31:うつりゆく

夢を見る彼女をそばで見ていると
その夢を壊すようなことが言えない彼だったのです。
気持ちがほんの少しずつ、でも確実に減っていることに気が付いていながらも
まだ彼女に対する気持ちが残っていることを信じて、いえ、願って
彼女のそばにいる自分を正当化しようとしていたのです。
自分はずるいかもしれないことを考えながらも、
他のひとにはそれを否定してもらいたかったのです。
けれど彼のことを傷つけるのをこわがって、誰もずるいと責めることはしませんでした。
そして彼は余計に自分をせめるのでした。
それでもやっぱり彼女に真実を告げる勇気はなく、彼女のぶんまで自分が傷つけばいいのに
と思いながらただ、日常を送るのでした。


そして彼女は、彼が何か言えないことをかかえている気がして
それを言わない彼に少し腹が立つ一方、決定的なことを言われるのも怖くて
彼と同じようにただ、日常を送っていたのです。

もう一度最初に戻れたらどんなにいいかと、2人ともどれだけ願ったことでしょう。




2003.9.17.



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