劇団青年座公演  「ブンナよ木からおりてこい」 観劇レポート


日時:2000年8月11日(金) 午後6:30〜
場所:紀伊国屋サザンシアター (11列 14番)
キャスト
 ブンナ:大家 仁志
  百舌:矢崎 文也
    :佐藤 祐四
    :岩崎 ひろし
  牛蛙:永幡 洋

 ブンナの母:小山田 詩乃
    ふくろう:嶋崎 伸夫
    つぐみ:小柳 洋子

                            他


授業で劇を見に行かねばならず、ある日 私は紀伊国屋ホールにいました。
そこには所狭しと劇のチラシが置いてあり、その中の1枚に私の目は釘付けになったのでありました。
―――「ブンナよ木からおりてこい」。

これは、水上勉 著、新潮文庫より出ている、同名の本を舞台化したものです。
この本は、私の生涯の1冊ともいえるくらい大好きな本です。
そして、だいぶ前ですが 同じこの劇をたまたまTVで放送していて、それも見ていました。
(NHK・「劇場への招待」)
いつかは生で見たいとずっと思っていたこの劇を、ようやく見ることができました。


    〈ストーリー〉

 トノサマガエルのブンナは、跳躍と木登りが得意で、大の冒険好き。
 高い椎の木のてっぺんに登ったばかりに、恐ろしい事件に会い、世の中の不思議を知った。
 その木のてっぺんは、天敵・鳶の、餌の中継場所だったのである。
 ブンナは慌ててそこにつもっていた土に潜り込み、頭の上で繰り広げられるドラマの一部始終を見届ける…。
 
 生きてあるとは、かくも尊いものなのか――。
 作者水上勉が、全ての母親と子供たちに心をこめて贈る、感動の名作。


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【さて、実際の舞台。私はかなりいい席で見ることができました。
  以下、できるだけ舞台が想像できるような感じで書いてみます…。長くなってますがごめんなさい(汗)。】

●舞台の上には小さなジャングルジム。これが、池の上の丘や 木の低い枝などの役割を果たします。
 蛙たちはゆったりとした服。足首の方がふわっとふくらんでいて、しゃがむと蛙のシルエットになります。
 ブンナはトノサマガエルなので、緑色の服です。王冠のように頭にターバンを巻き付けています。
 
●舞台はたいてい和太鼓の音に合わせて進行していきます。
 よくある夏祭りや、ちんどん屋などの雰囲気を想像してもらえれば…そんな感じです。
 
●ブンナが勢いよく客席の後ろから飛び出してきます!
 勝ち気そうな表情で、他の蛙たちに
「いつかこの椎の木のてっぺんに登ってみせるよ」
 と言って聞かせます。

●いよいよブンナの決行の日。
 椎の木はてっぺんが雷か何かで折れてしまったようで、平らで少し窪みがあり、そこには土がつもっています。
 舞台には、いくつか段差のある 一見切り株のような形のセットが用意されています。それがてっぺんです。
 ブンナは穴を掘って下に潜るので、私たちの方からはそのブンナが見えるようになっています。
 和太鼓の騒がしい音の中、アスレチックによくあるような大きな縄ばしごが役者の手で広げられ、
 ブンナはその上を必死で歩いて渡っていき、最後にそのてっぺんの上に降り立ちます。
 ブンナが木を登り切ったのです。

●大きく息を弾ませているブンナ。
 彼がそこで出会うのは以下の動物たちです。
   ・雀 ・百舌 ・鼠 ・蛇 ・牛蛙 ・つぐみ ・ふくろう
 ブンナは土に潜って休んでいましたが、そこに 鳶が餌を保存しに来たので、出るに出られなくなってしまいます。
 ここから物語は始まります。

●見せ場は蛇と鼠が絡むシーンでしょう。蛇は鼠にとっても敵です。しかし傷ついた両者はさまざまなことを語り合います。
 注目は蛇の衣装と演技。蛇の衣装は、美しい布を長く長くうしろに引きずっています。体です。
 蛇役の役者さんは、いとも簡単にその長い布を高く翻したり くるくると体に巻き付けたりします。そして…
 何といってもも面白いのが、蛇はオカマキャラだということです(笑)。美川憲一風です(笑)。
 しかしそれは、蛇が本性を現したときの恐ろしさを引き立てました。急にドスの利いた声で蛙を一括し、動きを止めるのです。(><)

●舞台のセットで目を見張るのは、鳶の「足」です。
 鳶が木のてっぺんに餌を置きに、あるいは誰かを連れに舞い降りるとき、
 耳にいたい音響と共に 上から大きな鳶の足が下がってきます。これは大がかりな機械のセットです。
 私がTVで見たときは、鉄でできた足の骨組みのみでしたが、
 今回の劇では何と特撮か何かのようにきちんと肉付けがしてあって…そう、まるでゴジラのフィギュアのような肌でした(汗)。
 これにはかなり驚き!自分は見たことがあって知っているつもりでしたから、余計にビビりました…。

●ここで繰り広げられるドラマというのは…簡単に言えば、生々しい「生」です。
 死を目前にした傷ついた動物たちが、敵同士いろいろと思い出話を始めたり、親の自慢をし合ったり、
 死ぬのは怖くない、覚悟はできているということを言ってみせたあとで しかし鳶に相手を売ったり…必死で生きようとします。
 特に原作は仏教色の濃いものになっていますが、
 生きとし生けるもの皆いつか必ず死ぬ―――それは定めだ。だからこそ生きるのは尊い。
 ものすごく悲しいとき、人は自分だけが悲しんでいると思ってしまいがち。でも皆それぞれ悲しみを背負って生きている。
 …いろんなメッセージが読みとれます。

●私のお気に入りのシーンのひとつに、雀のセリフがあります。
 土の中にブンナがいると知っていて、雀は自分が死にたくないばかりにブンナを百舌に売ります。
 百舌が鳶に連れ去られてしまったあと、雀は土の下のブンナに言います。
「弱いってことは、わるいことではないよね。かなしいことだけど…わるいことではないよね」
 ブンナは黙ったままでした。

●いろいろな動物が連れてこられ、そして連れて行かれたあと、最後まで残っていたのは鼠でした。
 彼は結局木の上で死にます。鼠はブンナに言いました。
「みんな死ぬときはいっしょ。土になりにゆくんだよ。その土になる途中で…かえるくん、おれのからだから、虫が出てくるはずだ。
 その虫は、やがて羽がはえて、空へとび立ってゆくだろう。かえるくん、きみは、それをくって、元気なからだになりたまえ。
 そうして、おれの代りにこの木をおりるんだ。おれからでた虫をくったきみが、元気になって、この木をおりてくれたらうれしい。
 そうしておれの仲間にも、おふくろにもあってくれたら、おれがおりたこととちっともかわらないじゃないか。
 かえるくん、きみは、ぼくになるんだから」
「おまえさんが、おれのおふくろや兄弟にあってくれる。おれがゆくのと同じことなんだ!
 かえるくん、生きてるものは、みんなたべあってなんやかやに生まれかわってつながっているんだよ。わかるか、
 みんなだれかの生まれかわりなんだ。それでいいんだ。それでいいんだ。
 かえるくん、遠慮せずに、おれをたらふくくいたまえ。そして、ここをおりて、おれのかわりに仲間にあってくれ…」
                                                 (新潮文庫より抜粋)
 
●鼠の体から、無数の羽虫が生まれました。
 舞台には、両脇から小さなたくさんのシャボン玉が次から次へととんできて、ブンナを包み込みます。羽虫です。
 ブンナは力いっぱい「鼠さーん!鼠さーん!!」と叫び、泣きながら、
 手のひらをめいっぱい広げて、腕を思い切り伸ばして、虫をつかんでは食べ、つかんでは食べ…。夢中でほおばります。
 明るい照明に照らされて、無数のシャボン玉がきらきら虹色に輝きます!私のいちばん好きなシーンです。

●春。ブンナはゆっくり木をおりて、仲間の元へと帰ります。そして、池では鼠が言ったことをそのまま他の蛙たちに話して聞かせます。
 そしてラストシーン。ブンナは池を覗き込むようにしている。(ちょっとうろ覚え)
蛙1:池には、たくさんの…
蛙全員:(やさしく)オタマジャクシ!
蛙2:春に生まれた、蛙のあかちゃんだ。
蛙3:ブンナの、兄弟たちだ。
蛙4:ブンナ、うれしくなる!
蛙5:叫び出したくなる!
蛙1:5月の太陽に向かって…、
蛙2:大きく、鳴く!
ブンナ:…もう…春なんだ!!
蛙全員:ブンナ!!
               →エンディングの歌「ブンナ、大地へもどる」を歌って踊って…決めポーズ! で終演。


●とにかく感動します。純粋な必死さがいいです。あたたかいです。かなしいです。やさしいです。
 もう一度本が読みたくなりました。(^^)
 興味のある方は文庫を読んでみてください♪長々読んでくださった方々ありがとう(笑)。
 この舞台は永遠に再演され続けるだろうと思います。






  
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