第1章 不思議の国
| 職人登場 大学入学当初、おかやんはバスケができるところを探していた。最初に入ったバスケサークルでは、そこのメンバーに全くなじむことのできないまま2年を過ごした。 そのサークルとは別に、大学の体育でバスケットボールがあったので、その授業に毎週顔を出した。この体育の授業での出会いから数年後、おかやんは恐るべき世界に足を踏み入れることになるのである。 |
| 体育館にはいくつかの集まりができていた。その中でも大きめの集まりは2つで、1つはおかやんが中学高校時代に見たことのある学校の先輩たちの集まり、もう1つは、一見して怪しげだと容易に思うことができる集まりだった。 「あれは何の集団やろう?」 おかやんは隣の椅子でせかせかと着替えをしているてっぺいに尋ねた。 おかやんとてっぺいは、中学時代からの友人でお互いバスケットボール部ではなかったがバスケットボール好きで、大学のバスケの授業に参加していた。 |
| 「わからん…けどあやしすぎるわぁ。ほっとこほっとこ」 てっぺいは、とても放ってはおけないほどの大きな声で、目の前にいる集団を怪しいと言い放った。おかやんは少しきまずい思いをしながら怪しげな集団を見ていた。 その怪しげな集団の中の1人は抜群にバスケが上手だった。後にわかることだが、その男は「こぶさん」だった。しかし当時、おかやんは心の中で「タイラ」と呼んでいた。顔が当時オリックスでピッチャーだった鈴木平に似ていたからだ。 そしてもう1人。明らかに体力を使おうとはせずに、淡々と仕事をこなす焼鳥屋のおっさんのような男がいた。おかやんは心の中で、その男を「職人」と呼んでいた。職人とは、これも後にわかることだが、「師匠」のことである。おかやんはナイスバディに入った直後に「師匠」というあだ名を聞き、「職人」との妙な共通点に笑いをこらえることができなかった。 |
| 体育の授業に出現する怪しげな集団とおかやんとの付かず離れずの微妙な知り合い関係は3年と少し続いた。不思議の国の住人たちは、おかやんの目にいつも怪しげにうつった。そしてこのときから、不思議の国の住人たちは、素人同然だったおかやんのバスケの進歩の過程を見ることになったのだった。 |