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連載10◆ 市民が示す代替案 

 2001年12月、球磨郡相良村において熊本県主催の第一回住民討論集会が開催された。川辺川ダム計画について住民の疑問は解消されず、特にダムの主要な目的の一つとされる「治水」面に関しては、国によるデータ隠しを疑う声や、市民と専門家による代替案が提示されていた。
 「説明責任は十分果たした」とひたすら工事を急ぐ国に対し、潮谷義子熊本県知事は「住民の疑問に対しきちんと説明を果たす義務がある」と表明。県がコーディネートに入った住民討論集会は、昨年12月21日で第5回を数えた。
 これまでのテーマは「治水」。住民側は専門家を交えた住民討論集会対策治水班を作り、情報公開請求、分析、調査を繰り返した。問題となる点は何か。住民の声を裏付けるデータはあるか。国の結論の根拠は何か。毎週のように集まりインターネットも活用して議論を重ねた。
 これまでで最も問題となったのは、下流の人吉市と八代市における、川の基本高水(洪水流量)と現在の最大流量。
 国の主張によると人吉市において、大雨による基本高水は7000トン/秒。現在の川の最大流量を4000トン/秒として、昭和40年並の「80年に一度」と想定された大雨が降ると川は溢れ、ダムによる治水が必要となるとしている。
 ところが、住民側はこれが過剰な見積もりであると主張。情報公開で入手した資料を元に分析し、同じ地点における基本高水は5500トン/秒で、現在の最大流量の範囲内であると主張。国の想定する大雨が降ったとしても、氾濫せずに余裕で流れることになる。
 この違いは、計画時と比べ河床掘削や堤防の嵩上げ、河川拡幅が進んだこと、森林伐採が行われていた昭和40年頃に比べ、山の治水力が上がったためである。住民側は、さらに遊水池の設置や、現在すでに計画されている河床掘削が終われば、十分に「流れる」と指摘してきた。
 逆に、ダムを中心とした治水のために洪水が引き起こされる危険性がある。想定した以上の量の大雨が降った場合、ダム崩壊を防ぐため緊急放水を行わなければならない。この時の流量は、自然に川が流す流量をはるかに越え、下流では一気に流量が増えることになる。昭和40年、人吉市を未曾有の洪水が襲ったが、球磨川上流にある市房ダムの緊急放流がその大きな原因になったと、人吉市民の多くは考えている。
 住民討論集会において、治水班は見事なまでの分析と論理を展開。データ隠しや、流量を架空で計算しているという声に対し、国はなんとも歯切れの悪い説明を繰り返した。何よりも、流域最大の都市であり「ダムによって洪水が防止され、最大の恩恵を受ける」とされた八代市においては、ダムがなくても洪水は起きず、生命財産が守られることを国が認めることになった。
 「専門的議論は国の管轄」という常識は完全に覆された。次回住民討論集会では新たに「環境」がテーマとなる。(了)



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