その3 クリスマスがやってきた(2003.12.23)
  いよいよ、1年のクライマックスともいえる、クリスマスシーズンがやってきました。子供たちは12月の中旬から1月下旬までの夏休み中です。宿題はほかのホリデイと同様、一切ありません。 バーベキューに海水浴、旅行にキャンプ、と夏を満喫するのに大忙しです。
 よく日本にいる知り合いから、「夏のクリスマスってどう?」と聞かれます。たしかに蝉がジージー鳴くし、お日さまが痛く感じるほど照りつけますが、サンタさんは見なれた格好だし(暑いだろうけれど)、やっぱりトナカイのソリでやってきます。体験してみるとそんなに私には違和感がありません。
パーティーにつきもののクリスマスクラッカー。両側を引っ張ると、紙の王冠とちょっとしたおまけが飛び出します 。

 ただクリスマスの位置付けは日本と違います。以前、日本にクリスマス時期に旅行したという女の子としゃべった時に、クリスマスにディズニーランドに行ったというので、「寒かったし、混んでいたでしょう」と言ったら、「それよりなにより、カップルばっかりだったのでびっくりした」とのこと。そういえば日本にいたころは何の疑問も違和感も抱かなかったけれど、日本ではクリスマスといえば恋人たちのための日、という観があります。一方、こちらでは家族が集う日でなので、どちらかというと、お正月と似ています。

クリスマスまで1日ずつ窓を開けて(チョコレートが入っている)、カウントダウンをしていくカレンダー。12月24日生まれの娘にとっては、自分の誕生日のカウントダウンでもあります 。

 11月の終わりごろから、キウイ(ニュージーランド人のこと)たちは、親戚や友人へのプレゼントを買うのに走り回り、ショッピングセンターはこの時期だけは夜中まで営業して大にぎわいです。買ってきたものを自分で包むのが普通なので、大量のプレゼントを準備する、というのが、時間的にも金銭的にも結構大変です。テレビで「明日は朝7時から夜中まで営業!」といった店のコマーシャルを見るたびに、買う方も売る方も大変だなあと同情してしまいます。コマーシャルはクリスマスセールだけでなく、ローンの広告も増えます。商業主義にまみれ、クリスマスの本来の意味を失っている、という批判がないことはないのですが、大多数のキウイにとってはそんなことはかまっていられないようです。
 そして24日のお店は最後の買い出しの人々で大晦日のようなにぎわいを見せ、25日当日はぱったりと人の行き来がとだえ、静かになります。料理が、七面鳥、クリスマスプティング、骨付きハムと、ある程度決まっているのも、おせちに似ています。
 我が家は別に親戚がいるわけでなし、知り合いだって知れているので、キウイたちの奮闘振りを横目に、あちこちで開かれるイベントに参加して、クリスマス気分を味わいます。
 11月30日は、オークランド恒例のサンタパレードがありました。大阪でいうと御堂筋といった街の中心のクイーンストリートを、企業や団体のフロートが練り歩くものです。客観的にいってしまえば、ただ、怪獣やら妖精やらピエロやら子供たちが練り歩くだけです。ディズニーランドの一糸乱れぬダンスによる完璧なパレードを見てしまうと、なんだか物足りないのですが、これがオークランドにクリスマスの到来を告げる、由緒正しき行事なのです。

サンタパレードの最後は、もちろんサンタさん。

 12月初めには、近所の図書館の「クリスマス・ストーリータイム」に行ってきました。ストーリータイムとは、たんなる読み聞かせだけでなく、話し手が音楽やダンスも取り入れて、物語を聞かせてくれるものです。たいていの図書館でいつもは幼児向けに平日の午前中にやっています。今年も妖精がやってきて(ニュージーランドでは「プロ」の妖精やピエロの派遣サービスがある)、クリスマスのお話を音楽に合わせてやってくれました。1つ目は北半球の寒いクリスマスのお話、2つ目はクリスマスにつきものの「ジンジャーブレッドマン」のお話、そして3つ目はなんと、日本の「笠地蔵」だったのです! このお話を聞いた数十人の子供たちの心に、日本の昔話を聞いたという思い出がちょっとでも残ってくれたらうれしいことです。
 このストーリータイムには去年も参加していたのですが、1年で娘の英語力もだいぶ伸びたようです。子供の苦労を見守るしかなかった親としてはうれしい限り。「ジンジャーブレッドマンを作るのに、何を入れるかな」という妖精の問いに、すっと手を挙げて「ジンジャー!」と答えた娘に、感動してしまった親ばかです。そしてさらに、「M&M」と冗談で答えた人がいて笑いが起きたのですが、なぜ笑いが起きたか分からなかった私に、娘が「チョコレートのエムアンドエムだよ。こっちの人、早く言うからねえ」と教えてくれたのでした(私には「えむなむ」としか聞こえなかった)。
   12月13日には、これまた毎年恒例の野外クリスマスコンサートに行ってきました。いろいろな歌手や有名人が出て、クリスマスソングやヒット曲を歌います。のんびりとポテトチップスやイチゴなんかをつまみながら、家族連れやカップルがクリスマス気分を楽しみます。最後は派手な打ち上げ花火でクライマックスです。
 このコンサートをはじめ、色々なイベントがフリーなのは、企業の広告活動の一環であるだけでなく、様々な団体への募金活動でもあることが多いです。日本のお正月に笠地蔵のおじいさん、おばあさんのような奇跡が起きないのと同じように、クリスマスに奇跡が起きて、だれもが急に豊かで幸せになるわけではありません。ニュージーランドはその牧歌的なイメージとは裏腹に、貧富の差が実は非常に大きい国です。オークランドの10人に3人の子供は、親にクリスマスプレゼントを買ってもらえないほどの貧困の中にいる、と何かの記事で読んだことがあります。そういった恵まれない人たちへプレゼントや食事を贈るために募金をして、クリスマスの気持ちをわかちあおう、という活動があちこちで行われるのです。

オークランドドメインで行われたクリスマスコンサート。

 さて、いよいよイブの日の夜寝る前には、クッキーとミルクを置いておくと、プレゼントを持ってきてくれた時にサンタさんがちょっとかじっていきます(忙しくて全部食べる時間はないということらしい)。ついでにニンジンと水を置いておくと、トナカイさんも喜びます。神妙な顔で準備をする娘との幸せのひととき(加えて、娘が寝た後のサンタさんが来た証拠作り)は、あと何回ぐらい持つことができるのでしょうか。
 我が家では、3回目となるニュージーランドでの年末年始を、キャンプ地で過ごして、夏を満喫する予定です。それでは皆さん、どうぞよいお年をお迎えください。

クイーンストリートの本屋さんには毎年、巨大なサンタさんが出現)。

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