昔の映画が見たくなるときがある。

ぽっかり時間の空いてしまった休日の午後、普段ならTVやらゲームで時間をつぶすのだが、そんなものでは心満たされないぽっかり空いた穴が自分の中にあるのを発見する。
そりゃあ何もかもうまくいけばいいけど、辛さにじっと耐えなきゃならないときだってあるものだ。
特に誰かが自分に愛想つかして、立ち去ってしまったとき。
そんなときには大甘で、嘘だらけの情けなく都合の良い物語に慰めてもらう。
ぼくの場合、それは1971年フランス映画「ラムの大通り」に決まっている。

「ラムの大通り」原題“Boulevard du Rhum”は「冒険者たち」で知られるロベール・アンリコが監督の歌あり、チャンバラありの賑やかなコメディだ。原作はジャック・ペシュラルの自伝的小説「ラムの大通り」だそうだが、残念ながら末読。誰かお持ちの方がいらっしゃれば貸して下さい。

舞台はアメリカが禁酒法時代のカリブ海。
男は純情一途な密輸船の船長。運ぶのはラム酒。
行き詰まったインテリの逃げ先がヤクザか船乗りなのは古今東西変わらない。男の中の男という役どころ。
女は無邪気で気ままなハリウッド女優。どこまでも軽く浮気で憎めないファム・ファタール。
演ずるのは男がリノ・バンチュラ。女がブリジッド・バルドー。
はまり役です。ロベール・アンリコの演出はモタモタ、フラフラと頼りないが、この二人はあまりにも嘘っぽい役柄を圧倒的な存在感で演じきっております。華やかさと切なさと上品さがこの二人にはある。

音楽は「冒険者たち」でも印象的だったフランソワ・ド・ルーベ。主題歌が聞けるバルドーの結婚式の場面は最高だ。女は港で男を待っている、とバルドーが歌うと、船乗りたちが「俺の恋人は海だ」と唱和する。止まったようなのどかな時間。マッチョな男の世界。

バルドーの可憐さがたまらない。とんでもない女に惚れたバカな俺。歌のひとつや二つにごまかさられては駄目なのに。
当然ながらバルドーが男を待つわけではなく、何も言わず去っていく。

ラスト、スクリーンの中でバルドーが歌う「愛の歓び」。いつしか共演者の顔がバンチュラに変わっている。甘美な思い出をありがとう。愛していたわ。
これはロベール・アンリコのロマンチックな「救い」なんだろうけど、甘すぎるね。
現実はそんなもんじゃないぜ。もっともっと厳しいもんだよ。現実逃避するなよ、愚か者。
でも、ぼくは切実にこの甘さを求める。利口になるわけじゃなく、経験を積むわけじゃない。夢を見て、自分をごまかして感傷的になる情けない人生だ。でも、それでまた明日から生きていくんだよ。ああ。

 

製作 ゴーモン・インターナショナル・フィルム
1971年度フランス映画

原作 ジャック・ペシュラル
監督 ロベール・アンリコ
製作 アラン・ポワレ
脚本 ピエール・ペルグリ
   ロベール・アンリコ
撮影 ジャン・ボフェティ
音楽 フサンソワ・ド・ルーベ

キャスト
リンダ・ラルー    ブリジッド・バルドー

コルニー           リノ・バンチュラ
サンダーソン        ビル・トラバース
ハモンド           クライブ・レビル
 

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