No.8  「2年前の話。」 (2001/03/25)

年度末には毎年色々と考えるが、その中でも一昨年は忘れられない。
俺は役者を本気で辞めようと思った。

その1年前に俺はある人と約束をした。
「来年の3月31日までに(役者の)芽が出なかったら辞めなさい。」

その方は新聞に連載したり、講演をしたりもしていて、
銀座の社長たちが、毎日のように相談しにくる銀座の大物。
以前バイトしていた店が入っているビルのオーナーでもあったので、
ほとんど毎日朝一番に来て、ネルドリップで落としたてのコーヒーを飲みにきていた。
いつもは日常会話をする程度だったが、たまたまカウンターに座り俺の話になった。
「お前にはハートが足りない。」「お前は1人で生きてるんじゃないんだ。」
そして俺は約束した。

最初はあまり気にならなかったが、期日が近づいてくるととても大きく圧し掛かってきた。
出演した自主制作の映画が賞を取ったり、ビデオの仕事してはいたけど、
自分では芽が出たと思えなかったし、とうてい言えなかった。

「・・・辞めるか・・・。」

本当につらかった。今だから話せるけど、正直泣いた。
「芝居を辞めたら俺に何が残るんだろう?」
「何のために生きてるんだろう?」
今までになく、本当に深く考えた・・・。

「芝居抜きの生活、自分は存在しない。今辞めたら後悔する。」
これが俺の出した答えだった。
初めて出した俺の完全な結論。

俺は社長に決死の思いで気持ちを話した。
社長は「頑張れ。」と軽く言った。

約束をしていなかったら、ダラダラと毎日を過ごしていただろう。
ここまで自分を追い詰めて考える事はなかっただろう。
社長はきっと、これらの事全てお見通しだったんだと思う。

最近、お会いしていないが元気なんだろうか?
いや、絶対に元気でやっているでしょうあの人は・・・普通の人間じゃないからね。(笑)

この事がなかったら今の俺はありえません。
今でも俺の尊敬する人です。