・・ 初めましてH君 ・・
2/22/2002


今日はいよいよセラピストとしての初バイトの日です。
バイトも初めてならバイト先のお宅へ伺うのも初めてだったので、迷っても大丈夫なように早めに家を出ました。
三ノ宮からバスに乗って40分。三田にあるそのお宅は結構遠くて、そのバスを利用するのも初めてだったので案の定少し迷ってしまいました。
でも、何とか間違える事もなく目的のバスに乗り、約束のバス停まで行けたので良かったです。

バス停では、お母さんが目印の緑色の上着を着て待っていて下さいました。
電話でもお互いすごくいい印象を受けていたけれど、実際会ってみてもすごくいい人で、明るくて、活発で、本当に感動しました。
自閉症を持った親の手記を以前読んだ時に・・・我が子が自閉症であると分かった時の絶望感がいかなるものか、どんなにどん底に陥らされたか、そういった事を読んでいたので、
それを乗り越えてなお明るく快活なこのお母さんに、心底感動しました。
三田は三ノ宮からも40分もかかってしまうくらい遠い所なので、わらにもすがる思いで今回のセラピスト募集に声を掛けられたそうです。
だから、私が伺う事が決まった事を本当に喜んで下さって、こんな素人なのに返って申し訳ない気分にまでなってしまうくらいでした。

お家へ伺って一通り説明とお話をした後、まず試しにどんな方法でお勉強をしているのか、お母さんがお手本を見せて下さいました。
H君は4歳の男の子で、名詞とわずかな動詞を少しだけ理解し、言葉にする事が出来ます。
まず見せて頂いたのは、カードを使ったお勉強でした。
カードに書いてある絵の名前や動作を、H君に口で言ってもらう作業です。
これは行動療法を始めた当初から行っていた事だそうで、彼にとっては既に得意分野で、楽しそうにやっていました。
途中で私に代わってやってみようという事になり、お母さんと私が席を替わりました。
すると、今まで楽しそうにやっていたH君が、前にお母さんでなくて私(=知らない人)が座っただけで、泣き出してしまいました。
自閉症の子は人一倍人見知りが激しく、今まで知らない人に慣れるのにはやはり時間がいるそうです。
仕方がないので、またお母さんが前に座って、私はその横に座らせて頂いて、徐々に慣らしていく事にしました。

行動療法では、言葉によるコミュニケーションが取れないので、指示通りにちゃんと出来た場合、ご褒美としてお菓子をあげます。
私はまず、このお菓子をH君に手渡す事から始めました。
お菓子をくれる人、という印象から、少しずつ私に慣れてもらうためです。
すると、初めはお母さんの方しか見ていなかったのが、段々私の方も見てくれるようになりました。
でも、お母さんが立ち上がるとたちまち泣いてしまいます。
これでは私が来ている意味はなくなってしまうのですが、初めだし仕方がないという事で、今日はずっと2人でH君に向き合って勉強する事にしました。

しばらくすると前よりもっと慣れて来て、カードも私の方に差し出してくれるようになりました。
今日の所はお菓子の成果大、といった感じです。
それからいくつかの試行を見させて頂いて、今日の所は終わりました。
少しずつでもH君が私に慣れて来て欲しくて、お勉強の後は一緒に遊んだりしました。
彼は今プラレールがお気に入りらしく、自分でレールを他の部屋からたくさん運んで来て、リビングで繋げて輪を作り、電車を走らせたりしていました。
表情も豊かで、嬉しそうに笑うのですが、ほんの数ヶ月前までは全く表情の無い子だったそうです。
これも行動療法の成果だと、お母さんは本当に喜んでいらっしゃいました。

そらからバスの時間が来て、H君はお母さんと一緒にバス停まで送ってくれました。
別れる時には、「バイバイ」と言って手を振るようにしています。
私が「バイバイ」と手を振ると、H君も私の目をまっすぐ見て、そしてニッコリ笑って手を振ってくれました。
口もごもごも動かして、とてもそうは聞き取れないような言葉でだけれど、しっかり「バイバイ」と言ってくれました。
今日一日で、この子が普通の言葉をしゃべれるように・・・そして、一般の人と区別がつかない程に社会復帰出来るように・・・と、お母さんの頑張ろうという気持ちが痛いほど伝わって来ました。
一緒に頑張りたい・・・心からそう思えました。




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