| 編集部: |
何故、始めようと思ったのですか? |
| フナバ: |
キョートレッツに関っている参加者それぞれにいろんな動機があります。 一つの動機や目的に収斂させることはできません。ですから、ここではぼく個人の考えとしてお話しさせてもらいます。
国家貨幣ではなく、使う人々が自分たちの手で発行する通貨ということで、 LETSというものが実際にイギリスやカナダで流通しているという話を聞いたときにはとっても興奮しました。いつもお金による不自由さを意識していたので、日本でも、日銀券を使わずに暮らせる生活圏が少しでも広がったら楽しいだろうな、と考えたからです。また、LETSはいくつかの点でぼくの趣味に合っているように思えました。
■個人主義の原則に基づいていながらコミュニティーを志向している点。
■計画経済というアプローチではなく、資本主義に替わる住み心地のよい社会を実現する可能性を宿している点。
■そういう側面を持ちながらも、 変な説教くささやくそまじめなノリが感じられないところ。
LETSは、「こうしなければならない」とか言わずに、各人ができる範囲で力を抜いてかかわれるものです。複雑で巨大なシステムを必要とするわけでもなく、コストもほとんどかからない。ないよりはあった方が便利なのだから、自分の周りでもLETSをやってみたいという気になりました。
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| 編集部: |
何を目指しているのでしょうか? |
| フナバ: |
現在の社会を見渡してみると、身近なところでは不景気や失業、学校教育現場の混乱、地球レベルでは、温暖化をはじめとする環境問題や戦争、南北問題など、20世紀から持ち越された多くの問題が未解決のまま目の前に横たわっています。それらの問題を解決すべく努力してゆくことは大切なことです。ただ、「ああしてはいけない、こうしなければならない」などといった意識改善レベルだけでのガンバリには限界があります。人間は、気持ちが落ち着かないときに、
「落ち着け、落ち着け」と意識でいくら念じてみてもあまり効果がありません。そうではなく、大きく深呼吸するとかして、
血液の流れ方を変え、脳の状態を変化させることによって気持ちを落ち着けるということをやったりします。社会も同じ。
マネーは人間のカラダにとっての血に相当します。現在のマネーはとても偏った流れになっているように思えます。
地域通貨は、このうっ血した社会に深呼吸をもたらし、今とは少しでも違う方向に導いてくれるものとぼくは期待しています。まあ、ここまではちょっと大きく構えた話でして、それはそれ。日銀券を稼ぐのが超ヘタでビンボーなぼくとしては、LETSでもうちょっとマシな生活をしたいってのが、正直なところ最大のねらいなのです。 |
| 編集部: |
始めて見て周囲や参加者の反応はどうですか? |
| フナバ: |
周囲の反応はさまざまです。興味をもってみてくれていることが多いですが、あやしんでいる人もいます。最近は、テレビや新聞などで取上げられることが多くなったこともあって、
地域通貨そのものの認知度が上がってきたのですが、以前は贋金を作っているかのように受け止める人もいました(笑)。
ワークショップでのフリーマーケット的な交換会はいつも盛り上がります。取引を体験した参加者の感想の多くは前向きなものです。「自分が他の人に何をしてあげられるのかをあらためて真剣に考えてしまいました」とか。 |
| 編集部: |
どんな人達が活動を支えているのでしょうか? |
| フナバ: |
■主催者について
どんな団体がやっているの?とよく聞かれるのですが、キョートレッツの場合、ある既成の団体が母体になっている集団ではありません。あくまで個人の集まりです。もちろん参加者の一人一人でみれば、様々な形でNPO、ボランティア活動などの運動に参加したりグループに属したりしている者も多いですけど。みんなキョートレッツには個人という立場で関っています。現在は、参加者の中の有志が、本格的な運用に向けてボランティアで準備を進めているところです。
■会員について
いまのところ、口コミで友人をワークショップに誘うなどして入会を呼びかけています。いろんな人が集まってきています。会社員、学生、教師、自営業の人、フリーター、失業中の人、トランスダンサーなどなど。参加者の年齢層は大学生から60代までと幅広い。個人として他の個人の自由を尊重することができるのなら、思想信条を問わずキョートレッツへ入会してもらえます。入会のときには同意書へサインをしてもらうことになっていますが、そこでは個の原則が確認されます。
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| 編集部: |
始めるにあたっての課題は? |
| フナバ: |
最初は主に、都市生活者のリサイクル交換の場として機能することになるでしょう。しかし、同じような層の者ばかりが集まっていても、本当に「食える」システムとはなりません。生産者の方やお店の方、あるいは技術を持ったひとにも安心して利用してもらえるような集まりにしなくてはいけません。そのためにもモノやサービスの循環を創り出す努力をしていく必要があると思います。いろんな職種の人たちとの信頼に根ざしたつながりをどうやって創り出してゆけるのか、ということが大きな課題ではないかと思います。 |
| 編集部: |
キョートレッツの仕組み・キョートレッツならではの特徴はありますか? |
| フナバ: |
基本的な仕組みについては、イギリスやカナダで行われているものと異なりません。先にも述べましたが、既成のNPO団体や市民運動団体を母体としない個人の集まりという点がキョートレッツの特徴かな。運営サイドつまり事務局が、会員に向かってあれこれとでしゃばることなく、常にニュートラルな状態を保てるように気を配りたいです。事務局は会員の円滑な取引を保証するためのミニマムな事務処理機構たるべしと考えています。そうしたゆるやかな枠組みの中からこそ、参加者間の自発的で即興的なコミュニケーションが花開くのでしょうから。事務局は無色のキャンバスを用意するだけで、あとの色づけは参加者の自由なセンスにゆだねるということです。将来的には、キョートレッツの中から、特定の目的や趣味、主張を共有する者のサークルやグループがたくさん生まれてきて、積極的に活動しているような状況になれば面白いですね。 |
| 編集部: |
活動を始めてみて新たな発見はありましたか? |
| フナバ: |
ワークショップを始めた当初は、 「そもそも地域通貨とは」とか「LETSが共同体の再生に役立つ」などとコトバでの説明から入ろうとしていました。しかし、そんな小難しい説明に何時間もかけるよりも、実際に取引を体験した方が容易にこの仕組みを理解できることがわかりました。また、LETSでの取引が、驚くほど自然な形でコミュニケーションを活性化することにも気づきました。そして、「資本主義によってばらばらになったコミュニティーを再生しなくてはならない」のように気張らなくても、おのずとコミュニティーの感覚を芽生えさせてくれる「仕掛け」であることに気づきました。それが一番の発見。おそらくLETSに説教臭さが感じられないのはその辺りに理由があるのかな。 |
| 編集部: |
参加者を集めるためにどんな事をやっているのでしょうか? |
| フナバ: |
いまは各自が周りの人に声を掛けて、ワークショップへの誘いかけをしているだけです。新聞などのメディアを使って大々的に宣伝することもやっていません。信頼できる安定したシステムを準備することが先決だと思っているので、当分の間は顔の見える範囲で呼びかけを行っていく予定です。 |
| 編集部: |
LETSは信頼のメディアと言われているが、全参加者への信頼をどのように確立していくのですか? |
| フナバ: |
信頼ということでいうと、事務局のシステム運営に関する信頼性と参加者が他の参加者に対して抱く信頼感とは
少し別のものですね。「信頼のメディア」と言われるときには後者の意味での信頼かな?
事務局の信頼性が確かなものとなるためには、口座管理をはじめとするいろんな作業を正確かつ効率的に行い、それらを会員にオープンな状態に保っておくことが必要です。後者の意味での信頼感についてですが、こちらは簡単に「確立」されるものではありません。それぞれの参加者が具体的な取引を繰り返して行くうちにおのずと育まれてゆくもの以外ではないと思っています。 |
| 編集部: |
面倒くさい近所付き合いのような、コミュニケーションになってしまう恐れはないのでしょうか? |
| フナバ: |
ないです。地域通貨は便利だから使うのであって、義務感や強制によって利用させられるものではありません。
面倒くさかったりうっとうしいなら使わない自由があります。 |
| 編集部: |
負債を抱えるのみで自ら何も提供しない人が出てきた場合の対策は? |
| フナバ: |
事務局がその人を除名するなどということは、原則として、したくありません。負債を溜め込んでいる人の中には、ある理由で今は無理だけれど将来なんらかの財やサービスを提供する意志がある人と、逆に全くその意志がない人の両方が考えられます。前者に関しては全く問題がありません。気長に待ってあげましょう。
しかし、後者の人はマナーを欠いた態度と言わなければなりません。キョートレッツでは、各会員の口座残高および過去の取引内容を全会員の間でオープンにしておきます。必要ならば自分の取引相手の口座も調べることができます。もし取引相手の過去のマナーが不適切であると判断するならば、個人的にその人との取引を拒むことができます。事務局が何らかのサンクションを行使するというよりも、この方が健全だと思います。参加者の中には、自分が提供できるものが見つけられなかったり自信がなかったりする人もいるかもしれません。そんな場合には、周りがその人に「ああして、こうして」と声を掛けてあげられるような雰囲気ができたら素晴らしいと思います。
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| 編集部: |
全員があまり利用しなかった場合、事務局は何かするのですか? |
| フナバ: |
取引を強制するなどということはできません。ただ、利用するためのきっかけづくりはしていきたいと思っています。まず、定例的な交換会は必要でしょう。その他に、会員間の交流を目的としたイベントや一緒にメシを食べる場など。あと、マージャン大会なんていいんじゃないかな(笑)。 |
| 編集部: |
他の地域でもLETSは多数始まっているが、LETS同士での情報交換の場などはあるのですか? |
| フナバ: |
英国にはLETS LINK UKというしっかりした全国ネットワークが存在していて、情報発信や交換の場として機能しているほか、新たにLETSを立上げるグループのためののサポートなども行っています。日本ではその手のネットワークはまだありません。
先年の11月に四日市市で「地域通貨サミット」というのが開かれたそうです。それは地域通貨関係者が参加しているあるメーリングリストでの交流がベースになっているようです。これからも交流はネットを介したものが中心になりそうですね。 |
| 編集部: |
最後に、今後の具体的なスケジュールは? |
| フナバ: |
1月28日にキョートレッツのスタート記念会を用意しています。 具体的なことはまだですが、2月以降、定例的に交換会を催して、軌道に乗せてゆきたいと思っています。 |
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(2001/1/5) |