その19 電気をめぐる考察(2005.8.7)
 このところ天気が良く、8月だというのに、真っ青な空に、ぽかぽかと心地よい日差しの日が何日もあります。ニュージーランドでは7、8月が真冬です。オークランドは温暖な海洋性気候のため、真冬でも零下になることはありませんが、とにかく冬は雨が多く、毎日、毎日、雨と風が吹き荒れます。道路の排水が悪いのか、大雨が降ると、ちょっとしたくぼ地がすぐに池と化して、カモが何気なくスイスイと浮いていたりします。道路も巨大な水溜りとなって、自動車は水につかりながら徐行運転というのも日常茶飯事。さらに暴風雨の後は、電信柱が倒れたり、木が折れて、道路閉鎖というのもよくあります。
 なのに今年は、雨が少ないばかりか、雨を心配せずに外に洗濯物が干せる日まであったりします(高速道路の浸水騒ぎはすでにあったけれど)。いつもなら9月に盛りの木蓮や桜、桃なども、あちこちで花を咲かせています。
 なんだか得した気分ですが、この国は水力発電がメイン。雨が少ないと、夏に電力不足になることがあります。特にオークランドは、急激な人口上昇と電力需要の拡大についていけず、このまま対策をこまねいていては、2010年(あと5年!)には深刻な電力不足が必至とのこと。高圧線を新たに引く予定地では、鉄塔設置用の敷地をめぐって、住民と電力会社の間でもめにもめています。どうなることやら。


なんだか春が来たみたいに、あちこちで花が咲いています。
 火力が強く、経済的とされるガスは、オークランドではだいぶ浸透してきたとはいえ、まだまだガスが引かれていない地域が多く、家庭のキッチンコンロや給湯なども電気が主流です。「オール電化」と銘打って宣伝している日本の反対で、ガスは「お湯がいつまでも出る!」のが売り物の新しいエネルギーなのです(タンクにお湯をためる仕組みの電気給湯は、日本人感覚で文字どおり「湯水のごとく」使っていると、すぐにぬるくなってしまう)。
 そしてこの電気がよく停電になります。以前、夜の10時ごろに2時間ほど停電になったことがあったので、翌日学校で、知り合いのキウイのお母さんに、「停電で大変だったよー」と訴えたところ、「あら、ろうそくがなかったの?」とあっさり言われてしまいました。いや、もちろんろうそくはあったのですが、「そうよねー、夜に停電は困るわよねー」とあいづちを打ってほしかったんです。キウイは停電に慣れているんだなあと、実感しました。
 お昼の停電も何回か経験があります。いちばん長かったのは、この間のホリデイ中に、郵便ポストに突然、「3日後の8時30分から12時30分まで工事で停電になります。ご了承ください」という通知が来た時です。「どうせ、時間どおりにならんだろう」と甘く見ていたら、たしかに9時ごろに工事チームがやってきて、我が家の道路をはさんで向かいの電信柱によじ登り、なにやら工事が本当に始まり、電気が切られました。もともと出かける予定があったので娘と外出し、12時ごろに戻ってきたら、まだわいわい工事をやっています。結局電気が戻ったのは2時過ぎでした。家で仕事をしている人なんてどうしていたんだろうと、人事ながら心配になってしまいました。

冬になると、魚屋さんで生きたウニが売られています。まな板に載せるとむずむずとうごめくほど新鮮。割って(当然夫の仕事)、内臓を洗い流しながら身を取り出して(これは私の仕事)食べます。甘くて、とろっとしていて、おいしい!


 夫にいたっては出張先の田舎で一晩停電になって、まっ暗だし、暖房器具も電気だからつかないしで、なかなか大変な思いをしたそうです。
そういえば、夜中に突然断水となっていて、顔も洗えなくて、ミネラルウオーターで難をしのいだこともありました。日本で暮らした方がはるかに長いのに、そんな経験は阪神大震災の時以外はほとんどなかったと思うと、日本のインフラの信頼性、安定性に改めて感心します。

1号線を南へ走っていると、ワイカト流域からの電気を運ぶ鉄塔が延々と並んでいる。
 そんなわけで、ニュージーランドで暮らすなら、ろうそくは必須ですが、こちらでは、欧米文化のごたぶんにもれず、正式な食事や、ロマンチックな雰囲気の演出には、ろうそくがかかせません。インテリアやキッチングッズのお店をのぞくと、様々なデザインのろうそく立てと、色とりどりのろうそくが置かれています。
 そういえばこのあいだ、テレビで古い映画「ミザリー」をやっていたので見ていたら、主人公の作家(自動車事故による足の大怪我で動けない)が、看護をしてくれるのはいいが、あれこれ恐ろしい仕打ちをするエキセントリックな女性から逃げ出すために、睡眠薬をワインに入れようとするシーンがありました。女性を席から外させるために作家が言うのが、「せっかくの食事だから、ろうそくがないと」というもの(正確ではないが)。女性も、「そうそう、そうよね。取ってくるわ」といそいそと部屋を出て行くのです(結局作戦は、女性が薬入りワインをこぼして飲まなかったので失敗する)。
 日本の女性誌で「ろうそくを使った素敵なテーブルコーディネート」なんかが載っていたりしますが、ごく当たり前にろうそくをつけて、食事を楽しむ、という習慣はまだまだ定着していないでしょう。「せっかくのディナーだからろうそくが欲しいな」と、遊びに来たボーフレンドに言われて、「忘れていたわ、取ってくるわね」と答えられる女性はそんなにいないはず。日本だと、ろうそくといえば仏壇用とか、花火の点火用とか、せいぜい結婚式のキャンドルサービスとかで、日常的に演出の道具として使うことはまたまだ少ないように思います。

8月初めの土曜日に、恐竜展を見にオークランド博物館に(娘が恐竜にはまっているので)。恐竜展は化石がレプリカだったりしてちょっと期待はずれでした(実は私も恐竜は好きだった)。

広島・長崎原爆の展示もあって、なかなか盛況でした。7歳の娘には、ショッキングかつ難しすぎたようですが。
 我が家はロマンチックな状況には縁遠いので、ろうそくはもっぱら停電対策用ですが、それでもたまーにつけることがあります。ほんのりあったかくて、ぼわんとした灯り、ゆらゆら揺れる影なんかを、ぼーっと眺めるのもなかなかいいものです。

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