29:むねのおく

わかりやすく、愛してね
と彼女はうつむいたまま半分泣いて言いました。
彼は彼なりのやりかたで、全身で彼女を想っていたので
彼女の言葉は彼にとっては少し意外なものでした。

彼は彼女の小さくて細くて壊れそうな体を思い切りだきしめました。
彼女は急な出来事に驚いて、けほ、と小さくせきこみました。

彼は、愛ってなんだろう、と考えながら
これからのことを考えて胸の奥が苦しくなるのを感じました。

未来は絶望ばかりではないけれど、希望ばかりでもない。


2003.8.21.



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