第2章 理由

公園デビュー

 いつか5対5のバスケをちゃんとやってみたい。高校では昼休みにバスケ部にまぎれて体育館で3対3をして遊ぶだけだった。大学入学後、おかやんはその願いを叶えるべくあるサークルの門を叩いた。ただのサークルだったからもちろん、入るのに何の制約もなく、週に一度だけの練習には物足りなさを感じたが、毎週練習に通っていた。

 しかしおかやんは言うまでもなくずぶの素人だったから、5人対5人など何をどうしていいのかわからなかった。ずぶの素人への周りの反応は冷たかった。でもおかやんにはある確信があった。

 こいつらだって、そんなに上手くねぇ・・・。

 高校時代、おかやんが毎日見ていたバスケ部員たち。県内でもそこそこ強い学校だったから、国体選手も何人かいた。毎日のように彼らとバスケで遊んでいた。彼らのプレーは、目の前でえらそうにプレーしている奴等とは、まったく比べ物にならないものだった。

 一年だ・・・。全員ごぼう抜きにしてやる。

 そこからおかやんの小さな戦いが始まった。日本のバスケ事情は悪い。その競技人口の多さにも関わらずテレビをはじめ、マスメディアでの取り上げられ方は少ない。またチームに所属していなければ、リングに向かってシュートすることはまずできない。

 おかやんは広い駐車場でドリブルをしてみた。阪神・淡路大震災の後だったから、地面は多くの部分で凸凹が激しかった。ボールは明後日の方向に飛んでいった。でもおかやんは思った。高校時代のあいつらならボールは手から離れなかったろう。

 地面にあるマンホールは、そいつらの影だった。マンホールにフェイントをかけた。当然マンホールは動かない。でもおかやんは思った。あいつらだって動かないだろう。

 シュートを打ちたかった。その気持ちのまま、シュートを打ってみた。広い駐車場だったから、ボールを追いかけるのに一苦労だった。駐車場の端の方には、駐車場をまたぐように歩道橋がかかっていた。こんなとこでバスケやっとるわ。冷やかしの声が毎日のように聞こえた。

 数ヵ月して、友人から電話があった。リングのある公園を見つけたのだが行ってみないかということだった。願っても無いことだった。家からはかなり遠かったけれども、夜な夜なシューティングに出かけた。地面は土だったからシュートを打つたびに、砂が目に入った。でも楽しかった。周りには明るい建物など何も無いから、星がよく見える公園だった。

 これで環境は整ったな・・・。

 それからまた数ヵ月後、おかやんにある転機が訪れた。

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