(このまままっすぐ家に帰りたくないなぁ)そう思いながらどこに行くか考えていた。
今日は木曜だから、クラブAは老人ホームだし、他に行くとこないから、スナックSに行くか。(先週よしみから電話もらったけど行けなかったしなぁ)
今日は昼ゴハンを抜いたので、僕はかなりの空腹を感じていた。スナックSのあるB駅で途中下車をして、駅前の中華料理屋で焼きそばを注文した。
焼きそばが運ばれてくるのを待つ間、ジェシーに"SAYONARA!"の文字を送った。
空腹を満たした後、スナックSに向かった。(よしみだったら、店に来て間もないから、少しは期待できるかもな)
というのは、スナックSは常連だけで成り立っている店で、僕のようによそ者に対してお店もお客も冷たい。彼女なら、僕が感じていることを共有してくれると思ったのである。
店に入ってカウンターの上を見ると、前の時と同じように白い箱がおかれている。(ゲッ!また?!)
『今日も誰かの誕生日?』僕の前でブランデーの水割りを作ってくれているよしみ に対してきいた。
『うん。私の誕生日。実は明日なんやけど、』という言葉を、ママが横から継いだ。
『takasan、明日はうちに毎日のように来ていたお客さんの49日の法要をこの店でするねん。おめでたいことと重なってはだめでしょ。だからお客さんにはよしみちゃんのお誕生会は木曜日にするって伝えてあったの。』
(何や。この店は)
『takasan、これなんて読むのん?』と聞きながら、ママはよしみの腕を取って、彼女がつけている腕時計の文字盤を僕に向けた。
文字は小さくて読みづらかったが、何とか読めた。『ギラロッシュやん。』
その後の話の筋から僕の隣の男が今日よしみに渡したプレゼントであることがわかった。
僕は、ここに来ている常連の客の顔を一人ずつ見渡した。(何でこの店に来てるんやろ?)自分が渡したプレゼントを他のお客に見せつけられたり、評価されたりするのって、間違いなく嫌である。そんな事僕がされたら、間違いなく怒鳴って椅子の一つも蹴り倒して帰ると思う。自分が住む世界と全く違う世界をこの店に見ていた。
やはり今日もハッピバースデイを歌って、客が分担したケーキをいただいて、よしみの25回目の誕生日を祝った。今日はクラッカーはなかった。
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