クラブAを出てすごくいい気分になっていた。こんな時は全てが思い通りになるような気になる。このまま家に帰ってしまうのはもったいないような気がしていた。
拾ったタクシーの中でMに電話をした。長い呼出し音の後、ゆきさんの声が聞えた。
『今から行ってええ?』時刻は11時をまわっていた。
『うん。ええけど、結構今日はお客さん残っていて、誰も席につかれへんかも知れへんで。』
『うん。かまへん。そんなら行くわな。あっそれから、ジェシーはもうええで。彼女とは別れたから。』
『うっそーっ! その話、後で聞かせてな。』
タクシーはMの前に着いた。店にはいると電話での話の通り、最終電車の時間が近づいているにも関わらず、客で溢れていた。
にもかかわらず、いつもの席は空いていて、僕のボトルが置かれてあった。まもなくゆきさんが僕の席にやってきてくれた。さっきの電話のお願いに応えてくれたのだ。他のお客さんがいるときに、ゆきさんが僕の席についてくれることはまずない。他の女の子が言っていたことだが、『ゆきさんはうるさいお客さんが専門で、takasanのようにおとなしいお客さんに彼女がつくことはないだろうって。』
彼女にジェシーと別れた理由として無難なところを話した。自分自身でさえ、その理由についての考えや気持ちがまとまっていなかった。
閉店の1時までにゆきさんの他、ジェシーを除く全ての女の子が入れ替り立ち替り、やってきて会話を楽しんだ。最後にレニーさんがやってきて、意味ありげな言葉を僕に投げかけた。
『takasan、ジェシーとはどういう関係?』レニーさん はしきりにジェシーとの仲について聞いてきた。
『えっ。どうして?彼女とは何もないよ。もう、別れた。』
『そう。それならいい。本当に深い関係とか無かったんやね?』
『そんなん無いよ。それにもう別れたんやし。』
『でも、どうしてそんなこと聞くの?』
『それについてはママの口から聞いて。私はtakasanの味方やからね。私にとってtakasanは大事な人やから守るからね。』彼女が言っている事がさっぱりわからない表情をしながらも嫌な胸騒ぎのようなものを覚えた。
『でも、レニーさんとジェシーは友達でしょ?それよりも僕が大事だというの?』
『確かに友達だけど、takasanはお店の大事なお客さん。それにtakasanとはずっと長いつきあいで兄妹のように感じているもん。』レニーさんとは知り合ってから5年の月日が流れていた。
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