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連載3◆国は農家の真の声を聞け 川辺川利水訴訟

 「ダムの水はいらん!」
 2001年5月、法廷に力強い声が響いた。福岡高等裁判所、川辺川利水訴訟第二審での初公判。多くの傍聴人が見守る中、法廷へ来られない農家の声が、原告側が持ち込んだ4メートル四方の巨大スクリーンから流れた。
 川辺川ダム計画の中には、農林水産省による国営川辺川土地改良事業が含まれている。全長27kmの幹線水路を作り、3000ヘクタールの土地に水を引くというこの利水計画は、1983年国営事業として受理された。
 国営事業とは本来、地元農家が自ら計画し国に申請する事業。対象農家の3分の2以上の同意が必要となる。ところが、この事業の対象農家の多くは事業に賛成ではない。すでに川辺川上流から自然こう配を活かした六角水路が引かれ、水の不要な茶や牧草の作付けに成功しているためである。減反や自由化で米の需要そのものが減る中、大きな負担金と引き替えに今さらダムの水はいらないという農家がほとんどだった。そんな中で農水省は、事業に反対する農家をだまし同意の印鑑を押させたり、死んだ人の名義の土地を無断で対象地にしたりして、強引に3分の2の同意を取り付けたのである。
 球磨郡相良村に住む梅山究さん(70)も、4000戸に及ぶ対象農家のうちの1人。農水省の強引な姿勢が明らかになり始めたのは、梅山さんが役場勤めを終え第二の人生に入りかけた1996年のことだった。まったく取り合わおうとしない国に対し、弁護団の支援を受けた対象農家は、熊本地方裁判所へ持ち込むことを決意。梅山さんは原告団団長を引き受けた。国を被告に裁判に挑む原告側農家の数は2000戸。対象農家の実に半分に及んだ。
 しかし2000年9月、熊本地裁が出した判決は「同意書の取り付け方に違法な行為があったことは認めるものの、必要な3分の2の同意は満たしている」と原告の訴えを却下。同意取消を望む原告団の主張を無視したものだった。梅山さんは迷うことなく控訴、現在福岡高裁で第二審公判が行われている。
 「公共事業は法にかない、理にかない、情にかなうものでなければならない」筑後川上流での下筌ダム闘争のリーダー、故・室原知幸氏のこの言葉を、梅山さんもたびたび繰り返す。「公共事業の美名の下、農家の心を踏みにじり強行されようとしているこの事業は、法にも理にも情にもかなっていない。」第一審での初公判で梅山さんはこう陳述し、この裁判は人権に関わるものだとも述べた。
 川辺川ダムの利水・治水・発電という3目的の一つ、利水でダムの無効性が示されればダムは止まる。
 「国に絶対勝てるのかどうかは分からない。」しかし、と言葉を続ける。「私たちには負ける理由がない。裁判の結果がどうであっても、NOはあくまでNOだ。」梅山さんは力を込めてそう語る。(了)



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