モンスターNO.−04「鎹の夜 」

(モロダシ隊員報告)






名古屋には、キャンパスパブと云う風俗ジャンルがある。
これは、抜きキャバのハシリとでも云うべきもので、主にセーラー服を着た
女の子と、ほとんど真っ暗な個室で酒を飲み、やおら股間をもぞもぞさすら
れたかと思うと、「ズボン脱いで」と言われて、それからそれから、てな店
なのである。

男というものは、なぜか酔ってくると、股間の能力が減衰するのに対比して
えちな気分が高揚するのである。
キャバクラで酔って、おねーちゃんにえちな事して怒られた経験は貴兄にも
有ろう。
私なぞ、へろへろになってから行った、オサワリ無しのシースルーパブで触
りまくり、セット40分のところ、最初の10分だけで後はひとりぼっちと言う
ことさえあった。
男の素直な性欲の高揚を見事に昇華させるのが、このシステムなのである。

ピンサロと異なるのは、第一に個室であると言うことで、これはかなり重要
である。尤も個室とはいえ、大抵は簡単なパーティション崩れの壁とカーテ
ンでの仕切であり、視界を遮るだけの役割しか持たず、大きな音の有線は掛
かっているものの、曲間などに声は通ってしまうのだが。
また、30分コースと云う物も設定されてはいるが、やはりココは45分から
60分程度の長めのコースを選択し、女性との会話や、軽いタッチを楽しみ
つつ、気持ちを高揚させて行為に到るというのが、客としても重要であろう。


さて、過程を大事にする隊長の事、このジャンルに興味が無いわけがない。
私は彼に、名古屋斬り込み隊長として、市場調査を命じられたのである。

まずは情報誌CITY HEAVENの購入である。
今では関西版も市民権を得たと思われるこの雑誌、もともとはヘルス王国
名古屋の出であり、その東海版は、今日では4cmもの厚さとなっていた。

丹念に調べてみると、ここ名古屋のベッドタウン春日井には、ヘルスは一件
も無いにかかわらず、キャンパスは3件の広告があった。
しかも、そのうち一件はこの5月にオープンしたばかりで、6月一杯、
30分2980円のサービスだと言う。
偵察一件目、決定である。


天気予報通り、夕方から雨が降り始めた。
8時頃になって、帰る時にも降っていた。
明日からは週末まで崩れないとの予報。晴れてから傘要らずで行けば良い。
けど、雨なら……雨なら空いてて、選びたい放題なんじゃないか。
なんて妄想が頭をよぎり、別にスッキリしたいわけでもないのに飛び込む
ことに決定した。

駅前にあるビルの7階である。
エレベータホールには、6階のキャバクラが30分セット980円なぞと景気の
良いことを書いている。
こっちのほうが良いかも、と思いつつ7階のボタンを押す。

こうして辿り着いた7階の店名は、“コ●ャルんです”。POPも、その
まんま写るんですのパクリである。
えぇかっこしぃの土地柄、風俗の店名もコ洒落たものが多い名古屋の中に
あって、少しの駄洒落っ気を持っているのだが、やはり大阪には負ける。
スマタサンシロウを100点とするなら5点。

蛭子よしかずを痩せさせたような風貌の、一本足りない店員が応対してきた。
コースメニューは4種類
・イメージコース(30分、5980円)キス・タッチ・ハンドマッサージ(ローション)
・キャバクラコース(50分、7980円)キス・タッチ・フリードリンク
・キャンパスコース(40分、9980円)キス・タッチ・フェラ……
等々

私は、「サービスの2980円ってのは?」と聞くと、
「あれは、お試しコースということで、このイメージコースを基本にしま
して、女の子は店側の指名で、タッチは服の上から、キス無しになります」云々
明らかに、アレは辞めて別のコースにしましょうよ、と云う物言いである。
なんだい、客寄せパンダか、ろくな店じゃねえ、と思いつつ、別のコースを
金出して選択する気分でもなく、帰ろうと思った。
帰ろうと思ったのだ。
が、後々普通のキャンパスコースで来ることになるのなら、テコキであっても
3千円、捨てたつもりで中を覗くのも、まあ調査隊長としてはアリかな、と、
2980円のコースを指定してしまう。この時私には、3千円と言うのは、
言い訳でもあり、足枷でもあった。

狭い待合室に通されると、先客が二人居た。さらにすぐ後一人来る。
後から来たヤツは普通のコースを指定したらしく、「すぐ入れるのは、
この娘になりますが」とパネルを数枚店員が持ってきた。
横から覗こうとしたが、ちぇ、しっかりガードされてる。

真っ先に私が呼ばれた。先に二人待ってたのに、なぜ? と思う間もなく、
個室のスペースへ……。
と、仕切が低い!
私の腰くらいまでしか仕切が立ち上がっていないのである。これでは、
立ったら他、全部見えてしまうぞ。

個室ルームの入り口から見て、向かいの壁側に4つの個室分仕切があり、
入り口脇に一つあった。
その、入り口脇の一つに入れられる。
一つ一つの仕切部屋は3畳程度の広さがあり、ソファはローソファで、
私でも脚が伸ばせる程の大きさがあった。
「女の子が来るまで、ビデオを見てて貰います」と、店員は備え付けの
テレビデオにえちビデオをセットして去っていった。

やばい、これはやばい。
仕切が低く、入り口のすぐ脇……出入りする人に丸見えやないか! 
これではピンサロと変われへんで!
しかもビデオついてるから、私の身体は明るく照らされてるじゃないか!

向こうから見えると言うことは、こちらからも見えると言うことで、
待たされてる間、入り口から行ったり来たりしている女の子が何人か見えた。
暗いから顔ははっきり見えないが、雰囲気はなかなかのものである。
うーむ、やっぱり良いかもしれない。3千円だったらオトクかも……。

(つづく)

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5分程えちビデオを見ていると、ようやく女の子が……女の子が……女の子? え?
私に尻を向け、仕切の入り口で靴を脱いでいる姿は、隊長レベルのケツの大きさ……。
そして振り返ったその顔は……オマエ、フランケンか?

やばい、非常にやばい。
いくら3千円でも、これなら時間を無駄にしないだけ帰った方が良いかもしれない! 
逃げろ! 逃げるんだ!

と、フランケンが言葉を発した!
「コンバンワ。ワタシ、キョウガハジメテナンデス」
「ア、アァ、ソウデスカ」
「ナンカ、キンチョーシチャッテ」
「ハ、ハイ、キンチョーシマスネ、ソレハ」
「ウン、ドウシタライインダロウ、ッテ」
「エ? キョウガハジメテッテ、オレガハジメテ?」
「ソウデスヨ、ハジメテデス、ヨロシクオネガイシマス」
「(そういうことか。お試しコースになると、新人を試しに使ってみる店と、
 人気の娘をあてがって、次からの脚を期待する店とあるが、ここは前者なわけね)
 ソレハソレハ……」
「キョウ、7ジニハイッタンデスケド、イママデ(時は既に9時近く)
 ヨバレナカッタンデス。ヒマデラクダナー、コノシゴト、ッテオモヒマシタ」
「(そりゃあ、呼ばれないだろ)
 ヒマッテイッテモ、キャクニツカナキャオカネモラエナイダロ」
「ソウナンデスカネ、ヨクオカネノコトワカンナインデスヨー」

既に退路は塞がれてしまっている。
私は観念するしかなかった。
私の運命は、全てこのフランケンに握られてしまったのだ。

やがて、フランケンからお約束の言葉が発せられた。

「ジャア、シタ、ヌイデクダサイ」

ついに時間が来てしまった。
私は、そのプレイルームとでも言うべき個室が5部屋分かたまった部屋に、
入ってくる人、出ていく人、全てに見られる位置で、大切なモノを晒すハメになってしまったのである。
ほとんど寝ているような体勢で下半身を晒し、さらにその下半身はフランケンにしごかれている……。
しごかれている間、顔を背けている私の視界の隅に、かすかに数人の人の往来が見えた。 
……見られている。

フランケンは言った

「フクノウエカラナラ、オッパイ、サワッテイインデスヨ」

私は触るしか無かった。
その、ホルスタインのような巨乳を、ブラジャー、セーラー服という二重防御の上から、
肌のぬくもりも感じられず、乳房のやわらかさも感じられず、ただ一心不乱に揉みしだいた。貪った。そうするしか無かった。
フランケンのしごきは、素人のそれで、ナニも感するところは無かった。
私は半分涙を浮かべながら思った。

(ココって……SMパブだったのか)

そして私は果てた。
たとい、どれほどの屈辱があろうとも、私は果てたのである。
負けたのだ。


店からの帰り道、雨はさらに激しく降っていた。
私は傘をたたみ、雨に打たれながら帰っていった。



教訓
ローカルには掘り出し物もいる
がしかし、落とし穴もそれ以上に存在する






危険度:★★★☆☆