2004年8月号

ひとことで「見る」と言ってもsee, watch, look at 〜のちがいは?
〜〜単語の1対1対応の難しさと表現のスキルアップ〜〜
 英語の単語が、日本語と必ずしも1対1対応していないことを前回goとcomeについて書いたが、今回は、同じ「見る」でも英語の単語には幾つかあることを紹介して、単語の持つ表現の豊かさについてお話ししよう。
 英語で「見る」といえばすぐに思い出されるのがsee,さらにwatch, look at 〜がある。いずれも中1で習う単語であるから、比較的なじみのある単語ということになるが、これをどうやって区別して使うのか、となるとやはりむずかしい。
 まず、seeについてであるが、一言で言えば「視覚」といえばいいかもしれない。We can see the many stars in the night. (夜にはたくさんの星が見える。) などでわかるように、「(視覚として)見る、目に入る」という意味がある。また、You had better see the doctor. (お医者さんに診てもらったほうがいいよ。) などと言ったり、I'm not seeing her any more. (もう彼女と付き合っていません。) などと「人に会う」という意味にもなったりします。もちろん、「会う」という行為の中には「視覚的に見る」ことが伴いますから、表現として「見る、見かける」というほうにも向かっていきます。さらに、I see what you mean. (あなたの言いたいことは分かります。) となると、目の前にある具体的なものを見るだけでなく、抽象的なものを頭でとらえること、つまり、「見てとる、わかる」ともなるのです。なかなか、あなどれない単語ですね。
 次に、watchについて、代表的なものとしてwatch TVがあるように、「動いているものを見る」または「じっと注意してみる」という意味があります。駅の階段などで、Watch your step. (足もと注意) という表示を見たことはないだろうか。Watch your mouth. (口の聞き方に注意しろ。) といえばもっとよく分かる気がしますが、seeよりもwatchといったほうが「気をつけるという意識がはたらいて見る」という感じになります。また、注意を払うという意味で「見張る」という意味にも使われ、そこから発展して「〜を待ち構える」という意味にもなります。「さあ、いまから手品でも始めるよ。」という場面でNow watch carefully. (さあ、よおく見ててごらん。何が始まるかな?) という使い方もできるのです。
 ではlook at 〜はというと、一言でいえば「視線」です。そういう意味では「視線を投げかける」といった意味でとらえるといいかもしれません。lookの後についているatは「目標を表すat」でそれこそthrow a ball at 〜(〜にボールをなげる), smile at 〜(〜に微笑む)などのときと同じで視線をどこへ投げかけるかという目標を示します。つまり「(見ようと意識して)見る」という意味になります。そう言えば、先生が「さあ、こっちを向いて。」というときLook at me.と言って生徒たちの視線を自分のほうへ集めようとするでしょ。だから、方向を表す言葉とよく一緒に使います。look upといえば文字通り「上を見る、顔を上げる、尊敬する」だし、look downといえば「下を見る、視線を落とす、軽蔑する」になり、look backは「振り返る」, look forward to〜で「〜を期待して待つ」---forwardは前方の意味で、未来を期待して前方を見ることから---と視線+方向になっています。
 こうして、「見る」といっても基本的には3つあり、(実際はまだあるのですが)、一言では片付けられないということが分かると思います。時間があれば、単語はやはり使う場面や文の中でどういった役割あるいは意味なのかを気をつけて覚えることを勧めます。see=「見る」ではない部分も知ると勉強に幅ができて、知的好奇心がますます広がっていくことでしょう。(04年8月10日発行 塾内通信より)

2004年7月号

goとcomeは「行く」と「来る」に対応しているか
〜〜単語の1対1対応の難しさと表現のスキルアップ〜〜
 英語の単語を覚えるとき、たいていの人はその意味を「日本語に置きなおして」覚えることが多いだろう。appleは「りんご」、catは「ねこ」といったぐあいに1対1対応で意味を覚える方法だ。名詞の場合はこれでもいいけれど、動詞はなかなか難しい。それも中1で習うくらいの基本的な単語ほど実は奥が深かったりするので、なかなかやっかいである。 たとえば、go to school「学校へ行く」やcome here「ここに来る」という表現を習うとgoが「行く」でcomeが「来る」と覚える。『日本語の「行く」=英語のgo』みたいな公式が出来上がるわけである。これが悪いわけではないが、これが100%ではないということを知っておくべきである。
 「今行くよ。」という表現に、I'm coming.またはI'll come.があります。これは、誰かに呼ばれて「はーい。」という返事をするつもりで言う場面で使います。決してgoを使いません。また、「家に帰る」という表現もI must go home now.「もう家に帰らなきゃ。」やMy father will come home tonight.「父は今夜帰宅します。」とgo, comeの両方とも使ったりすると、「なぜ?」という疑問が出てきます。また、現在完了の文の経験用法で「〜へ行ったことがある」はhave been to 〜とbe動詞の過去分詞を使ったりすると、『日本語の「行く」=英語のgo』が必ずしも使えないことに気が付きます。
 実は、このgo, comeという動詞は移動(必ずしも空間的な移動だけではありませんが)を表す言葉で矢印のようなものだと思ってください。数学的に言うとベクトルです。簡単にいえば、話題の中心(話者になることが多い)に向かう方向のベクトルがあるものをcomeで表し、話題の中心から別の場所へ向かう方向のベクトルのあるものをgoで表します。一般に話者(I)が「どこかへ行く」場合はgo,話者の方へ「やって来る」場合はcomeを使っています。ですから、「私が家に帰る」表現は家ではない所にいて「帰る」のですから、家とは別の場所にいるわけです。当然「今いる所から別の場所へ行く」ことが「帰る」ことになりますね。だからgoを使います。ところが、父親が帰る場合、私は家にいてその帰りを待っている状況にあります。ですから、父親が家に帰ることは「自分のいる家に帰ってくる」ということになり、comeになるわけです。
 では、「今行くよ。」と返事しているときのI'm coming.やI'll come.はgoのはずではないか?ということになりそうですが、この場合の中心は『呼んでいる人』です。先に、母親か友だちが「○○さん」とあなたのことを呼んでいるのです。ですから、その『呼んでいる人』が中心と考えるのです。それで、「呼んでいる人のところに行く」つまり「呼んでいる人のほうから見れば、やって来る」ことになるので、comeを使うのです。
 また、goというベクトルは一方向のみを表しています。よく言うのが「行ったら行きっぱなし」なのですが、とにかく、「行って帰ってくる」という内容は表しません。ところが、「アメリカに行ったことがある」という場合、アメリカに行っている最中には言いませんね。アメリカから帰国して友達に言いますよね。その時はアメリカ行きのベクトルと帰国のベクトルの2方向があります。これがgoを使えない理由です。英語の表現I have been to America.は「アメリカという土地に足を置いた(アメリカに居た)」ということを表しています。「そこに存在する」ことを表すbe動詞を使います。もしも、He has gone to America.といえば、「彼はアメリカへ行ったきり帰って来ない。」という意味になります。また、この意味からも分かるようにgoneは「どこかへ行ってしまう」つまり「消える、なくなる、死ぬ」という意味にもなります。 英語と日本語が1対1対応でないほんの1例ですが、とにかく、英語を覚えるときには必ず使う形、場面と表現で対応させて覚えるようにしましょう。(04年7月12日発行 塾内通信より)

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