都市環境の悪化に対処すべく「緑地を増やす」ことが叫ばれてからずいぶんと経ちます。東京には決して樹木は少なくないものの、大気汚染、特にクルマの排気ガスのせいで、どことなく生気がありません。街路樹などは枯れ始めている木々が目立っていたりします。
「都市に緑を!」というのは大いに結構なのですが、都市の根本的なあり方から考え直す必要を感じます。私がこうしたことを考えるようになったのは、とある建築家が30年以上前に提案した都市再開発プロジェクトを目にしたからです。
相田武文という建築家が1970年に提案した「蘇生都市」というプロジェクトです。「タテ都市からヨコ都市へ」という題で『環境文化』1972年10月号に掲載され、後に相田氏の『建築形態論』(明現社、1975年)に再録された文章から、その概要を紹介してみましょう。
「蘇生都市I」:今道路として使用されている土地に中層の帯状の建物をつないで建て、建造物が建っていた場所をすべて緑地にする。
「蘇生都市II」:道路をすべて地下に走らせ、道路だった土地をすべて緑地にする。
二つのプロジェクトとも、建築家自身が実現性を放棄しているかのような極めてアイロニカルな逆説に満ちた案であります。しかし、もし本当に実現しようとしたら、どのような問題が生じるでしょうか?
まず、比較的実現性の高い「II」の方を考えてみましょう。地下にクルマを走らせるとしたら、「排気ガス」をどう処理するのかという問題が真っ先に浮かび上がってきます。排気ガスの生じないクルマを走らせるということになりましょう。その他、騒音・振動などの問題をどうするかという課題が生じます。
続いて「I」の方。今ある建造物を解体しなければならないのですが、そこで生まれる大量の瓦礫の山をどうするかという問題が生じてきます。結局、鉄骨やドア・窓などの使える部品はそのまま再利用し、コンクリートや木材などもリサイクルして再利用する必要があるでしょう。建造物が解体されることで生じる大量の廃棄物の問題に真剣に取り組まなければならなくなるでしょう。
相田氏の二つのプロジェクトは一見極めて「荒唐無稽」なアイディアのように見えますが、それが問題提起する射程は実に広く深いものがあります(先に挙げた問題はほんの一部に過ぎません)。緑地問題に限らず現在の都市が抱え込んでしまっている諸問題は、いったんこれぐらい思い切った大胆な発想の転換をしてみなければ、それらの問題のさらに背後にある問題が見えてこないのではないのでしょうか。
都市問題にアプローチする時は、荒唐無稽と思われるほどの大胆な「構想力」が必要なのかもしれませんね。
2002/08/17 (土) 01:22
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