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【2月X日】
朝、おしっこをしようと犬小屋を出たら、
庭一面に真っ白いおばけが、横たわっていた。
僕は驚いて、一瞬ちびりそうになったけど、
気を取り直してガウガウと吠えてやった。
白くのっぺりしたおばけは、ぴくりともしない。
ただ無言で地面や屋根や僕のごはん皿の上に寝そべっている。
(ひょっとして、こいつら、もう死んでるのかな)
勇気を出しておばけを前足でつついてみた。
すると、おばけはキシッというかすかな声をあげて僕の前足を飲み込んだ。
肉球に食いつかれたような痛みが走る。
僕は、悲鳴をあげて犬小屋にとんで帰った。
(い、生きてやがる。死んだ振りして噛み付くなんて…!)
肉球が赤く、ジンジンする。
不安になって、お母さんを呼んでみたが、僕の声は
まだ閉められたままのシャッターに遮られている。
寂しさを紛らわすために、毛布の中に隠しておいたガムを噛んでみた。
でも、オシッコがしたい、どうしよう…。
ここにしちゃうのは、まずいよなぁ。
また白いおばけに噛まれるのも嫌だしなぁ…。
結局僕はおしっこを我慢したまま、眠りの世界へ逃避した。
それから、どれくらいたっただろう。
ガラガラという2階の窓の音で目が覚めた。
見上げると窓から顔を出したお姉ちゃんが、白い息を吐きながら
僕に向かってこう言った。
「おはよう、オージ!雪、積もったね!」
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