03:いろいろな愛し方

彼の想っている彼女には恋人がいました。
彼女はふとした偶然から彼の、彼女に対する想いを知ってしまい
また、彼も彼女が知ってしまったことに気付いてしまったのでした。

けれど彼は彼女のことを心から大切に思っていたので、
彼女の恋人から彼女を奪うようなことはできませんでした。

彼は何もないようにふるまいました。
彼女はそれを気遣い、目をふせがちになりました。

彼は、彼に触れるのをためらう彼女の指先から
彼女に気付かれないようにそっと、そっと優しさをもらっていました。

彼にとってはそれだけで充分だったのです。
それが、恋人のいる彼女に対する、彼にとっての愛し方だったのです。

2003.5.3.



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