モンスターNO.−15(14の真実)「GossipであるところのFacts 」

(MAT隊長抗議の報告)






えぇ? あの日の話ですか?
えぇ、憶えてますけど。話すのはまあ、貴方には良いですけど、オフレコにして頂きたいなあ。
こんな、取材みたいな形では、どこかに公表されちゃうかと思っちゃいますよ。
えぇ、絶対にオフレコってことでお願いしますよ。必ずね。あの人、見かけ通り怖いんだから。

あれはそう、ボクが大東の住道でお客さんにご馳走になった日の事ですよ。
もうね、あの日は仕事……あ、いや、世を忍ぶ仮の姿っていうヤツですか?
私の仕事が4月から替わるっていうことで、或る得意先が送別会をしてくれるって言い出し
ましてね。
それで、そののクライアントが17時30分に住道に来てくれなんて云うもんだから、
大きな取り引きも無い「いち業者」の立場で気がひけるけど、厚意は受けるべきだなと
考えて、前々から予定を入れてあったんですよ。

でね、この日の2日前くらい前にね、あの人から金曜日京都まで来るけど都合いかが?
って連絡があって、予定あるけど終了時間は未定、それからでいいならOKだよ、って
返事しておいたんですわ。
ただ、前から聞いていたそのクライアントのイトコがやってるという小料理屋に行く
予定であること、「早く始めて早く終わろや」、との台詞で、案外9時頃には西中島
に戻ってこれるんではと踏んで、案外早めに戻れるかも、と後で付け足したんですよ。

で先ず住道の方なんですけど、小料理屋と云ってたのに大きな活魚料理屋なんだ
なあ、チェーン店のオーナーなのか、すごいなあと思ったら、そのイトコは小料理屋を
やめて、今はスナックをやっていることが判明しましてね。
時間的にマズイと思ったんでね、トイレに立つふりして「遅くなるかも」とメール
したらね、即あの人から「もう予定終わった」なんてメールが入ってきましてね。

こちらも、焦るわけですよ。クライアントはそろそろ場所替えようかと言い出し
はじめてますし。ここからが本番って思ってるクライアントに「じゃあ私はこの辺で」
なんて、口が裂けても云えませんしね。

スナックに行っても、ちっとも気は休まらなくてね。時計ばっかり気にしちゃった
りして。それにね、顧客の親戚がやっているスナックほど、タチの悪い店は無いって
今回よくわかりましたよ。なんでかって?だって、顧客は「こんなオバちゃんで云々」
ってイトコを指して云うのに、下手に同調できないでしょ?ええ、気のいいママ
でしたけどね、「年齢ネタを交えたシモ系」という、場末スナックにおける会話の
王道は、やっぱり歩めないんですよね。

でもその間も時間は刻々と過ぎて行ってたんですけどね、その間も頻繁にトイレから
あの人にメールで、「ごめん、まだ出れない」とか、30分置きくらいに謝ってね。

おっと。前置きだけで随分長くなっちゃいましたね。ちょっと急ぎましょう。

9時半頃から「私はそろそろ・・・」と切り出してた台詞がようやく受け入れられたのは
11時近くなったときでしてね、仕事とはいえあの人待たせて申し訳ないって思ったから、
なけなしの財布はたいてタクシー飛ばして西中島に駆けつけた訳なんです。
ええ、7500円ほどかかりましたとも。でもね、それは別に構わんのですよ。
せっかく大阪まで来てくれたんだし、遅くはなったけど今から存分に楽しんで
もらおうと思うと、なるべく早く行かなあかんなと勝手に思っただけでしてね。




ボクが着いたのは、そんなこんなでもうすぐ日が変わるって時間ですよ。
何よりびっくりしたのは、あの人は19時半には体が空いたってのに、酒も呑まずに
ずーーーっとモスバーガーで時間を潰してたってことです。ええ、そうなんですよ。

知らない土地なら、まあわかりますがね、あの人が去年の春まで勤務してたこの
西中島でですよ。しかも遅くなるって何回もメール入れてますしね、えぇ、てっきり
あの人は大人だと思ってましたからね、なんて云ったって。

それで、待たせた非礼を詫びた後にね、あの人が一番行きたいお店、ええ、そうです
Pに直行することにしたんですよ。確かに順番は違うかも知れませんけどね、
ここは前行った記憶では確か1時までだったはずでね、一軒寄ったら到底間に合わない
と思ったんです。もし遅く行って閉店などしてようもんなら、
「せっかく大阪まで来たのに生着替え見られないとはどういうこったゴルァァァ!!」
なんてボコにされかねませんからね。あの人、そういう人ですから。
本来上司であるはずの隊長にに対しても平気でそういう・・・あ、ここ削除しといて
ね。頼みますよ。

そんな理由で、先ずPに向かったんですよ。ええ、あの人も素面ながら、予想通り
満更でもなさそうなニヤケ顔をしてましたよ。ところがね、Pが結構混んでましてねえ。
でひとまずPは置いといて、あの人が満足しそうなお店を模索したんです。
HHとか、まだ行ったことないFとか、LAとかね。でもPが満員なら、この辺は
もっと待つんではないかな、と思ったんですよ。
そりゃあそうですよねえ、金曜の12時ですよ。

それで、奥の手なんですけどね、いつも空いているDならすぐ行けるんじゃないかと
考えたんです。ただね、ここはボクのオキニが居ましてね、本当はあの人だけは連れて
行きたくなかったんですけど、待たせてあの般若面が赤く染まるよりはずっとマシかと
自分に言い聞かせましてね。

ええ、やっぱりDは少し待っただけで入れましたよ。今日だけはオキニを指名したく
なかったんですけど、Dは連れと席を離すんでまあいいか、と思ってボクは××ちゃん、
あの人はココははじめてなんでフリーでしたよ。

ええ、ボクは満足しましたよ。いつもは指名が一杯入っててちょっとしか席に居て
くれないんですけど、なぜか今日は××ちゃん目当てのお客さんがもう一人くらいしか
居なかったですからね。長くついててくれて、本当にムフフでした。

それで、延長することにしたんです。あの人に付いたコがどうなのかは全く見えない
んでわからなかったんですけど、このお店、Dは延長時に指名替えが可能ですし、
事実それを伝える無粋とも思えるほどの大きな貼り紙が貼ってますしね。

え?システムでは可能でも、普通そんなこと女のコに悪くて出来ないって??
いえいえ、あの人にはそんな遠慮は存在しないんですよ。
前に他のもう一人と3人でキャバクラ行ったときなんて、ボクとそのもう一人が
指名そのままって云ったのに、あの人だけ有無を言わさず拒否しましたからね。
しかも、その時そのお店には他に女の子が居なかったんですよ??
離れた系列店から呼び出されて来た新しいコとすれ違いざまに店を出て行く、そのコ
の寂しそうな後ろ姿、ボクは一生忘れませんよ。あれ、泣いてたんじゃあないのかな。

おっと、話が逸れましたね。つまりあの人は、そんな貼り紙があろうがなかろうが、
ご自分のやりたいようになさるんで、仮に付いたコが気に入らなくてもどうにかする
だろう、と思ったんですわ。でも万一考えましてね、延長分はボクが持ってもいい
旨言付けておいたんです。これって配慮の極みですよね。

それからちょっとして、ボクが××ちゃんとイチャイチャしてましたらね、
右斜め前方から、じんわりとした「負のパワー」を感じたんです。そう、まるで
湘南の海の底に棲みついているという、防空頭巾を被った母子が佇んでいるような。
恐る恐る見上げますとね、そうそう、いましたよ。真っ赤な般若が。
「おっ、ここは民芸品扱ってるんかい!つうか、そりゃ天狗だって!がはは」
なんていう軽口は、到底叩けませんでしたよ。

どういう訳かあの人、かなりおカンムリなんですよね。
なんとか怒りを収めて延長しましたけど、そりゃあ、生きた心地しなかったですよ。

特に店を出てからが大変でした。全然納得行かなかったご様子で、閉店してるに
決まっているPの前まで行って、灯かりの消えた看板見ても踏ん切りつかず、
エレベーターで上がって、閉まった扉を恨めしそうに眺めたりしているんですよ。

挙げ句、一時間だけってことで前に行ったことのあるキャバクラ行ったんですけど、
当然の如く延長しましたしね、あの人。
それは、まあいいんですよ。ボクもDで勝手に延長した訳ですからね。
その後行った白木屋が修羅場でしたよ。場所がキャバクラから居酒屋に移ったのが
理解できてなかったのか、注文取りに来た女のコにずっと話しかけて帰らせないん
ですよ。靴下脱いで変にくつろいでるし・・・。
そのこと後で聞いても、あの人、全然憶えてないらしいんですよ。
「いや、魚民に行ったのまでは憶えてるよ」とかトンマなこと言ってますしね。

そんな勘違いも、数多くの屍の上に築かれたものだって事に気付いて欲しいですよね、ええ。
あ、くれぐれもこの話は内密にお願いしますよ。あの人、ホントに怒ると怖いんだから。







危険度:★★★☆☆