抒情小曲・思い出
婦人世界編輯局選
臺湾 安良城繁子
ポトリ
雨だれの微かにも落つ
外はたヾ沈黙なる春の宵
静寂と哀愁と
甘き憂ひと
淡き憧憬 ・・・・・
思ひ出づ
乙女なりし日
何時の宵
何時の夕なりしか
かかる一ときありしを
ポトリ
雨だれのしのびやかに落つ
外はたヾしゞまなる春の夕
八十年ぶりのこの久志芙沙子作品の発掘・復活は、
多数の方々の積年のご好意・ご尽力によるものです。
深く感謝申し上げます。
合掌 閑古鳥 幻聴
制作者:
ページ Kankodori-Gencho
Model Figure Unknown
讃 歌
・・・・・
南海に乙女あり
その名をツルと為す
ツルの野望の大いさ その幾千里なるかを知らず
化して作家を志望するや 雅号を芙沙子と為す
芙沙子の気概 その幾千里なるかを知らず
怒して飛べば その翼は垂天の雲のごとし
この乙女や 海の動くときすなわち まさに南冥にうつらんとす
南冥とは天池なり
・・・・・
・・・・・
Do not stand at my grave and weep.
I am not there. I do not sleep.
I am in a thousands of winds that blow.
・・・・・
Do not stand at my grave and cry.
I am not there. I did not die.
・・・・・
解脱
『白根の坂』は、解脱の坂・・・・・

1972年(昭和47年)初秋・・・・・
久志芙沙子は、なんの前触れもなく、突然、旭区中白根のわが家に現れた。
齢は ・・・ もはや、古稀寸前 ・・・・・
全長 400メートル ・・・ 初めて訪れるこの「白根の坂」を ・・・ 息を切らし、
しかし、ココロ躍らせながら、のぼっていったと思われる。
邂逅
『白根の坂』は、別れの坂・・・・・
25歳と2歳で別離後、四度目の対面にして、初めてだれに気兼ねすることもなく、
なんの恐れを抱くこともなく、秋晴れの爽やかな気持ちで訪問できる・・・
あと・・・数十メートル・・・この坂の上で、腰を伸ばし・・・
辿ってきた愛憎の紆余曲折を、遥かに・・・遥かに・・・かえりみたに違いない。
最後の「あがき」と「解脱」は、あの 1968年(昭和43年)、乾坤一擲の勝負。
そして、辿りつき、いま、この坂の上に幻視する・・・ deja vu ・・・・・
あ・ぁ ・・・ この街は ・・・ い・つ・か ・・・ 夢・で・み・た・こ・と・が ・・・ あ・る。
「悲しみよ ・・・ そして、あの苦しみの日々よ ・・・ さようなら ・・・・・」
一期一会
『白根の街』は、想い出の街・・・・・
『最近は、なにもかも、うまくいく・・・・・』
久志芙沙子は、木の香も新しい部屋でくつろぎ、
天井を仰ぎ、何度も、何度も、長・ながと吐息をつく。
息子夫婦と、共に食事をとり、風呂に入れてもらい、人生を語り・・・
そう・・・人生を語り・・・・・
数十年におよぶ屈曲の後、漸く、いま、手にする至福 ・・・ 黄金の時が刻々と流れる。
翌朝の別れ ・・・・・
「また、来てくださいね ・・・・・」
そして、この四度目の邂逅が、最初で・最後の母子団欒となる。
『一期一会』と題する遺稿を手にしたのは、1988年(昭和63年)、三回忌のあとである。
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