コンクール2
いつもと変わらない朝日…。
でも今日だけは厳かな…何かが始まると新しい何かが始まる予感がする朝。
新しい年のはじまり。
ついに今日ニューイヤーコンクールが始まる…。
今日も相変わらず白い雪が降っている。
みなが雪の中ニューイヤーコンクールがおこなわれるSNOWドームへと向っていた。
さくら達一年生クラスも全員そろってSNOWドームへ入る。
まださすがに緊張していないらしくみんなの顔には笑顔がある。
翔が受付をすませ全員を楽屋へと連れて行く…。
楽屋は一クラス30人が入るのにはちょっと狭かったがクラスに一つの個室が用意されただけで充分だろう。
楽屋に入るとみんな各自発声を始める…。
5分くらいすると翔が声をかけみんなで発声を始める。
しばらく経つとスタッフの人がやってきた。
発声できるのはここまで。このあとは客席で先輩方の発表を聞く。
「ではこれからメインホールに入るぞ。」
翔の後をクラス全員がぞろぞろついて行く。
この頃急にみんな無言になった。
そしてそれが重々しい空気へと変わっていく…。
でも、その空気はホールへ入るのと同時にすっとんでしまう。
楽屋から長い廊下を通り何人もの人とすれ違い大きな白い扉の前まできた。
「この先がホールだ。生徒は前の客席に座る事になっている。後ろのF以降は一般の人の席なので座らないように。なるべ
くみんなかたまって座るように。」
翔は注意事項を言い終わると大きな白い扉を開けた。
「うわあ〜。」
みんな感嘆の声をあげる。
ホール内はSNOWドームの名の通り真っ白でそこには雪が降っていた。
モチロン本物の雪ではない。
触れる事もできない映像の雪。
「すごくきれい。」
不思議と暖かいような感じがした。
聖歌学校主催のニューイヤーコンクールは聖歌学校の生徒全員が唯一参加する聖歌学校最大の行事でありそれと同
時に天界での一大イベントでもある。
そのうえコンクールは聖歌学校の卒業試験も兼ねている。
『それではこれからニューイヤーコンクールをはじめます。まず聖歌学校長の話です。』
「私…校長先生はじめて見たよ…。」
「ちょっとハゲてるね…。」
聖歌学校では入学式は行われないので一年生たちは今日初めて校長先生をみた。
その校長先生は70歳を過ぎてから亡くなり天使になった珍しい人である。
天使のほとんどは10〜30代の人なのである。天使は年をとらない不老不死(一度死んでいるが)なのであまり年上を敬う
という感覚がない。(みんな結構いいたいことを言うようになっていく…)
プログラムが進むにつれてさくら達の緊張が増していく…。
「さくらちゃん!なんか私すごく緊張してきたかも…」
「かなちゃん…私もだよ。」
そしてさくら達と同様に手に汗を握っていたのが客席の後ろに座っていたヒロだった。
聖歌学校の伝統で一年生の発表は最後ときまっている。
これには理由がある。
最後から二番目が9年生である。その後にまだ総練習量の少ない一年生がうたえば9年生が少しは引き立って見える。
もう、あとのない9年生のための伝統なのである。
その最後の1年生クラスの発表が近づいている。
「おい!みんな、ダンスの振り、歌詞、忘れてないだろうな?」
「おー!!」
「んじゃー後は発表するだけだ。今まで俺たちはよく練習してきたと思う。結果よりもまず楽しもう!行くぞ!」
「オー!!」
『最後の発表は一年生クラスのみなさんです。曲目はパーティーしよう!です。
それでは一年生クラスのみなさん!どうぞ!!』
アナウンスの後さくら達はそろそろとステージに立った。
ステージから見渡す景色は客席から見たときは違って熱を…熱気を感じた。
さくらはガラにもなく足がカタカタと震えていた。
(――ヤダ。私、震えてる。違う、これは緊張しているから震えているんじゃない。ワクワクしているからだ。
自信がある。
今まで練習してきた、その時間の長さの分の自信が。
「さくら。――緊張してるのか?足、震えているぜ。」
曲がかかるまでの何秒かの間に翔が話しかけてきた。
「――ううん。全然。これはわくわくしてるからなの!!」
「俺もだ!!ワクワクしてんだ、俺。こんなに自信がをもてるなんて思いもしなかったよ。」
2人はクスリと笑い、顔を見合わせた。
それと同時に曲がかかった。
一年生クラスが踊り始める。
そのステージの上の光景に校長先生、客席は声をあげて、身を乗り出して驚く。
かつてステージの上で一度も繰り広げられることのなかったダンス。
そのうちダンスに歌もあわさり曲はどんどん盛り上がっていく。
何時の間にか客席からの拍手が加わり会場全体がひとつになっていく――。
楽しい。
もっとうたって踊っていたい!!
楽しさとくすぐったいくらいの緊張があわせ混じる。
それはさくらの心に快感を呼ぶ。
今、会場がひとつになっているとさくらは肌で感じ取っていた。
発表が終わり、一年生クラスは客席へと戻る。
「緊張したけど気持ちよかったね〜!!」
「うん、うん!みた?客席の驚きよう…。」
みんながいっせいに笑う。
お互いの顔を見合わせ再び笑顔…。
和やかな雰囲気。
「さくらちゃん達の発表すごかったね〜!!」
興奮冷め遣らない海がヒロの右隣で騒ぐ。
ヒロは何も言わなかった…が顔は、顔はやさしい表情をしていた。
一年生クラスは審査の結果が出るまでの間休憩時間をとっていた。
「ねえ、ヒロ。さくらちゃんにあってきたら?」
海はいつもの笑顔で…でも真剣な声でヒロに言う。
会場か休憩時間でざわついている。
「さくらちゃんは、ヒロのこと…覚えていないかもしれない…でもヒロはずーっと待っていたじゃない。
何年も。もう、あってもいいと思うよ。」
海の顔から笑顔は消えていた。
ヒロはうつむきしばらく考え込んで首を横に振った。
「まだ…今はあえない。俺が…俺が嫌なんだ。まだ…。」
ヒロはうつむいたまま低い声で答えた。
その空気はピーンと張り詰めていて切れそうで、もう切れそうなところで…でも、今は、まだ…早すぎて。
その想いはいつか誰かに届くのだろうか…
ブザーが鳴り会場は少しずつ静けさを取り戻していく。
「ヒロがそう言うならいいけど…。でも、もう好きなときにあえるんだからあいたくなったら遠くからじゃなくて、ちゃんと…。」
樹あの優しさに、優しい言葉にヒロは笑顔になる。
ときどきしかみせない、初めてみせた、あの日の笑顔――。
「海、ありがとう、ごめんな。」
『それでは、審査結果を発表します。それでは校長先生おねがいします。』
客席の真ん中にある審査席から校長先生がひょっこり立ち上がる。
会場内にふる映像の雪は絶えず積もることなく振り続ける。
会場内にはたくさんの人の不安と期待が入り混じる。
「聖歌学校のせいとのみなさん、今日のこのコンクールで一年間やってきたことを全て出し切ることができましたか?
この一年間ツライこと、大変な事いろいろあったでしょう。その努力の結果を今から発表したいと思います。
今回のコンクールはとてもレベルの高いものとなったと思います。そのハイレベルなコンクールで堂々の優勝を果たしたのは
---!!1年生クラスのみなさんです!!一年生クラスのみなさんは今まで誰も取り入れる事のなかった新しい要素を取り入れまし
た。そしてそのダンスは一年生クラスのみなさんのうたに何倍もの力を与えていたように思います。これはニューイヤーコン
クール優勝に値すると思います。」
「キャー!!!!!」
驚きと喜びの一年生クラスはSNOWドーム全体に響くほどの大声をあげた。
かなは泣き出し、翔は暴れ、さくらは思いっきり優勝を誇らしげに感じていた。
手を取り合い喜びをを分かち合う---。
校長の高評の後会場から大きな大きな拍手が起こった。
一年生クラスはその拍手の中手をつなぎ喜びをつないだ。
今までの努力が結果となって現れた時だった。
さくらは仲間と笑顔をかわす。
またも久しぶりの更新です。
ふー、やっとコンクールおわりました。
これで、とりあえず聖歌学校編終わりです。
そして次回からはヒロ、海が(たぶん)たくさん出てきますよ。
次回は早めに更新したいです。
モドル