第2章 理由

バスケットボールが好きです

 退院からの1年と半年の間。おかやんはひたすら耐えねばならなかった。すぐに筋力の限界に達し動かなくなる膝と、バランスを崩して上手くいかなくなったバスケ。こんな奴、膝さえまともなら絶対負けねぇ。いつもそう思っていた。辛酸を嘗め続けた。それでも退院から1年もたった頃にはずいぶん膝の調子も良くなってきて、サークルにもぽつりぽつりと話ができる人間が出来始めた。

 結局、バスケのサークルはバスケが上手くできないと仲間にはなれないってことかなと、嬉しい反面寂しかった。 おかやんの頭の中にはいつも高校時代の昼休みが浮かんでいた。おかやんの知っているバスケは、決してそんなものではなかった。あの頃は、無心で楽しかった。自分よりも圧倒的にうまい奴等に遊ばれたけれども、必死でくらいつくだけでも楽しかった。

 しばらく経っておかやんはそのサークルに行かなくなり、そのサークルは、その後数ヵ月ほどで自然消滅した。

 話は前後する。おかやんが退院した年の12月、サークルがなくなる8ヶ月ほど前のことである。おかやんの一家は引越しし、幸いにもリングのある公園が家からとても近くなった。夜中まで遊んだ日もバイトの日も毎日通った。ずいぶん調子がよくなってきた頃、サークルがなくなった。リベンジの機会を失ったのが残念だった。

 またバスケができるところを探さないといけないと思いながら過ごしていたその年の冬。おかやんの体は異常を訴えだした。毎日毎日強烈な疲れが体を襲った。公園でのバスケから帰ると立ってはいられなかった。風邪だろうと思って病院には行かずにいたが、おかやんの誕生日の朝、ベッドから起き上がると、そのまま床に倒れた。

「本当は入院した方がいいんですけどね〜。まぁ、無理はしないようにしっかり薬飲んで安静にしてください。」

 医者は入院をすすめたが、おかやんは強行に断った。入院はもうこりごりだった。数日間は家で安静にしていたが、元日の夜、新年バスケせなあかん!と思ったおかやんは、公園へ出かけてしまった。

 次の日の朝、ベッドから起き上がってリビングルームまで行ったところで倒れた。

「もうあきません。入院しなさい。」

「はい・・・そうします。」

 あっさり入院が決まった。

 今度の入院は長かった。足腰だけでなく体中が弱っていく様子が目に見えてわかった。日に日にあばら骨が浮き出てきて、頬はこけ落ちた。ほとんど寝たきりだったせいで太股や脹脛はみるみる細くなった。

 もうバスケはできないのかなぁ・・・。またバスケしたいなぁ・・・。毎日そればかり考えていた。今度バスケするときは、リベンジの為じゃなく、昔のようにとことん楽しんでみたいな。あの頃に戻りたいな。

 鏡に映る変わりゆく自分の姿が、数年前の記憶をより鮮やかに蘇らせていた。

 2ヶ月が過ぎて退院の日取りが決まった頃、てっぺいからおかやんに電話があった。バスケの誘いだった。バスケの日は、ちょうど退院の次の日だった。 

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