
「着きました! ここが、ウルルンスターです!」
ホロビタスターとは空気から全然違う、とても(瑞々しいではなくて)水水しい星に、一行は到着しました。
「海が見えるね」
「また水の中をもぐっていくことになるのかしら♪」
「アドレーヌ、なに楽しそうにいうんっスか?」
「だって実際楽しみなんだもん♪」
「でもね、アド。水の中は流れが激しいところもあって、流されたりして結構怖いんだよ?」
「話は歩きながらでもできるだろ? 早くクリスタルのかけらを集めに行くぞ!
リボン、どっちにある?」
「ええと・・・あっちです!」
一行は、リボンが指した方向に歩き始めました。
実際には、のんびり話なんかしている余裕はありませんでした。
水の豊かな星だけあって、いろいろな水の生き物がいたるところに住んでいるのですが、彼らは一行に攻撃してきたのです。
当然、一行はそれを避けなければなりませんでした。
「な、なによ、なんであたしたちが攻撃されなくちゃいけないわけ?」
「は、反撃するっス!」
「よーし、カッター!」
「待て!」
デデデ大王は、カービィが取り出した緑色の能力星をさっと取り上げました。
「なにするんだよぅ!」
「こいつらは縄張りに侵入する敵を追い払おうとしてるだけだ!
俺たちが離れればこれ以上は追ってこない!」
「・・・そうかもしれない」
「不必要な戦いはできるだけしないほうがいいと思います」
「じゃ、さっさと逃げるっス!」
「その前に能力星返してよぅ」
カービィはデデデ大王からとり返した能力星を呑みこみ、一行は、ウルルンスターの住人たちの攻撃を避けながら、クリスタルが示す洞窟に逃げ込みました。
洞窟の中も、住人たちはたくさんいましたが、特に攻撃してくるような気配はありません。
一行はようやく一息つくことができました。
この洞窟は入り口こそ小さいですが、広くて高い、かなり大きなものでした。
その中で、じっと一行を見つめる、顔のついた黄緑色の球体のような生き物に自然に目が止まりました。
「なんだこいつ?」
「確か、ゼボンだったと思います」
「結構かわいいわね」
「そうっスか?」
カービィがいきなりゼボンの上に着地するようにジャンプしました。
「なにやっているんですか?」
次の瞬間、カービィの姿が消えました。
「なっ?!」「え?」「なにっスか?」
三人の声が重なりました。さらにその次の瞬間。
ぼよよ〜ん! ・・・・・・・・・・・ダン!
あまりにも唐突だったので、今起こったことを整理して理解するのにしばらく時間を必要としました。
「みんなー、早くはやくー!!」
カービィの声はななめ遥か上から聞こえてきました。
見ると、カービィの声が聞こえてきた辺りには大きく丈夫そうな岩のでっぱりがあって、カービィはそこから手を振っていました。
リボンがおずおずと説明します。
「忘れていました。ゼボンには、自分に触ったものをとりこんで、ある方向に飛ばす性質があるんです」
「それならそうと、早く言えー!」
「一瞬本気でどうなったかと思ったっス!」
「そうよそうよ!」
「・・・・・・ごめんなさい気がきかなくて」
「ゼボン、ありがとー!」
カービィはいつも気楽です。
「リボン、クリスタルのかけらはどこにあるの? 上?
このゼボンに飛ばされていかなきゃいけないの?」
「・・・・・・。そのようです・・・」
「カービィさん、そこからクリスタルのかけらは見えるっスか?」
「見えないよ〜! でもね、ゼボンはここにもいるよ!」
ちなみに四人がいる地面からは、カービィが立っている足場の影になって、そこにいるらしいゼボンは見えません。
「わかった! しばらくそこで待ってろ!」
そして・・・
さっきまでカービィだけだった足場は、三人増えてかなり窮屈になりました。
「クリスタルのかけらは、まだ上です」
「カービィ、また最初に行ってこい」
カービィはその言葉とともに、デデデ大王にゼボンに向けて放り投げられました。
一瞬にしてゼボンにとりこまれ、次の瞬間飛ばされます。
行きついた先は、仲間たちが今待っている足場と似たようなところでした。
斜め下に仲間たちがいて、みんなカービィのほうを見上げています。
「カーくん、そっちはどんなところ?」
「そっちとあんまり変わらないよ! ゼボンもちゃんといるよ!」
「だったらカービィさんは先に行っててほしいっス! ひとつの足場にたくさん集まりすぎると窮屈っスから。
・・・で、いいっスね?」
デデデ大王はワドルディの意見に賛成するように深く頷いています。
「わかったぁ! じゃ、先に行くね!」
カービィはゼボンに飛びこみ、さらに斜め上に飛ばされました。
そして、そこで仲間たちがさっきまで自分がいた足場に飛ばされてくるのを待ちました。
「目が回る・・・」
アドレーヌは足場にすわり込んでいます。
どうやら飛ばされるときの回転に酔ってしまったみたいです。
「だいじょうぶっスか?」
ワドルディが座りこんでいるアドレーヌの背中をさすってあげています。
ただ、ワドルディは小さいのでアドレーヌの腰に近いところしかさすれませんが、アドレーヌにはそれで十分だったようです。
デデデ大王もその様子を見守っていましたが、アドレーヌがだいぶ落ち着いてきたことを確認するとまわりを見まわしました。
そして、いきなり上を指差して叫びました。
「おい、クリスタルのかけらがあんなところにあるぞ!」
みんな、デデデ大王が指す方向に注目しました。
そこには、リボンが大切に守っているものと全く同じ輝きがありました。
リボンがすぐに飛んでいき、クリスタルのかけらを手に入れて戻ってきました。
「よかったっスね!」
「それで、次はどこにあるの?」
「次は・・・まだ上です」
リボンは心から申し訳なさそうに言います。
一行はさらにゼボンに五回(カービィは四回)ほど飛ばされて、やっと洞窟の出口にたどり着きました。
アドレーヌは地面にひっくり返って、脂汗を浮かべてぐったりしています。
「だいじょうぶっスか?」
「だ、だいじょうぶじゃないわ・・・」
「アド、どうすればまた元気になれる?」
「なにもしてくれなくていいからしばらく休ませて・・・」
「仕方ないな」
一行はその場でしばらく休憩をとりました。
その様子は省略します・・・。
「みんなありがと。もうだいじょうぶよ」
「よーし、レッツゴー!!」
カービィは勇んで先頭きって駆け出しました。
そうして、いきなり飛び出してきたかえるのような生き物に、見事に飲み込まれてしまいました。
「カーくん!?」
「なにっスかあれは?!」
「あれは、たぶんペロッガーだと思います!」
「そんなことはどうでもいい、さっさとカービィを助けるぞ!」
「おー!!」
そして・・・
リボン以外の全員が、それぞれが得意とするやり方でペロッガーに攻撃したのがうまく行って、カービィは(ほぼ)無事に吐き出されました。
「ひゃぁ〜、死ぬかと思った」
カービィがさっき歩いていた道にぴったり沿うようにがけ(壁?)がせりたっているのですが、よく見ると所々に大きな穴が開いていて、闇の中から二つの目が外の様子をうかがうように不気味に浮かび上がっているのです。
一行は全員、思わず息を呑みました。
(ぺ、ペロッガーには十分ちゅういしようね)
(そ、そうっスね)
カービィがお返しとばかりにボムをさっき一度は飲みこまれたペロッガーの目の前に投げました。
ペロッガーは反射的に呑みこみ、当然ボムはペロッガーのおなかの中で爆発しましたが、それが効いている様子はありませんでした。
「行きましょう」
一匹だけではなかったペロッガーの餌食にならないように注意を払いながら、一行は危険地帯を抜けました。
ざぁぁぁぁぁ・・・・・・
どんな風に水脈が通っているのか、天井から水が滝のように流れ落ちてきています。
どこからかさしこんでくる光が流れ落ちる水に反射し、屈折し、まるで水そのものが光っているようにも見えます。
ざぁぁぁぁぁ・・・・・・
「きれい・・・!」
アドレーヌが思わず感動の声を出しました。
「そうか?」
「ボクには透明なそうめんに見える・・・」
「そうめんには見えないっスよ、いくらなんでも」
アドレーヌは情趣を知らない仲間たちの言葉のおかげで不機嫌な気分になりました。
そうしてもういちど滝を見上げ・・・別のことにも気づきました。
ガルボという生き物が滝の横にいたのですが、そのガルボが急に目をかっ、と見開いたのです。
そのガルボの視線の先にはリボンが!
「リボン、あぶないっ!」
「え? きゃっ!!」
ボオオオ・・・!!
間一髪、リボンはガルボがはきだしてきた炎をかわし、一行は一箇所に集まりました。
「ここは一気に走りぬけましょう!」
リボンがいうと全員同時にうなずき、そして走り出しました。
一行はやはりもともとの住人たちから攻撃を受けました。
走っていれば深追いはしてこないのでやり過ごして先に進むのは簡単でしたが、それでも完璧に攻撃をよけきるというわけにはいきませんでした。
岩の壁に一行を誘うように開いた穴を抜けると、そこは狭い空間でした。
一本の橋がかかっていて、その上にデカチックが、橋の真下には普通のチックが待ち構えていました。
「ねえねえ、クリスタルのかけら知らない? ボクたち探してるんだ」
「ソレハココニアル。ホシケレバワレヲタオセ!」
デカチックはそういうなり、カービィに襲いかかりました。
カービィ以外は全員橋の下に降りて、できるだけ戦いの邪魔にならないようにしながら見守っていました。
デカチックはゆっくりとした動きでカービィに体当たりをしかけますが、カービィは慌てず騒がず赤い能力星を二つ取り出しました。
「くらえぇっ! バーニング:バーニング!」
カービィはそのまま、炎をまとってデカチックに突進します。
普通のバーニングとは違い、その炎は優雅にはばたく鳥の形をしていました。
「きれい・・・!」
「そうっスか?」
デカチックはカービィの攻撃に耐えましたが、カービィが2度3度と攻撃するととうとう力尽きました。
「ミゴトダ・・・」
デカチックは一言そう言い残し、消滅しました。
「カーくんって、いつ見てもすごいね!」
「そうかな?」
「おしゃべりしてないでいくぞ。リボン、クリスタルのかけらはどこにあるんだ?」
「ええと・・・この先です!」
「じゃあ、行きましょう!」
一行は長い洞窟を抜けました。
明るい日差しが暗いところに慣れた目に容赦なく突き刺さります。
「まぶし・・・!」
いち早く明るい世界に慣れたアドレーヌがキャンバスをとりだし、さらさらと絵を描きました。
「あ、そうだカーくん、これあげる♪」
その直後キャンバスからマキシムトマトが飛び出し、カービィは迷わずそれに飛びつきます。
「アド、ありがと!」
「今までしっかり戦ってくれたおれいよ」
カービィはそれを完食してから、クリスタルが示しつづけている方向に走り出しました。
一行が素通りした大きな岩の中の空間で、クリスタルのかけらが寂しそうに輝いていたことに気付いたのはだれもいませんでした。