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| 10月の終わりに、ようやく我が家の永住権が下りました。永住権とは、「永住ができる権利」ということであり、ニュージーランド国民と同じように医療や教育を受けたり、働いて収入を得る権利を獲得し、選挙権さえ与えられます。 日本に日本人として住んでいるとあまりピンと来ませんが、外国に滞在するためにはなんらかの種類のビザ(入国許可)とパーミット(滞在許可)が絶対に必要です。ニュージーランドへの観光客がビザという手続きを踏まずに入国できるのは、日本のパスポートを持っている観光客は3カ月以内ならビザ手続き不要、という取り決めがあるからです。永住権が下りたということで、私たちのパスポートにはそれぞれ、Returning Resident's Visaと、Residence Permitというステッカーがはってあります。 私が永住権を申請中だというと日本の友人たちから、「じゃあ一生ニュージーランドに住むということ?」とよく聞かれましたが、永住権はCitizenshipとは違います。Citizenshipはしばしば「市民権」と訳されるので分かりにくいですが、ようするに国籍のことです。永住権をとってから3年ニュージーランドで生活すれば市民権を申請して、「ニュージーランド人」になることが可能になります。しかしもしそうなれば、日本は二重国籍を認めていないので、原則として日本国籍ははく奪され、「日本人」ではなくなってしまいます。私たちは日本人をやめる気は毛頭ないので、「ニュージーランドに住みたければずっと住める」という永住権で十分なのです。 |
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これまで我が家の滞在許可の基盤となっていたのは、夫が働くことを許可するワークビザです。夫のワークビザがあるからこそ、娘はスチューデントビザで義務教育として学校に通えるし(外国留学生扱いだと年間数千ドルという学費が要求される)、私もワークビザ保持者の配偶者としてのビジタービザで長期滞在ができたのです。 ワークビザは、1年とか2年といった期限ごとに更新しなければなりません。更新も、書類を出せばOKという簡単なものではなく、雇用主は本当にこの外国人を雇う必要があるかを証明するために、新聞に求人広告を出したり、雇用の必要性を説明するためのレターを提出したりすることが要求されます。特にこのところ審査が厳しくなっており、去年大丈夫だったのに、今年はだめだったという人の話さえ聞きました。 更新ごとに大丈夫かひやひやするのはいやだし、とりあえず当分はニュージーランドに腰をすえようと考える私たちは、無犯罪証明書、健康診断書、戸籍謄本の英訳、英語の試験の結果表などをそろえて、去年7月に永住権ビザを弁護士事務所を通して申請しました。自分たちで申請することも可能ですが、法律がからむ煩雑な書類のやりとりがあるので、弁護士を使うことにしたのです(移民局とのやりとりは、弁護士が窓口となって代行してくれる)。 しかしちょうど私たちが申請したころ、急激に増える移民の増加をストップさせようとする移民局が、永住権に関する法律を変え始めました。日本では考えられませんが、この国では、法律が一夜にしてころっと大きく変わります。 例えばこの11月中旬にも、「永住権の仕組み、変えちゃったからね!」というあっという驚く発表がありました。永住権にはいろいろとカテゴリがあり、私たちが申請したもっとも一般的なジェネラルカテゴリは、年齢、学歴、職歴や現地での雇用先の確保などによるポイント制で、点数さえクリアしていれば時間はかかってももらえるものでした。ところが今度の改正でこのカテゴリは廃止され、すでに仕事を持っている人(それも優先的に、ITや教育、医療関連といったニュージーランドが必要としている職業)が、ニュージーランドで生活をしているうちに、移民局の方から「永住権の申請をしてもよい」と声がかかるのを待つ、という仕組みに変わったのです。以前から10年振りの大変革、といわれているほど抜本的に仕組みが変わることは告知されていたのですが、あまりにも駆け込み申請が多かったらしく、来年からという話だったのに早まったようです(そういうことを移民局は結構ひんぱんに平気でやる)。おそらく永住権の取得は、ぐっと難しくなるでしょう。でもしばらくしたら、また簡単になるかもしれません。とにかく、猫の目のようにくるくると変わるのが、ニュージーランドの移民法なのです。 そういう事情で、永住権がとれるまでは、なんだか腰掛け感覚というか、先が見えない不安がまとわりついていました。弁護士からは「申請当時の条件は満たしているから、大丈夫。いつかは出る」と言われていましたが、いつ法律が変わって申請済みの分まで却下されるか、分かったものではありません。数カ月でとれると思いこんでいたのに待たされ続けただけでなく、私たちより後に申請したり、ポイントが低い人が永住権を先にもらったという情報を聞くたびに、ため息がでました。いざとなれば日本に帰ればいい、という安心感はたしかにありますが、それはそれでなんとなく宙ぶらりん、という思いをずっと抱き続けていたのです。 1年4カ月にしてやっと永住権がもらえて、「これで落ち着ける」という感じで本当にやれやれです(なぜこんなに遅くなったかは結局分からない)。「こんなにいらいらして待つのはもういやだ。もし永住権がとれなかったら私は帰る!」と独りで決心して、帰国セール用に家具や電気製品の値段リストまで作ってしまっていました。とはいえ、不安を抱いて待ち続けた時間というのも、今だから言えることではありますが、貴重な経験でした。なにしろ、日本という母国の有り難さ、空気のように当たり前だった働いたり学校に通う権利のすばらしさをしみじみ味わうことができたわけですから。 それに、人生には無駄なことってないんだなあってつくづく思います。なんとなく出た大学も「もっと目的意識をもって学部を選んでちゃんと勉強するんだった」と悔やんでいたけれど、永住権申請の時に「配偶者が学士取得」という1ポイントにはなりました。また、これまではビジタービザだったので働けませんでしたが(もし働いたら「不法労働」になる)、だからこそ2年間は専業主婦を楽しむことができました。 |
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日本で外国人が永住権を取るというのはとても難しいだろうし、私たちに永住権を与えてくれたニュージーランドに感謝、というところですが、永住権が取れた今でも「ニュージーランドに住むということが正しい選択なのだろうか」と時折思います。私たちは日本企業からの駐在というわけではなく、外国に住んでみたい、新しいことをやってみたい、という自分たちの意志で移住しているだけに。特に娘に関しては、2年たった今でも英語はまだまだ片言で、意志の疎通も日本語ほどスムーズにはできず、それでも9時から3時はまったくの異文化の学校で過ごさなければならないというのは、どれだけの精神的負担をしいているか、自分たちには経験ないことだけに心配です。 でもとりあえずは、これまでやってきたように、家族で悩んだり、話し合ったりしながら、いよいよ3年目に突入したニュージーランド生活を手探りながらも楽しいものにしていきたいと思っています。ということで、いよいよ本格的な「移住生活」が始まるなあ、とうれしさ反面、新しいことに挑戦していきたい、なにか始めなきゃという緊張を感じることも、私なりにあったりする今日このごろなのです。 |
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