淡い想い


「ありがとう」
嬉しそうに微笑う彼女の瞳から
一筋の涙がこぼれた
その瞬間 満たされていたはずの僕の心は
困惑の波に色を変えた
「なぜ泣くの」
問いかけた僕の言葉に
「悲しくなくても涙は出るものよ」
と彼女は答えた
・・・分からなかった
彼女の瞳の裏には、何か僕には見えないものがあるような気がした


「嬉しいの」
潤んだ眼差しをまっすぐ僕に向けながら
彼女はそう言って優しく笑った
その途端 単純な僕の心は
何か奥の方からわき上がってくるものによって 再び満たされた


僕にはまだ 分からないものがたくさんあるけれど
1つだけ確かなものが 今ここにあるのを感じた
それは多分、僕の心に初めて芽生えた
淡い淡い 砂粒ほどの想いだったのだろう


「遠くの学校へ行っても、僕のこと忘れないでね」
そう言った僕の言葉に、先生はまた光るものを瞳からこぼして言った
「もちろんよ・・・」






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<由莉香コメント>
語り手は小学生くらいの男の子で、初めて心に芽生えた淡い初恋を
イメージして書きました。
相手は学校の先生だけど、小学生くらいの男の子って、学校の先生に対して
恋というよりは憧れみたいなものを抱いたりするものですよね?

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