夜這い

第五話「唸れ三角跳び」


そして俺は今夜もなぜか夜這いするべく家を出てあの武家屋敷に着いていた。

さて、どうしたものかと俺は武家屋敷を見上げる。

時間はもう深夜1時を越えたくらいだろう、前回よりはちょうどよい時間帯だ。

「タク、俺の渡したバッグを使ってみ」

今夜も同行しているユウヤは電柱のした煙草を吹かしながら言う。

「できればお前は帰ってほしいと願うのは俺だけか」

俺はブツブツ呟きながらバッグを開いた。

懐中電灯や工事帽など、色んな物が入っている。

どこから仕入れたんだと思いながら中身を漁ってみると、変な感触がした。



「…おい…」

「ん?どうした?」

にこにこしながらこちらに近づいてくるユウヤ。

俺はそれを振り上げてユウヤの頭に叩きつけた。

「いってー!」

悶絶するユウヤ。

俺もこれを見たとき悶絶しそうになったからおあいこだ。

「これで俺にどうしろってんだ!?」

俺は叫んでその長い棒状の道具を地面に叩きつける。

変な電動音を発しながら左右に揺れる道具。

「おい、折角人目を忍んで手に入れてきたのにその扱いはなんだ。高かったんだぞ?」

ユウヤはそれを拾ってスイッチを切って俺の目の前に突き出す。

「頼むから目の前に出すな、キモい」

俺はユウヤの手を払う。

「大体そんなもん、何に使えと」

やれやれとため息をつくユウヤ。

「きっと神経がデリケートな君は本番の緊張に耐えられず使い物にならなくなると思ってな、その時の代用にこれだ」

こいつは間違えてる、何かを間違えてる。

本気なのか冗談なのかも分からなくなってきた。

「…とりあえずこれはいらん、自分の楽しみに使え」

俺はその大人の玩具をつき返す。

「ちぇっ、つまらん…」

ユウヤが小さく呟いたのが聞こえたが俺は無視してバッグの中身を再び漁ってみた。

ロウソクやらゴムやらおかしな道具はあるが、全体的に使えそうな物の割合が高いのが救いだ。

「7回は夜這いできるっていう言葉は伊達じゃないってことか」

「この道具を使えばもう一回はいけるぞ?」

俺はユウヤの手の上にある大人の玩具を跳ね飛ばす。

「俺の親心を分からんヤツめ」

やっと諦めてくれたユウヤは、ふぅとため息をつきながら武家屋敷を囲んでいる塀の側を歩き始めた。

時々確認するように回りを見回しつつ歩いていき、ある所で立ち止まってこちらに手をヒラヒラさせた。

そこに向かってみる

「ここに何かあるのか?」

「確かここを越えて真っ直ぐに進めば愛しのあの子の部屋だ」

「マジか」

「いや、マゾだ」

「…そうか」

謎のやり取りをしたユウヤは俺の手元からバッグを取り中身を漁る。そして長い縄を取り出した。

先っぽには鋭い鈎。

「鈎縄なんかどこから仕入れてきたんだ」

「企業秘密だ。まぁ、これを使っていけ、さぁ行け今すぐ行け」

鈎縄を俺に強引に持たせると今度はどこから出したのかビデオカメラをこちらに向けだす。

「…まさか」

「いい絵を撮らせてくれよ」

爽やかな笑顔を浮かべてこちらに親指を立てるユウヤ。

相手にするのがめんどくなった俺はため息を一つ吐いて塀の方に向いた。

塀の高さは3m近くあるだろうか、まさか忍者みたいな事をする羽目になるとは思わなかった。

「びびったんか?この負け犬」

後ろからバカの声が聞こえるのを無視して俺は精神を集中させた。

つっても、鈎縄を投げるだけの行動に集中もなにもが。

カウボーイのごとく鍵縄をブンブン回して狙いを定める。

塀の上の瓦のてっぺんがちょうど突き出ているようになってるのであそこに放り投げれば上手く引っかかりそうだ。

俺はプロ並の精度をもって鈎縄を勢いよく投げた。

上手い具合に鈎は弧を描いて瓦の鉄片に食い込んだ。





その瞬間、バツンとか訳の分からない音と光と衝撃がした。


第六話「アフロと俺」へ

目次へ