「褒めて育てる教育」の弊害

アメリカで暮らしていると大した事をした訳でもないのに、やたらに褒められてちょっと戸惑ってしまったという経験をすることが多々あります。
私は常々、学校や職場で「何も出来ないくせに自信に満ち溢れたアメリカ人」に「いったいその自信はどこから来るの?」と聞いてみたいと思っていました。
ところが、そう思っていたのは私だけではないようです。
先日USA Today誌に「褒めて育てることの弊害」という記事が載っていました。
以下《 》内はUSA Today誌からの引用
「健全な自尊心は『あなたは素晴らしい人だ』と周りから子供達に伝えることで培われる」という信念の元で「褒めて育てる」という教育方法は60年代からアメリカで盛んになったようです。
カリフォルニア州のアンドレア・ソベルさんは言います。
「褒めて育てる教育・・・ゾッとするわね」と。彼女自身も小さい頃は「よくやった」とか「素晴らしい絵ね」といった、子育てや教育の専門家達が熱心に勧めた、非常に誇張した表現をたくさん聞いてきました。
今16歳の双子の親となった彼女はは、「子供達だって何が本当で何がウソか分かるわ。ずいぶん小さい時だってね」と言います。
「野球に行ってお母さん達が『バッターボックスへの入り方が素晴らしい!』なんて言っているのを聞くと、バカみたいと思うわ。そんなことをしていると、子供達は無意味な褒め言葉を通してしか物を見なくなるのではないかしら?」と。
まったくその通り!
こういった、しばしば無意味な言葉で70年代、80年代に生まれた子供達は育ち、小さい頃から何かに参加するだけでカラフルなリボンやピカピカのトロフィーをもらえたため、彼らは自分が特別だと思っています。
が、まったく特別ではないということに大人になっても気づかないアメリカ人のなんと多いこと・・・・・・・・

自分に自信を持つ、つまり自尊心を持つということはもちろん悪いことではなく、健全な発育のためには必要なことです。
《自分は何も出来ないと思っている子供達が問題、つまり悪い成績、ドラッグ、犯罪などを起こしやすいと考えられています。恵まれない環境にいる子供達はその可能性がもっと高く、従って自尊心を持たせる教育は必要です。》
確かにそれはそうだと思うけれど
ヒューストンにおける1991年の教員研修では赤ペンを使うことの害悪が教えられ、他の色を使うよう言われました、と1982年から教員をしているパット・グリーンさんは言います。「彼らは、赤は間違った答えの象徴であり、否定的な強いインパクトがある、と言いました。》
はやりすぎでしょう。
でも、このエピソードとってもアメリカ的、真剣にこんなことを言っているアメリカ人の姿が簡単に想像できてしまいます。

しかし、中身の無い褒め言葉、つまり、何年か前に、自尊心という名の下に子供達に浴びせられた言葉は、悪い結果に終わってしまったようです。「そういう教育は、自尊心を育てるのではなく、自分の能力を間違って理解する方向に進んでしまう可能性があります」と、UCLAの発達心理学者、サンドラ・グラハムさんは言います。「自尊心」という言葉は、子育ての専門家や心理学者、教育者等に熱心に議論され、決まり文句のようになりました。彼らは、自分を尊敬できる人は幸せになり、成功する、と言うのです。この文化は親達の間に深く浸透し、子供達を失敗から守ることは信条となりました。この「自信を持って生きる」動きはカリフォルニアで最も積極的に進められ、自尊心をより多く持つための専門調査団まで作られました。この動きは西海岸に留まりませんでした。自尊心の育成は国民的関心事となり、教育者達はそれが学問的業績の向上につながると考えました。「しかし学校側は、それよりも感情について心配せざるを得なくなりました」と、チャールズ・サイクス氏は著書「子供達がバカになる−なぜアメリカの子供達は自分に自信を持っていながら読み書き足し算が出来ないのか」で述べています。「自尊心は公認の空論になってしまいました」とも。
やっとアメリカ人も気がついてきたようです。

いまや潮流は変わり、学校では標準テストの成績を上げるための基礎を教え、自尊心育成プログラムは、ウソの褒め言葉から、いいことをした人を認める形に変わりました。
アメリカのガールスカウトは、「出来るんだ」と思わせるように努める一方で、能力やスキルに重点を置くことで自尊心を高めようとしています、と発達心理学者のハリエット・モサッチェさんは言います。「以前は、『あなたは何をやっても素晴らしい』でしたが、そういった古く間違った自尊心の考え方は前向きではありません。非現実的であり、何の助けにもなりません」と言います。
でも、まだ今後20年くらいは間違った自尊心教育の「犠牲者」である横柄なアメリカ人が跋扈しそうですね。
お世辞を言うのが大嫌いな私としては、自信過剰アメリカ人と仕事をするのはホンとにストレスが溜まります。
ところで、日本でも「褒める教育」が良いとされて久しいですが、大丈夫なんでしょうか?