前に転校するクラスメートのお別れ会であるプレゼントが渡されました。先生は「これはみんながお金を出し合って買ったんだよ」と言ってました。僕は払った覚えがなかったんで後ろの席の子に「払った?」って聞くと「うん、500円ずつ」って答えられました。僕はこのときもその真相を先生には聞けませんでした。「死にぞこないの青」、この作品の中でマサオは最後に勇気を出して先生を問い詰めます。マサオの「どうして」という問いに対し先生は「誰でもよかったんだ、仕方なかったんだ」と答えます。マサオはさらに「でもやっちゃいけないことですよね」と問い詰めます。リーダーぶって強がっていた自分よりも不器用で引っ込み思案のマサオのこの行動は自分の過去までさかのぼり本当に勇気付けてくれました。この最後のやりとりに、この端的な言葉のはしばしに、つきささるような重く尊い力を感じずにはいられません。そしてそんな先生をマサオは最後はかばい立場を守ろうとします。ここに偽善というものなど存在しないのは読めば一目瞭然です。先生はこのあと少し入院しますがそのあいだの代行の先生とのやりとりで幕を閉じるこの作品。そのやりとりがまた素敵です。「先生はまわりの評価は気にならないんですか?」「一生懸命やった結果がこれだもの、仕方ないわよ」