|
中学の同級生だったボスと付き合って、半年経ったある夏のこと。 私は18歳という若さで妊娠した。 私は見た目「温室育ちのわがままなお嬢様」というタイプ。 優しくないし、気遣いや思いやりに欠け、性格が悪いと良く言われた。 成績はいつも上位にいるような優等生だった。 正義感が強くて、悪いことをする人を軽蔑するところがあった。 一方ボスは幼稚園児のときから腕白で、頭が悪くて、悪さばっかりしていた。 中3で隣の席になっても、喋ることはほとんど無かった。 タイプが違うので、お互いに受け付けない人間だと思っていた。 中学を卒業して3年経ったある日のこと、 「真面目な女の子に電話する」罰ゲームで、ボスが私に電話してきた。 ボスはやっとの思いで入った高校に半年も行かずに退学して、プーだった。 当時のボスはホントにダメ人間だったけど、話してみると案外気が合った。 まだ学生だった私と付き合って一ヶ月後、ボスはやっと定職についた。 二人を知る同級生は「なんであの二人が・・・」とみんなびっくりしていた。 「きっとすぐ別れるよ」口をそろえて言った。私もボスもそう思っていた。 私は,避妊は女がするものだと思っていた。 だから当時も基礎体温を何年か前から付けていたし、 ゴムも可愛いものを自分で買いに行っていた。 「もし妊娠したら産むよ。それでもいいならHする。」 (今思えば、こんなこと言っても男はヤリタイばっかだから承諾するよね) ボスに確認してからそういう関係になった。 私は2年ぐらい基礎体温のデータがあった。 周期は31日で一定で、生理開始日から19日目にいつも排卵が確認できた。 ゴムも使っていた。自分でも妊娠しない自信があった。 子供が嫌いで、親の不仲を見てきたせいか結婚もしたくなかった。 それに中絶をするのは絶対にイヤだったし、そんな人を軽蔑していた。 「産めないなら、Hするなよ。」そう思っていた。 ――――――でも、私のこの身体に小さな小さな命が宿っていた。 何がなんでも守りたかった小さな命。でも私は守り切れなかった。 あの事があって、私の人生は全く違うものになった。 あれからずっと暗闇の中にいた。早く死にたかった。 それでも、不幸があった分、いつかきっと幸せになれるから、 と自分に言い聞かせ自分を奮い立たせて2年間ぐらい頑張った。 でも学校を卒業し就職しても、何もうまく行くことは無く私は壊れた。 20歳になった私は仕事もやめて、家にずっとこもりっぱなしだった。 ボスは仕事が終わると毎日片道1時間かけて私に会いにきて、 私が寝付いた夜中の3時くらいに帰っていった。 私が再就職してからもその生活は1年続いた。 そして21歳で結婚することになった。 貯金もたまり、やっと子供が産むことのできる環境になった。 避妊してても妊娠したぐらいだから、すぐに子供を授かれると思ってた。 でも、排卵日とその前にしっかりHしても、妊娠しない。 人生思い通りにいかないことっていっぱいある。 20世紀最後のクリスマス、待ちに待った待望の「新しい命」を授かった。 最高のプレゼントだった。ボスも私も嬉しかった。とても幸せだった。 ―――しかし、私のお腹の中で赤ちゃんの心臓は止まってしまった。 そして一年後の2002年の冬、私とボスはまた新たな命を授かった。 今度こそ何がなんでも守ってあげたい。そう誓った命。 でもその命も短く、哀しいことに私は3度目の流産を経験しました。 自然流産の頻度は、約10〜20%程度。 妊婦の10人に1〜2人は流産する。 2回流産を繰り返す確率は2.3%。3回流産を繰り返す確率は0.3%。 私はその0.3%の中に入ってしまった。 流産を3回以上繰り返すと「習慣性流産(不育症)」と言って、 妊娠を継続することが困難な体質だということを意味する。 今後もし妊娠しても、高い確率で流産しやすい。 3回流産した人が4度目の妊娠で流産する確率は86.4%。 多分、この先また妊娠することがあっても、よっぽどのことが無い限り、 赤ちゃんをこの手に抱くことはできないだろう。 この世に「生まれる」ってなんて難しいことなのでしょう。 この世で「生きる」ってなんて辛く哀しいことなのでしょう。 この世に誕生できなかった3人の命を意味のあるものにするために、 この世に残された私は、一体何ができるのだろう…。 一時期は、なんとしてでもボスの子供を授かりたいと思えた時があった。 でも、今はもうとてもそんな風には思えない。 私が欲している命は、新しい命ではなく、あの時のあの命なのだから。 きっと、奇跡的に新しい命を授かったとしても、 この悲しみや苦しみは永遠に消えることはないと、悟ってしまったから。 不可能に近いマリア様的確率で授かった優太、 私自身を大きく成長させてくれた彩音、そして大我。 それからここに訪れ励まして支えて下さったみんな、 みんなみんな本当にありがとう。 愛を込めて…。 ゆり ―2004/2/5― 追記:ゆりの日記は掲載を中止しました。
![]() |