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06:人魚−続・宝石箱−
人魚はキラキラと光る影に気付きました。
それは沈んできた美しい宝石箱が太陽の光を反射している光でした。
用心深く人魚はそれに近づき、そっと受け取りました。
海の世界ではたくさんの不思議なものや、美しいものがありますが
その宝石箱は美しさの中に悲しみがこもっているようで
今までで見た中で一番美しいもののように、人魚には感じられました。
何日も何日も、人魚は宝石箱を眺めて暮らしました。
その宝石箱から生まれる悲しみが、何か具体的にはわからなくても
伝わる悲しさから人魚の目にも涙が浮かんでくるのでした。
ある日、人魚はその宝石箱を開けました。
中には一粒の宝石と見まごうばかりの涙が入っていました。
人魚がそれを手に取ろうとすると
涙は人魚の手を逃れるように海の上へ、やがて空の上へと上がって行きました。
人魚はその涙を空の上にいた彼が受け取るのを見ました。
彼は人魚に向かって微笑みました。
その微笑みから全てを察した人魚は今度は嬉しい涙を流してこう思いました。
あぁ、その絶望ですら受け入れてくれる彼が、きっと彼女が来るまで待っていてくれるわ。
2003.5.6.
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