今日はクラブAに寄った。実は雑居ビルの最上階の一番奥にあるスナックで、お店の名前にもなっているAママがいつも自分の店のことをそう呼んでいる。
ビジネス街が近くにあることもあって、この店のお客のほとんどが仕事帰りのサラリーマンである。僕が店に入ったときは4、5人のサラリーマンのグループがボックス席で談笑していた。僕は、カウンターの入り口に一番近いところに一人座った。
ボックス席にお客がいるときは女の子がカウンターから出て接客をする。団体の話し声の合間に時折、みかの声が聞こえ、客の笑いを誘っている。振り向いたとき、みかと目が合い、彼女はかすかな笑みの表情を僕に投げた。
グループの会話が、時折僕の耳に入った。その中の一人がしきりに、みかやAママを誉めるような言葉を口にした。その度にカウンターの中で立っているママが身をよじらせながら答えた。45年間独身を貫き通してきたAママも若いなと感じながら、少し嫌な感じもした。
『takasan、あそこのお客さん、』とAママが小声でカウンター越しに話しかけた。そしてメモとサインペンを取り出して文字を書いた。メモには僕が勤める会社のライバル会社の名前が書き込まれた。
ライバル会社と言ったって、あちらの方がずっと上。うちはずっとその下。会社名を知っただけで話しの内容が違って聞こえてくるから不思議。
『ママお勘定!』グループの中で一番年配の一人がそう言いながら席を立った。(えっ!まだ9時半やん。グループで来ているのにこんなに早く切り上げるの?!) うちの飲み会のときと全然違うので驚いた。
『たけちゃん。ありがとう。ごちそうになりました。』ママがそう言いながら、料金を書いた紙を男に手渡した。財布からお金を取り出しているたけちゃんに、ママは続けて、『領収書切っとこか?』
『いいや、ママ。今日はプライベートの飲み会だから』とたけちゃん。
(うーん。参った! 違いすぎる。たけちゃんかっこよすぎるやん!!)
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