今日はジェシー の28回目の誕生日。逢う約束は先々週、店の中で交わしていた。彼女と店以外で会うようになって既に10ヶ月が過ぎている。最初の頃の彼女は見た目の可愛さとは違い、内面の芯の強さが印象的であった。店では見せることのない情熱的な一面が僕を戸惑わせることもしばしばあった。彼女のそんな気持ちに対して自分ができる範囲で応えてきた。
(誕生日プレゼントは何がいいだろう。)そう考えながら店での彼女の姿を思い浮べた。毎週金曜日は胸元や肩を露わにするような服装をすることがあった。『あっそうや。ブラのストラップにしよう。』これならそんなに高くないし、彼女の好みを大きくはずすこともないだろう。
デパートの下着売場で他のお客さんの目を気にしながら、3種類を選んだ。プレゼントを3つ贈るというのはフィリピンスタイルである。3つはI(1) LOVE(2) YOU(3)の意味があるらしい。これも彼女に教わった。これを聞いたとき、『だったらI Hate Youでも3つで一緒やん。』と冗談を言ったことを思い出した。
彼女と会って、スパークリングワインを乾杯して、誕生日を祝った。彼女はグラス1杯飲んだだけでコーラを頼んだ。いつも食事するときはコーラを飲んでいる。残ったワインのほとんど1本を僕が飲んだ。
食事をしながら、お互いの家のことが話題になった。彼女は僕の家に遊びに行きたいとたびたび口にしている。そのたびに僕は『そんなん無理に決まっとるやん。』と答えている。話題をかえるために、彼女の家のことを初めて聞いた。
『ジェシーの家はマンションの何階?』
『何でそんなん聞くの?』
『だって、この前電話で話したとき、ジェシーが家のマンションのエレベータの前に着いたからって電話を切ったやん。』
『私の家はマンションの8階。』
『僕は4階やけど、8階やったらベランダから下見ると怖いんちゃうん?』
『うん。時々ジャンプしたくなるときがあるの。でもジャンプした後、私汚いでしょう?だからやめるの。死ぬんだったらきれいに死にたいから。』
話題が思わぬ方向に行ったので、他の話題を探したが思いつかなかった。焦りながら僕は時計を見た。時計の針は10時40分を過ぎていた。
二人だけの時間は終りに近づいていた。いつも午後11時には彼女を家まで送る電車に乗せている。今日も地下鉄の改札で彼女を見送ったあと、僕はJRの駅に急いだ。
僕は、彼女が別れ際に今日はどっかで泊りたいと儚いわがままを口にしたのを思い出していた。
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