冬の眠り

               隣には彼女の寝顔が微笑んでいる。いつ見ても綺麗だ。僕は彼女に見とれ
              ながら、どんな夢を見ているのだろうなどと考えてみる。この季節になると
              自然と眠たくなるのだ。春に始まって冬に終わる一年の流れの中で一番安ら
              げるときだ。この寒さも手伝っているせいか、この眠りを妨げるものは何一
              つない。そう彼女の寝顔が言っているように思えた。くすぐって起こしてや
              ろうかなどとも考えたが、起こして機嫌を損ねられるのも困るし、このまま
              彼女の寝顔を眺めていた方が自分にとっても幸せなのでやめた。窓から差し
              込む柔らかな冬の日差し、部屋中のからっと乾いてひんやりとした空気。そ
              の何もかもが僕らをやさしく包み込む。

               眠りにつくことで現実とは離れた夢の世界に旅立つことができる。でもそ
              れがすばらしいものであるのかそうでないのかは行ってみないと分からない。
              そういえば彼女が前に眠ることを「たいむわーぷみたいで私は好き」とか言
              っていた。僕はそのとき「眠りすぎて、気が付いたらおばさんになってたら
              嫌じゃん」とか返した気がする。今思うと変な会話だ。やっぱり限りある時
              間を有意義に使いたいというのが僕の信念だ。眠ることがそうでないという
              訳ではないけど。それでもこの季節だけは違う。眠ることが義務であるか
              のように草も木もみんな静かな眠りにつく。みんなそれぞれ違う夢を見ながら、
              暖かな春が来るのを待っているのだ。そして待ちわびた春の訪れと共にいっ
              せいに目覚めるのだ。

               彼女の寝顔をもう一度見てみる。やはり何度見ても綺麗だ。草や木と同じ
              ように春までずっとこのままでいられたらいいのに。そんな事を考えながら
              彼女に見とれているうちに、なんだか僕も眠たくなってきてしまった。こう
              なったら僕も彼女と一緒に眠りにつくしかない。そう思って目を閉じた瞬
              間、僕の眠りは不可抗力によって妨げられた。
               「今日の授業はここまで」

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