2002/08/27(火) 日野啓三『都市という新しい自然』〜蘇生都市(3)〜
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こちらの日記をお借りして、ここ三週間ばかり吉本隆明氏の提起した「アフリカ的段階」というイメージを手掛りに、文明の過去と未来を考察する試みを続けています。正直なところ、手ごわい相手に対して素手で挑んでいるような気持ちです。

ただ、いくつもの手掛りを与えてくれる一連の書物があります。それは以前この日記でも取り上げたことのある作家・日野啓三氏の1980年代の書物群です。

『抱擁』『夢を走る』『夢の島』『砂丘が走るように』・・・といった小説にも触発されることが多いのですが、一連のエッセイ集の中に直接的な手掛りを得ることがしばしばあります。

『都市という新しい自然』『都市の感触』『Living Zero』の三冊は、読むたびに今だ思考を刺激され続けられています。これらのエッセイ集の中では、私が音楽制作の道に入るきっかけを作ってくれたブライアン・イーノの「アンビエント・ミュージック」という環境音楽がしばしば採り上げられているのも、これらが大好きな理由の一つではあるのですが・・・

特に『都市という新しい自然』という書物は「タイトル」からして素晴らしいですね。このタイトルから、どれだけ思考を刺激されたか・・・

この本の中では、自然と都市とを相反するものとして捉える「環境主義的」な視点は一切排除されています。日野氏が敗戦直後の東京で目の当たりにした廃墟や、東京湾の埋立地のゴミの山から啓示を受けた、一切の機能性から見放された「物そのもの」の放つアニミズムに近い感覚が「(後期)アフリカ的段階」についてのイメージを広げてくれます。

1980年代以降の今私たちが生活している都市の急激な変化の果てこそが「本来の自然」に近づいていっているだという確信めいたヴィジョンが、それこそ多様な視点から描かれています。

吉本隆明氏の『アフリカ的段階について』を中心とした書物群をメインに、そして日野啓三氏の1980年代の書物群をサブテキストにした、私の探求の旅はようやくその端緒についた感じがします。

この日記を愛読していてくださる方も、そして今回初めての一見さんも、どうか今後も暖かく見守ってくださいね。
2002/08/28 (水) 01:18


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