その10 「知る」ということ(2004.7.31)
 この9月でニュージーランドに住み始めてから満3年を迎えることになります。自分自身はちっとも変わっていないようで、やっぱり変わったと思う点もいくつかあります。もちろんニュージーランドに住み始めたという影響が大きいですが、忙しかった会社勤めをやめて、専業主婦をしていることも大きく関与しているでしょう。時間の感覚も、金銭感覚も、ファッションも、行動範囲も、とにかくすべてが変わりました。

 なにより変わったなあと我ながら思うのは、国際的な情勢に関心を持つようになったことでしょう。なにしろここは移民の国です。私の担当の歯医者はイラク出身だし、学校でよく話すお母さんはインド人です。娘が通う小学校には45の国籍の子供たちがいるそうで、娘のクラスにも私が知っているだけで、パキスタン、フィジー、中国、ロシア、アメリカ、南アフリカからの移民がいます。娘にとっての「国」の感覚と、私が持っているそれとはたぶん、全然違うものになるでしょう。

 私が身近に感じるようになった国としてはまず、地理的に近いオーストラリアがあります(残念ながらまだ行ったことはない)。感覚的にオーストラリア旅行は国内旅行に近いようで、シドニー2泊599ドル!といったパックが販売されています。キウイの人生初の海外旅行はオーストラリアであることが多いはずです。その一方、結構、オーストラリアに対して複雑な感情(ライバル意識がありながら、でも明らかに自国より大きい国ということで遠慮もあるし、という感じ)を抱いている気もしています。

今年は冬でも晴天の日があって、ちょっと得した気分です。7月の冬休みに出かけた時に、シティにあるアルバートパークで撮影。
 さらに、イギリスはもちろんもとの領主国で、「母なる国」の存在です。コインの肖像も女王様、6月には女王のお誕生日が祝日になります。ダイアナ妃はまだまだ根強い人気がありますが、ブレア首相はイラクがらみでかなり反感をかっているようです。

 その一方、フィジーやサモアといったパシフィックアイランドの国々とは、ニュージーランドが「大国」として、移民を受け入れたり、医療や教育を援助したりといった密接な関係にあります。こういった国では学校教育は英語で行われているそうで(小学校の知り合いのお母さん談)、言語に対する感覚そのものが違うのを感じます。日本ですべての授業を英語で行う学校が出てきているという新聞記事を読んだ時、「そんなバカな」と思ったのですが、すでに世界では実践されていることだったのでした(日本で本当にそういう教育が必要かといえば、私個人としては疑問ですが)。

 加えて、移民がたくさん来ているインド、中国、韓国、南アフリカはとても身近な国になりました。また、娘の学校で英語を教える保護者ボランティア活動に参加して、アフガニスタン出身の子供を担当したことで、難民問題に関してもすっかり敏感になりました。というより、日本ではそういった事柄について考えたことがなかったのです(ニュースなどで見聞きはしていましたが)。

同じ日にダウンタウンで、レトロな床屋さんを発見!
 一方、距離的にもそして精神的な意味でも意外と遠くなった国がアメリカです。といっても、世界で一番大きな影響力を誇る国ですから、もちろん情報はあふれています。たくさんのアメリカ制作の番組が流れているし、新聞でもあれこれ動向が報告されています。でもなんというか、距離感の置き方が日本と違っていて、やっぱりヨーロッパ寄りのスタンスを保っているように感じます。ただ、今度の大統領選は私個人としては興味深いです。もし民主党に政権が移った場合、いったいイラクは、そしてアメリカそのものがどう変わるのでしょうか(それとも変わらないのか)。
 でも、いくらいろんな国のことを考えても、これといって何もできない自分がいるのも事実です。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」ではないけれど、バングラデシュで洪水があったと聞いては心配し、スーダンで少なくとも3万人が虐殺され、100万人が村を追われたと知っては胸をいため、ただただどうしたらいいのか分からずにおろおろしている感じです。

 それに、ニュージーランドの中でも、虐待、学校退学者の増加、貧困による病気感染など、様々な問題があります。冬を迎え、オークランドできちんとした家がない(ガレージを住居としていたり、複数の家族がひしめきあって住んでいたりする)子供が3000人もいる、という事実とその援助の寄付を訴えるテレビコマーシャルが頻繁に流れていますが、その子役が本当に幸薄そうで、見るたびに胸が締め付けられます。
 また、つい最近20歳以下の子供たちへの無料の予防注射の接種が始まったmeningacoccal(日本語では「髄膜炎菌性髄膜炎」というらしい。発音は、カタカナだとメニンジャコカル。)という病気で、ニュージーランドではこの20年で220人がなくなっているそうです。たとえ回復しても、壊死した手足を切断したり、脳に深刻な後遺症が残ったりという恐ろしい病気です。新聞によると、はっきりとした感染原因は分かっていないとのことですが、すし詰めの劣悪な住宅環境と貧困が関連していることが指摘されています。このため、予防接種もマオリとパシフィック系の人が多く住む貧しい地域からまず始まっています(このあたり、急ぐところからやってしまうというのがいがにもニュージーランドらしいという気がしないでもない)。
 娘の学校でも来年には接種が行われるらしいですが、安全性がどうなのか、また調べないといけません。

冬の朝、ふと庭を見ると、自然の芸術作品を発見して、ちょっと感動。
 こうやって、一つの関心事から、いろいろな事実を知っていくと、まだまだ私が気付いていないいろいろな事件や問題があるなあと痛感します。たとえば、最近雑誌で読んだ記事に、フェアトレード活動があります。ダイアモンドはテロリストの資金源になることが多いので、きちんと生産ルートが表示されているものを買うようにするとか、家具に使われる木材も熱帯雨林を乱伐したものは避けるといった、先進国の一員として高い意識を持った消費者になろうという活動です。

 当分こういった「大物」は買うつもりも予定もないのすが、同じ記事にコーヒーについてもありました。コーヒーの栽培にかかわる発展途上国では、今、需要と供給のバランスが崩れて、作っても作っても損をしてしまう、でも売らなければ金にならない、という悲惨な状況につきあたっています。その苦境を救うために、正当な価格(つまりある程度の利益が期待できる)で買い取る非営利団体が出てきました。そういった団体による製品は当然価格が高いのですが、可能な限り第三世界の犠牲を強いず、まだ単なる援助ではなく、対等な関係で経済的に支援していくことを目指しています。ニュージーランドは欧米に比べると、このFair Tradeの浸透はかなり遅れているそうです。日本ではどうかと思って「フェアトレード」をGoogleで検索してみたら、なんと32,000件もヒットしてびっくりでした(http://www.fairtradecenter.org/ が日本での活動を詳しく紹介していました)。さすが日本!
 日常のスーパーの買い物一つとっても、こうやっていろいろ考えたり、知識として知っておくべきことがくさんあるわけです。家族の健康を守る責任者として、遺伝子組み替え商品を取り扱っている企業は避けたり、なるべくニュージーランド産を買うようにしたり、添加物をチェックしたりするのは、たいした手間ではないのですが、時々、「あーなんにも考えずに、安いというだけで買えたらどんなに楽か!」と思ったりもします。けれど、知った以上、知らないふりを自分にすることもできません。ということで、たいしたことはなんにもできないけれど、それでも私なりに情報を集め、私なりに考え、私なりに様々な問題への手助けをしていければいいなあと考えています。

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