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鴨川の 鳩らの遊ぶ 岸辺にて 翳る夕べと 赤い鞠一つ
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紫の 籠もれる光 葉の上に 微かに震え 雨を待ち居る
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立ち柳 流れる風に 擦(かす)むるは 蓮華王院 涼しき頬に
迷い子は 暮るる夜 風と立ち戻り 門(かど)を叩きて さざめいており
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下鴨の 木々の狭間より 漏れ落つる かそけき光 夏風になる
寒空に 掛け掲げたる 銀盤の 磨くは誰ぞ 幾億もの眼
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二人して 歩ける道の 銀杏青し 取りて扇がん 風ぞ涼しき
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雨霧を 払いて立てる 百日紅よ 波打てる汝(なれ)は 滝の化石か
重からん 雫の雨の 翼にて 地を払うごと 飛べる小雀
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つらつらと 君の肌(はだえ)の 吸い込まる プールに入りて 水掻ける我
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桜葉の 重(かさ)む狭間の 水鏡 仰ぎ見降ろす 誰にぞあらん
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ひとかけの 摘(つま)まる氷 吸い込まる 君の唇 微かに赤し
傍らに 眠る君の肌氷の如く 柔らげり
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早々と 梅雨の噂を 聞きつけし 紫陽花咲くも 萎れおりしは
空中(そらなか)の 真中を高く 突き抜けし 飛行機雲の はや散じゆく
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寺中の 真中に一人 傘持ちて 幼子ぽつり 落つる雨打つ
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唐突に 北の方(かた)より 訪れし 朝に戸惑い 月取り残さるる
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ひたすらに 黒き肌(はだえ)を 削ぎ落とす 桜は春と 誰が言いしや
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葉月なる 夜の岸辺の 散歩道 蝉穴前に 蟋蟀の鳴く
蝉の音と 夏日を浴びし 桜葉は 蜜柑の如く されど軽く落つ
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オレンジの 街灯つくる 夕窓に 雨の音なく 留(と)まり流るる
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夜雨降る 後の葉先の 露落ちて 砕け零(こぼ)れし 蟋蟀の歌
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りんりんと 冷えし朝風 運ぶ声 葉陰を持つも なお隠されず
ゆるるかに 蟋蟀の満つ 夜の間(ま)に 彗星のごと 鹿の鳴くなり
鳴りもせぬ 音へと耳を懲らせ 今 カタリと剥ぐる また一つ剥ぐ
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捧げ持つ 半月なりし 手水鉢 零れ落つ風の 頬に涼しき
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咳(しわぶ)きし 五匹の杉の 茶枯れるに 散らずなりにき 赤き桜葉
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冬枯れの 木々の狭間に 人もなく ほつほつほつと 降り来るは何(な)ぞ
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薄赤く 乾き砕けし 冬土に 山茶花の咲く 散りて笑ひつ
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雨降りし 後の小道に 甘き香の 満ちて惑へり 寝息せし夜に
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明け初むる 息にたゆたう 雲一つ 綿の如くに 微睡みいたる
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黒雲を 手繰り解(ほど)きし 薄絹を さやけく染めつ 月の機織る
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清瀧の 白きは混じり 群青の 川面を巡る 春の疾(は)や風
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