B - 3 世界の地域通貨
 世界の地域通貨
現在、無数の地域通貨が、世界各地で誕生しています。まず、1983年にカナダで LETS がうまれました。今では、同様のシステムは、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、フランスなどに普及しています。そして、1991年にアメリカのニューヨーク州イサカ市で「集中発行方式」のイサカアワーが発行され、また1996年に、アルゼンチンのプエノスアイレス市で、「相互信用発行方式」のRGTがはじまるなど、 世界的に地域通貨の動きが活発になってきています。
表1 世界の地域通貨
設立年・場所・参加団体数 貨幣単位 発行方式 利子・価格 特徴
国民通貨 国民国家・経済共同体(EU)変動相場制 ドル・ユーロ・円 (ドルが基軸通貨) 中央銀行
(不換紙幣)
債権・預金は有利子 匿名性・
強制通用力
イサカ
アワーズ
1991年
アメリカ・NY州・イサカ
イサカアワー
=労働1時間
=10ドル
集中発行方式(紙幣) 無利子、国民通貨と併用可能 貨幣発行量は、委員会によって管理されている
タイムダラー 1986年
アメリカ 全米200団体5万人
労働時間を単位 相互信用発行方式 無利子、通貨価値は時間を基準にする。 国民通貨との併用は不可 オーウェンの労働証券と同一のシステム
LETS 1983年
カナダ・ヴァンクーバー島・コモックスヴァレー、2,000地域
1グリーンドル
=1カナダドル
相互信用発行方式 無利子、価格決定は自由、国民通貨との併用可能 貨幣の発行権が個人にある
WIR 1934年
スイス・チューリヒ 参加者8万人、年間20億ドルの取引
1WIR
=1スイスフラン
集中発行+相互信用発行方式 低利子の貸付あり、紙幣は決済時に使用、 国民通貨との併用を前提 スイスの全企業中17%、76,000社が参加
それでは、ここで代表的な地域通貨を紹介しましょう。
 
LETS(Local Exchange and Trading System)は、1983年、 カナダのバンクーバー島コモックス・ヴァレーでマイケル・ リントンにより考案された地域通貨です。LETSは、紙幣を発行せず、相互に通帳を持ち、当事者どうしで決済します。 つまり、発行方式としては「相互信用発行方式」です。口座を管理するために事務局があるものの、取引とそれに伴うお金の発行は、 当事者の合意によって行われます。現在、各地域独自の制度に作り変えられ、カナダ、イギリス、オーストラリアを中心にして、 リントンによれば、世界で2,000以上の地域に拡がっているそうです。
 
イサカアワーズは、1991年11月にアメリカのニューヨーク州イサカで導入された 地域通貨です。その発行方式は「集中管理方式」で、紙幣を発行しています。運営しているのは、 NPOであるIthaca Hours inc.。イサカ市では1987年からLETSが導入されていたのですが、LETSの事務手続きを簡略化するために、 紙幣タイプの地域通貨を導入しました。アワーという名称は、我々(our)と時間(hour)をかけたもので、 参加者の能力を時間というモノサシで公正に評価したいという意図が込められています。 現在1アワーズから1/8アワーズまで5種類のお金が発行され、1998年では、人口3万人の町で6, 700アワーズの紙幣が流通しているそうです。
 
トロント・ダラーは、1998年12月に、 カナダのオンタリオ州トロント市で導入された地域通貨です。 LETSの理念とイサカアワーズの利便性を兼ね備えた地域通貨として、地域経済の活性化を目的に導入されました。 トロント・ダラーは、イサカアワーズと同じく紙幣による「集中管理方式」です。トロント・ダラーの場合、 カナダドルでトロント・ダラーを購入すると、地域通貨が発行されます。 つまり、地域通貨の価値は、国民通貨にリンクしています。 その特徴は、地域通貨から国民通貨へ交換できることです。これは、通貨の利便性を高め、 商店や企業で流通することを目的にしているからです。ただし、トロント・ダラーの流出を防ぐために、 トロント・ダラーとカナダドルとの交換比率を10対9に定め、カナダドルに交換すると、つねに1割の損益を被るようにしています。 1998年12月の導入時には30万トロント・ダラー、1999年12月では、 8万トロント・ダラーが流通しているそうです。
 
タイムダラーは、1986年にエドガー・カーン氏によって考案された 地域通貨です。タイムダラーの目的は、コミュニティの形成や地域経済の活性化ではなく、ボランティア活動を活性化させることにあります。 システムはLETSと同じく、参加者同士で地域通貨を媒介に財・サービスの相対取引を行う「相互信用発行方式」です。 LETSとちがう点は、モノやサービスの価値が労働時間で測られることと、 メンバー同士の取引を仲介するコーディネーターが存在すること。LETSの場合ですと、価格の決定は取引当事者どうしで行います。 また、取引の交渉は、参加者の自発性にゆだねられています。タイムダラーでは、 地域通貨は国民通貨と交換できず、労働時間に応じて発行されます。タイムダラーには、時間を共通のモノサシとみなし、 時間により参加者の行為を公正に評価するという理念があるからです。現在、全米で200団体5万人が参加しているそうです。
 日本での広がり
日本では、かつて地域通貨と類似したものとして「結」「講」などがありました。 現代では、こういった制度は、もはや消えてしまったと言えるかもしれません。 しかし、そこにあった助け合いの仕組みを再び作り出そうという動きは、現在も活発に行われています。 例えば、コミュニティをよみがえらせることを目的とした地域通貨の導入が、全国に広がっています。
 
最初の取り組みは、1991年に生活クラブ生協神奈川で行われた「神奈川バーターネット」の実験です。 これは、LETSを利用したもので、4ヶ月間で175人が参加し、220件の取引があったそうです。  
 
1995年には愛媛県の越智郡関前村で、異なる世代同士のコミュニケーションを目的に、 タイムダラータイプの地域通貨が導入されました。名称は「だんだん」といい、「重ね重ねありがとう」を意味しているそうです。

 
1999年には、千葉県まちづくりサポートセンターが「ピーナッツ」という名称でLETSタイプの地域通貨を始めました。ピーナツは地元商店街で使用でき、 これまで60人の参加者の中で7万ピーナッツが流通したそうです。また、同年には、滋賀県で草津市コミュニティ支援センターが、 「おうみ」という紙幣タイプの地域通貨を発行しました。参加者は個人50名、団体36、 1,600おうみが流通しているそうです。今では、タクシーでも利用できます。その他にも、 全国で30以上の地域が地域通貨に取り組んでいます。
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