ダービッツという男

 

ユベントスの中盤を支えるオランダの猛犬

エドガー・ダービッツという男をご存知だろうか?

サッカーファンならよく知られているこの男も日本では意外と知名度は高くない。

中田英寿がセリエAに行っている今は情報もたくさん入ってきているので

あるいはご存知かもしれない。

オランダ代表で私の好きなユベントスというチームに所属するこの男は

華麗なプレーで観客を魅了するわけでも、爽快なゴールを量産するわけでもない。

はたまた甘いマスクで多くの女性の心を虜にするわけでもない。

しかしこの男をオランダ代表やユベントスのレギュラーから外そうとするものは

まずいないといって過言ではないだろう。

何が彼の魅力であり何がそんなに世界の最高峰での活躍を裏付けるのだろう。

衰えを知らない驚異の運動量

オランダというと個人技のレベルも高くサッカー大国としての呼び声も高い。

有名どころでは古くはJ.クライフ、80年代ではR.グーリット(フリットのほうがなじみあるかな)、

F.ライカールト、M.ファンバステンなどのトリオ(彼らはACミランの黄金期を支えた)

そして最近ではD.ベルガンプ、P.クライファートなどが騒がれているだろうか。

しかしE.ダービッツはそれらいずれの選手の持っている華々しさはない。

ただ彼らにはない豊富な無尽蔵な運動量とそしてオランダに欠けている闘争心を

人一倍(人三倍といってもいいくらい)兼ね備えているのだ。

そんなことが一体どれほどのものかと思われる方がいるかもしれない。

しかし日本の中山や北沢たちがフィールドの中、闘争心を失わず走り回ったあの姿に

日本が感動したように彼はそれで世界のサッカーファンに感動を与えているのだ。

そして疲れを知らないオランダの狂犬はただ走り回っているわけではない。

どん底におちた彼の20代前半

今や代表にもクラブにも欠かすことができないはずの彼がそのどちらからも

必要とされない時期が実はあったのだ。

20歳のときにオランダの名門クラブ、アヤックスでトヨタカップを制し世界の頂点にたった

彼だったがその後、予期せぬ悪夢が待っていた。

当時の代表監督が黒人差別発言をしたことに怒りをあらわにした彼は

ヨーロッパ選手権開催のまっただなか代表を離れ帰国を命じられる。

そして彼が再び代表のユニフォームを着るのはフランスワールドカップ直前まで

またなければならなかった。

そしてクラブチームにおいてはイタリアの名門ACミランに移籍するが

金で有名選手を次から次へと獲得するミランの中で

地味なダービッツは次第に忘れられていったのである。

「あいつはもう終わった」とささやかれはじめ、僕自身も彼の復活は信じていなかった。

全ては感謝の表現、支えてくれる人のために

そんな失意の彼に一人の男が手を差し伸べた。

ミランのライバルであるユベントスの監督リッピだった。

リッピはミランに奪われた覇権をユベントスに取り戻しプラティニらを擁し時代以来の

トヨタカップ制覇をなしとげ名将として名高い。

そんな彼はアヤックスやミランでライバルとしてダービッツのプレーを見つづけていたのだ。

そしてぼろぼろの彼にユベントスの中盤の定位置を与え確保したのだ。

「思いっきり暴れてきなさい、我々は君を必要としている」

向こう見ずな青年ダービッツもこの言葉に感激しないわけがない。

そして彼は走った。フィールド狭しとばかりに走り回った。

「リッピには感謝している、そして見守ってくれる人たちにも感謝している」

そういい彼はピッチの中で休むことなく自らの労をささげていったのだ。

そしてその年、スクデット(イタリアリーグ優勝)を手にしたのだった。

「夢がかなったんだ!」

彼の夢とは何なのかはわからない。

しかし一度アヤックスですでに手にしている優勝というものをユベントスでかなえたとき

彼はこういったのだ。

今の彼は自分だけの栄光だけではなく観客、スタッフ、チームメイトたちと一体となって

栄光を求めフィールドを感謝の思いとともにかけまわっているのではないだろうか。

2002年のワールドカップ、この日本でも彼の雄姿が見られるに違いない。