十三.ニルヴァーナ

 ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・
『ぺんでゅらむ』は ・・・ 謎に満ちている ・・・・
『ぺんでゅらむ』は ・・・ 西に揺れ ・・・・
『ぺんでゅらむ』は ・・・ 東に揺れ ・・・・
『ぺんでゅらむ』は ・・・ マッハの世界で静止する ・・・・
 ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 

うッおッ・、つッ・うッおおお・おッオオオーッ・・・・
おッ・おッ・おッおおお・・・・おッおッおオオオーッ
・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 

「もしもし・・・もしもぉーし・・・・
・・・・しっかり
・・・・しっかりして、下さい・・・・」

おッ・・・・
ボクは・・・・われにかえりました・・・・
あッ・・・・

心配そうな顔をした・・・「迅来迎」の阿弥陀如来と二十五菩薩・・・それに、沢山の童児たち・・・上から覗き込んでいます。

ぺんでゅらむの振幅が・・・・,
あぁ・・・もう・・・ほとんど・・・ゼロに・・・・

「いいですね・・・もう・・・いいですね・・・・」
はッ・・・はいッ・・・・
「では・・・合掌して戴きますが・・・その前に、簡単なテストをします」

てッ・・・て・ス・とッ・・・浄土にいくのにも・・・テストがあるのですか

もちろんですとも・・・次ぎの言葉を・・・ご存知ですね・・・・

なんじら人を裁くな、裁かれざらん為なり。
己が裁く裁きにて己も裁かれ
己がはかる量にて已も量らるべし。

「あなたは、江戸の仇を長崎で・・・とか、しっぺ返しがあるから・・・などと曲解されていたようですが、
本当の所は・・・これは、あなたの好きな拡大「作用・反作用原理」なのです。
裁いていること自体が、即、裁かれていることなのです。
裁いていること自体が、即、裁かれていることなのですから、バランス・シートの平衡は、すべて・・・その場、その時で成立しています。
しかし、あなたの意識の中では、その「作用・反作用原理」が、全く認識されていませんので、その意識のズレを調整して差上げようというワケでして、
いわば・・・浄土のサービスとして、テストを実施しているのです・・・・」

ふうーむ・・・・なるほど・・・・
そういえば・・・なん年もかけて、素人目にはアホらしいような判決を下しているのを、よくニュースでお見かけ致しましたが・・・
あの時、ボクは・・・あの立派な椅子や、スゴイ衣裳、道具立てに支えられ方々が・・・とても、気の毒に思われましたね。
裁いている方々が、まるで、裁かれているような妙な錯覚を起こしたことがあります。

「そんなことは・・・どうでもよろしい・・・では・・・いきますよ1・・・・
まず・・・『相対性原理』とはなにか、根源的観点から、簡潔に述べて下さい」
そッ・・・相対性原理・・・じょ・・・浄土で、そんなものがいるンですか・・・・
「もちろんですとも・・・浄土も、宇宙の一部です・・・浄土の理法は宇宙の理法であり、宇宙の理法は浄土の理法なのです。
宗教は科学とは無縁などという輩がまだいるようですが、それは自分たちの不勉強を必死になって隠蔽しようとしているだけなのです。
浄土もまた相対性原理と量子力学の要請と合致していなければなりません。
それに、あなたは・・・生前、方々で『相対論』と『量子論』を振り回して、人々を困らせたという罪科が、
すでに、事実として調べがついています・・・ですから・・・・」
そッ・・・相対性原理・・・とは、アインシュタインが・・・・
「落第です・・・根源的観点を欠いています・・・・
時間がないから、正解例を示しましょう・シャーリプトラの『二っの葦束は相依りて立つ』でも揚げて戴けば、及第という所でした」

「では、第二問・・・いいですか・・・『量子論』とはなにか、根源的観点から、簡潔に述べて下さい」
ええーッと・・・一九〇〇年十二月十四日・・・マックス・プランクが・・・・
「落第です・・・根源的観点を欠いています・・・・
これも、正解例を示しましょう・・・・まッ・・・般若心経の『色即是空・空即是色』でも揚げて戴けば・・・・」
はぁ・・・般若心経・・・・?
どッ・・・どうして、般若心経が・・・量子論と・・・・
「『色』から『空』・『空』から『色』・・・この往復の関係が、『交換関係』として顕われでているものが・・・ボソン・・・であり、
この往復の関係が、『反交換関係』として顕われでているものが・・・フェルミオン・・・であるという解釈です・・・・
『色即是空・空即是色』の・・・トポロジカルな内部溝造の分析・・・あのアハラーノフ・ボーム効果が観測・確認されて以来・・・この観点は、
二十一世紀の・・・思考パラダイムとして・・・・ えッ・・・あッ・・・そう・・・えエーッ、ここで残念ですが、後が混んでいるそうですから、先に進んで下さい」

「あぁ・・・もしもし・・・こッちですよ、こッちですよ・・・・ えエー、ここでは、浄土への旅立ちの前に・・・あぁ、あなたが『ぺんでゅらむ』にたぶらかされている間に、
空白となった・・・あなたのおぉ・・・おおー・・・現世ニュースを、補完致します・・・つまり、これも、浄土サービスの一環なのです・・・・」
ふっ、ふーむ・・・・
「ええーッと・・・・あッ、これか、ええーッ・・・・
そう、そう・・・まず、沖縄から、海兵隊が全面撤退しました・・・・」
ええーッ・・・どッ、どうしてッ・・・・
「あッ・・・あの事件を、ご存じない・・・・ いや・・・なに・・・またまた、女子小学生を・・・ということですよ・・・
とにかく、日本女性は武装していないから・・・安心して襲えるワケでしょう・・・・
大抵は泣き寝入りしてくれるそうですし、それに、罰せられても、刑罰が軽いから・・・・
いわば、結果的に、犯罪の誘致もやっているような環境ですから・・・・
『思いやり予算』とかいって、厚遇しているツモリでいると、感謝されるどころか軽蔑されるのが世界の常識というものです。
第一、相手は『思いやり』などという受け取り方をしていないハズです」

同じことの繰り返しですか・・・・

「いや、いや・・・そんなことは、ありません・・・・
今度は・・・被害者の女生徒が・・・家族・近所の人たちにも支えられて・・・被害の姿、そのままで・・・行進の先頭に立ったのです・・・
それで、基地被害の他の女性たちが・・・それぞれの被害の・・・半裸・全裸の姿・・・そのままを再現して・・・老若の女性たちが・・・
続々と加わって・・・行進の規模が、驚異的に膨れ上がりまして・・・ま、その映像が、繰り返し、繰り返し・・・全世界に報道されました・・・
それで、基地は、もう、機能停止状態・・・
・ いやーッ・・・あの映像の衝撃は・・・・」
全世界ッていっても・・・被害状況、そのままでは・・・・
イスラム圏あたりでは・・・女性の肌は・・・・

「そんなことは、ありません・・・インターネットがあります・・・・
クリントンのセックス・スキャンダル報道の一部を規制した中国ですら・・・人権問題として・・・放映されています・・・・
衝撃映像は・・・文字どおり、全世界に流れのです・・・・
そして、全世界の女性たちが・・・立ち上がったのです・・・・
米国からは、naked protester たちが、大挙参加しました。
やっぱり、アメリカの人たちは偉いですねェ・・・・
被害者の・・・あの女子小学生の・・・姿は・・・暴行とか・・・強姦とか・・・そんな表現を・・・・
遥かに・・・超えていました・・・随分、殴られたようですよ。
イメージ戦略も成功しました。

以前、暴行されて殺された少女の握り拳の『旗じるし』が、何度も、何度も、close up されました。
彼女の拳は、雑草の束をしっかりと握り締めていたのです。
この旗じるしを見て、慟哭しない人がいるでしょうか」
デモの先頭に立っては・・・女生徒の将来が・・・・

「そんなことは、ありません・・・そんなに勇気のある女性なら・・・
将来、うちの息子の・・・結婚相手にと・・・全世界から、婚約申し込みが殺到しています・・・・
世界中の・・・小中学生・・・本人からも・・・婚約して下さいッて・・・プロポーズが続々きています・・・・
ここに・・・フィガロの切り抜きがあります・・・もう、フランスでは、ジャンヌ・ダルク扱いですよ」

最初、加害者は・・・合意の上であったとか、ことが終わった後、相手はThank you といったとか・・・握手までしたとか、
必死になって、お決まりの辻褄合わせをしようとしたのですが、これは新たな侮辱です。
偶然、防犯カメラにことの始終が鮮明に写っていまして・・・・
まッ、基地などでは、びッしりと、防犯カメラの砲列を敷いて置くべきでしょう」
「まッ・・・次ぎにいきましょう・・・・
ええーッと・・・これがいいかな・・・・
アメリカ政府が・・・広島・長崎の犠牲者に・・・正式謝罪致しました・・・・」
ええーッ・・・どッ、どうしてッ・・・・

「どうしてッて?・・・当然じゃありませんか・・・・ 鯨だって、もっと人道的に扱われていますよ。七万人とも、八万人ともいう人間を一瞬に焼き殺したんですよ。
これは、だれが見たって戦争犯罪ですよ。
もっとも、謝罪の原因は、複合的です・・・・
人類史始まって以来の・・・・大虐殺・・・ということで、例のなんとかブックで、トップに指定されたこともあります。
もう一つは、広島・長崎の犠牲者の霊が、現状では、まったく、浮かばれないという国際的な共通認識が確立したこともあります。
謝罪するに至ったことには、キリスト教徒の人たちの貢献が大きく関わっています。
キリスト像を・・・あらめて、ご覧下さい。
磔刑の姿・・・苦悶の姿・・・ある意味では、敗北の極点の姿・・・そのままを・・・演出しているといえるでしょう・・・
それが、宗教的勝利の象徴に転化したのです・・・・

敗北が勝利へと・・・反対物に転化しえたのは、加害・被害の実態をそのまま、表に出したからです。
広島・長崎も・・・犠牲者の姿・・・そのままを、表にだしはじめたのです。
東京大空襲の惨状も・・・どんどん、生の姿で伝えられはじめています。
これは・・・いわば、拡大「作用・反作用原理」です。
象徴的に表現することは・・・偽りです・・・欺瞞です・・・あの大虐殺を、他の残虐行為と・・・
比較・足し算・引き算・・・して、値引きしたり、直視を逸そうとすることも欺瞞です。

原爆による広島・長崎壊減は・・・根源的視点からは、ただの大規模残虐行為です。
これは、連合国の軍事的勝利の姿であり、日本軍国主義敗北の姿と一般的には解釈されています。
しかし、これを・・・西欧文明・道義の勝利の姿と主張するならば、それは即、西欧文明敗北の姿となります。
このような、人類史始まって以来の、大虐殺によって、初めて、欧米植民地主義に追随してきた東洋の一弱小国の締めだしに成功したという勝利の視点・・・
座標軸によって・・・・
それは、そのまま、直ちに・・・欧米植民地主義敗北の姿となります。
そして、戦後の植民地の歴史はまさにそのように進行しました。
そして、今、まさにイラク・イランにおいて、欧米イデオロギーは敗退しつつあります。
繰り返しましよう・・・・

原爆による広島・長崎壊滅は・・・根源的には、ただの人類史上未曾有の残虐行為です。
しかし、もし・・・・
[前提]この残虐行為は、日本民族に対する勝利である。
と主張するならば、拡大「作用・反作用原理」によって、この主張からただちに・・・・
[結論]広島・長崎壊滅は、日本民族勝利の姿である。
が導きだされます。

いいですか・・・[前提]を省いて[結論]だけを引用・論評すると、阿弥陀如来は・・・・ 著作権その他で告訴する権利を留保しますよ。
まッ・・・平たくいって・・・反原水爆運動で・・・よくあるように・・・ジャップとか、
お前たちの方が先に手を出したんじゃないか ・・・ Remember Pearl Harbor ・・・ もう一度落としてやっても、いいんだぜとか・・・罵られたら・・・
その途端、原爆による広島・長崎壊滅は、ただちに、あなたがた日本民族の勝利の姿となるのです。

反原水爆運動というものは、本来、崇高な全人類的視点から行われているものです。
これに対して、大体、お前ェらが先に仕掛けたんだから、集団で焼き殺されても仕方がないだろう・・・という視点には、崇高な精神性が全く認められません。
その心根の崇高さ・卑しさの対比で、原爆による広島・長崎市民虐殺は・・・そのまま、直ちに日本民族勝利の姿となるのです。

一連の正式謝罪の・・・複合的原因の中の最大要因は・・・
まッ、強いていえば・・・中国共産党の日本共産党に対する正式謝罪が、きっかけになったといえるかも知れませんね。
代々木の本部で、正式に、しかも盛大に行なわれました・・・・
これも・・・ニュースで、大々的に・・・全世界に・・・・」
えッ・・・そんなこと・・・あったんですか・・・・
「過ちは、すでに、認めていたんですから・・・謝罪というのは、当然の流れともいえるでしょう・・・さすがは、中国・・・正しい歴史認識と懐の深い所を見せました。
続いて、疵嚇諸島と難詐諸島鳥を、それぞれ、日本とフィリピンに返還しました。
カンボジア大虐殺における文化大革命イデオロギーの関与についても、責任を認め、謝罪しました。これは、補償も行われるようです。
これらで、中国のイメージが・・・一変したのです」
えッ・・・疵嚇諸島が・・・一旦は、中国領に・・・・?
「中国の政・官・財に深く食い込んだ石油メージャー資本が、米中覇権の合作で、日本から取り上げて、中国領にしてしまったのですが・・・
党が返還へと動いたのです・・・それを受けて、日本政府、フィリピン政府も・・・難詐の場合は、複数の政府が関与しましたが、
これら地域の共同管理へと・・・あぁ、不正確な用語はご容赦下さい・・・浄土関係者は・・・現世の用語に弱いのです」
うっッ・・・ううウゥゥーン・・・世界も変るンだなぁ・・・・
どうして・・・そんなに、うまく・・・・
「うまくというより・・・仕方なしに、そうなったんです・・・・ プルトニウムが拡散してしまったのです。

核爆弾などは・・・高校生でも作れる時代になっちゃったので、もう、国家・民族・エスニック・グループ間の憎悪解消しか、
人類の破滅を防ぐ手立てはなくなったのです。
コロラド州リトルトンのコロンバイン高校の銃乱射事件・・・あの事件でも、容疑者たちが本当に入手したかったのは、プルトニウムだったではありませんか。
原水爆を使った「自爆テロ」も不可避の情勢となってきたのです。
ですから・・・一連の謝罪が次ぎから次ぎへと連鎖反応、シャクシャインの乱以降のアイヌ指導者、ウーンデッド・二ーのインディアン代表の各謀殺、
カンボジァ大虐殺への文化大革命の関与など・・・中国がよく日本にいう通り、歴史認識には期限がありませんから・・・
すべて、事実が調べ上げられ、事実を透明にした上で、相互謝罪が、続々と行なわれています・・・・

そう、そう・・・あの評判の悪い・・・スーパー・239条も・・・撤廃されました」
あぁ・・・あの気に食わない国は、不公正と極め付けて、ウラニウム239爆弾で、ふっ飛ぱしてしまえッ・・・とかいう・・・あの威勢のいいヤツですね。
「あッ・・・それから・・・日本関連では、パール・ハーバー奇襲攻撃の歴史認識に関する謝罪のニュースがあります」
日本政府が、また、謝ったんですね・・・・
「いいえ・・・アメリカ政府が、謝罪しのです」
そんな・・・ばかな・・・一体、なぜですか・・・・

「戦時中のプロバガンダそのままのSneaky Jap の刻印を放置し続けた責任です。
この刻印は、日本軍国主義者たちにではなく、日本民族全体の上に押し続けられているのです。アメリカは、
日本人俘虜のシベリア連行に対しても、謝罪しています」
「あれは、ソ連に責任があるのでは?」 「その通りです。強制連行による六十余万人の奴隷労働、六万人余の死亡という人類史上前例のない蛮行に対して、
ソ連もロシアも鈍感だから反省する可能性は全くありません。同盟国のそのような非人道的行為を認めていたアメリカが謝ってくれたのです。
日本人は全く関与していなくても、日系企業の中でセク・ハラが行われれば、莫大な慰謝料を払わされて当然という観点からは、
Sneaky Jap の刻印放置やシベリア抑留容認は重大な犯罪という見方が成立して当然でしょう。
刻印放置は、民族の上に焼印を押せば、永遠に謝罪を続けなければならなくワケですから、大変好都合だと思う人たちがいて当然です。
日本人は悪魔の末裔であるなどという主張すらありますから、赤ちゃんたちにまで、焼印を押したワケです・・・
ですから、日本人であるということは・・・つまり、日本人として生れたというだけで、
即、金属バットで殴り殺されて当然という風土が最近まで密かに温存されていたのです。
もっとも、時々、中国の人が間違って殺されたりもしたようですが・・・・」
日本政府が、申し入れたんですか・・・・

「あッ・はッ・はッ・・・そんなことは・・・絶対、ありえません・・・・
アメリカ政府の主導によるものです。日本政府というのは、自分の国の国民を護ろうとしないという点で、
世界でも珍しい政府に属しています。つまり、日本政府というのは、日本の政府のように見えますが、
実は、アメリカ政府・・・時には、中国政府なのです。それでこの場合には、アメリカ政府が、ついに、見かねてというか・・・
実は、困り果てて・・・限りなく、「イエス・イエス」と、すり寄ってくる日本政府が不気味に思えて、
困り果て・・・日本国民のために・・・日本政府の役割をしてくれたわけです・・・・
そうしないと、不吉な状況が、日本国民の間に醸成されると、賢明にもいち早く読み取ったともいえますが・・・
日本政府が・・・アメリカ政府であり続けたために、仕方なしに、アメリカ政府が、日本政府になってくれたわけですよ・・・・
その点が・・・アメリカという国の偉大なところなんですね。
そこへいくと、中国は、まだまだ民度が低いところがありますね。
『日本鬼子』などという言葉を放置していますからね」

「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・」

「まッ・・・とにかく・・・地球のことは、もう、ご心配なく・・・・
えッ・・・量子計算機・・・それは、もう、実現が近いと聞いています・・・・
とにかく・・・そろそろ、旅立って下さい・・・・
はいッ・・・その蓮華座の上に乗って・・・そう、そう・・・・
立ってても・・・座ってても・・・はいッ・・・どちらでも・・・・
結果には・・・まったく、影響しません・・・・」

ボクは・・・「ぺんでゅらむ」を見つめました・・・・
なかなか、止まりません・・・・

ぺんでゅらむが・・・なかなか止まりませんが・・・・
「あッはッはッは・・・あれは・・・止まらないのですよ」
どうして・・・・?
「量子力学の『ゼロ点エネルギー』により、静止なんてことは、本来、ありえないのです」
あッ・・・そうか・・・すっかり、忘れてた・・・・
「では・・・合掌して下さい・・・・
ぺんでゅらむでも・・・見つめて・・・そう、精神を統一して・・・・
大きく・・・息を・・・吸い込んで・・・そう・そう・・・・
では・・・いきますよぉーッ・・・・」

「あッ・・・ちょっと、待って下さい・・・・
下の方に、大きな黒い影が見えますが、あれはブラック・ホールではありませんか?」
「下の方という考え方に問題はありますが・・・つまり、宇宙にも浄土にも上とか下とかいう概念はありませんから・・・
しかし、あなたの足元、蓮華座の先の黒い影・・・あれは、おっしゃる通りブラック・ホールです」
「ボクは・・・あのブラック・ホールに吸い込まれていくんじゃありませんか」

「失礼ながら・・・あなたは、相対性原理を全く理解しておられない。
ブラック・ホールが存在すると見るのは、あなたが蓮華座に乗っていて、重力に逆らっているからなのです。
そして、その視点からは、『ブラック・ホールは間違いなく存在し、あなたはブラック・ホールに吸い込まれていく』ことになります。
もう一つの視点・・・蓮華座を取り払って、ブラック・ホールへ落下してゆく者としての視点・・・からは、
『ブラック・ホールは存在せず、ブラック・ホールに吸い込まれていくことはありえない』ことになります」
「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・?」
「あなたは、ブラック・ホールに吸い込まれてゆく人は『助けてくれぇーッ』などと叫ぶに違いないと思っておられるでしょう。そんなことは、原理的にありえないのです。
ブラック・ホールに吸い込まれてゆく人にとって、ブラック・ホールなどは存在しないのです。ですから、『助けてくれぇーッ』などと叫ぶワケがないのです」
「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・?」

「これから、浄土へ旅立とうというような時に、こんな初歩的なことを議論しなければならないのも理科学教育の欠陥が現れていると考えられます。
しかし、みんなから愛されている浄土サービスの担当者として、ちょっと解説をしておきましょう。
あなたは、宇宙船の中の無重力状態をテレビでよくご覧になっておられましたね。
そこで、質問です・・・・その重力はどこへいってしまったのでしょう?」
「どこかへ・・・いっちゃったとしかいいようがないんじゃないですか」
「重力に対しても、税金に対しても、その程度のいい加減な考えで済まそうという所に現在の日本の危機があるんですよ」
「税金の方は、天下り官僚のポケットの中に納まっていますね。
重力の方も、行き先が分っています。ちゃんと姿を変えて納まるべきところに納まっているのです。
どこかというと、それは、座標系・・・視点・・・の中です」
「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・?」

「重力は、視点・・・座標系・・・つまり、あなたの中に潜り込んでしまったので、
その視点で物事を見ている世界の中では、重力が消失してしまているのです。
重力は、見られる方から、見る方へと立場を変えてしまったので、見えなくなってしまったのです。
比喩的にいえば、重力は・・・見られる対象物から、見る方・・・『網膜』へと立場を変えてしまったのです。
網膜は、世界の中で直接見ることができない唯一のものです。
この分析の視点では、全宇宙は、『見られている世界』と『見ている網膜』の二極に分裂しているワケです。
重力は『見られている世界』から『見ている網膜の世界』へ引っ越してしまったので、『見られている世界』の中からは、姿が消失してしまったのです」
「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・」 「なぜ『重力』が、視点・・・座標系・・・の中に潜り込んでしまったのかというと、
視点・・・座標系・・・の中心にいる観測者が・・・『重力に従って、落下しつつある』からです。つまり、宇宙船が落下しつつあるからです」
「宇宙船は、落下してこないではありませんか」
「そんなことは、ありません。宇宙船は絶えず落下を続けています。
地上に墜落してこないのは、毎秒・毎秒、落下する分だけ、水平に移動して、地表から遠ざかっているからです。
宇宙船の楕円軌道運動とは、『落下すること』と『遠ざかること』の統一・・・二つの矛盾概念の弁証法的統一・・・なのです」
「・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・」

「まぁ、今日の所は・・・こんなことでいいでしょう。
そろそろ、出発しないと・・・・
では・・・合掌して下さい・・・・
はいッ・・・ぺんでゅらむを・・・見つめて・・・そう、精神を統一して・・・・
大きく・・・息を・・・吸い込んで・・・そう・そう・・・・
では・・・いきますよぉーッ・・・・」

あッ・あッあぁあアアアァァ・・・・ッ

浄土へいくのだから・・・ボクは・・・浮き上がるとばかり、思っていたのです。
ところが、辺りの光景では・・・ボクは・・・落下していくのです。
あッ・あッあぁあアアアァアー・・・・ッ
ところが・・・目をつぶると・・・体は、確かに、浮き上がっていく感じなのです。
あぁ・・・そうか・・・ボクは、気がつきました・・・いま教えてもらったばかりではありませんか・・・
重力に従って落下する座標系では・・・重力場は消失・・・無重力状態になるのです・・・・

あッ・あッ・・・・ッ
ボクは・・・目の前の『ぺんでゅらむ』の異常な運動に気付きました・・・
往復運動を続けていた『ぺんでゅらむ』が・・・大きな円形の回転運動になってしまっているのです・・・
そうでした・・・宇宙船の中の・・・無重力状態では・・・振り子が回転運動に変ることは、いつか、テレビの教育番組でみたことがあります。

途端に・・・ボクは・・・思いだしました・・・・
ナーガールジュナ・・・龍樹尊者の・・・著書・・・・
ムーラ・マディヤマカ・カーリカー・・・根本中論頌の・・・一節です。
それは・・・「行った」・「まだ行っていない」の概念検証として、

『行きつつある時に、行くことはできない』

という謎の主張です・・・・
行きつつ、ある時に、行くことができるとすると、行く主体が二つあることになってしまうというのです。
・・・・ ・・・・ ・・・・
そうか・・・・
・・・・ ・・・・ ・・・・

『落下しつつある者は、落下することはできない』
ということなのだ。
『落下することはできない』・・・・どころか、落下を認識することもできないのだ。
ボクは・・・いま・・・重力の制約から・・・解脱しているのです。

前方から・・・途方もなく明るい光が・・・射してきます・・・・
加速度座標系では・・・真空中でも・・・前方から・・・光子が飛来してくる・・・・
物理の本で読んことがあります・・・その時、観測されている光のエネルギーは、
実は・・・観測者が加速されることにより供給されているエネルギーであると・・・・

そうか・・・・
ポクが見ている世界は・・・ボクに見られている世界なのだ。

ボクが見ている「視力表」は・・・ボクに見られている「視力表」なのだ。
だから・・・ボクは、「視力表」を媒介者として、自分の「視力」を見るのだ。

ボクが見る「虹」は・・・ボクに見られている「虹」なのだ。
だから・・・ボクは、「虹」を媒介者として、自分の「可視光範囲」を見るのだ。

だから・・・ポクは、「世界」を媒介者として、自分自身を見ているのだ。
そして・・・その「双対」として、「宇宙」は「ボク」を媒介者として、「宇宙自身」を見ているのだ・・・・

これは・・・あのディラックが、導いた『人間宇宙原理』のエッセンスなのだ・・・・
「目玉」が見る「宇宙」の年齢が、どンぴしャり、奇蹟の百五十億年であるのは・・・・
星の進化による「目玉」発生に、どンぴしャり、百五十億年必要だから・・・・
「目玉」が「宇宙」を観るとき、「宇宙」は・・・「目玉」を媒介者として・・・「宇宙自身」を観るのだ。
「目玉」が「宇宙」を観るとき、「目玉」は・・・「宇宙」を媒介者として・・・「目玉自身」を観るのだ。
そして、この視点こそ、二十一世紀に持ち越された前世紀最大の謎『EPRの背理』解決手法の・・・核心・・・なのだ・・・・

そうか、このようにして・・・観念論と唯物論とは・・・実は、同一物だったのだ・・・・
このようにして・・・ボクと宇宙とは・・・同一物だったのだ・・・・
このようにして・・・『ぺんでゅらむ』と円運動とは・・・同一物だったのだ・・・・
そうか・・・どうも、おかしいと思ったが・・・・
『死につつある者は・・・・死ぬことはできない・・・・』
は、実は、そういうことだったのだ。
このようにして・・・実は・・・『生』と『死』とは・・・同一物だったのだ・・・・

阿弥陀如来、二十五菩薩、沢山の童子たちの・・・大合唱が聞こえてきます。

浄土へと・・・向う以上・・・・
ボクも・・・なにか・・・気の利いたことを・・・唱えなくては・・・・
そうだ・・・正法眼蔵でいこう・・・・

仏道をならふといふは・・・・自己をならふなり。
自己をならふというは・・・・自己をわするるなり。
自己をわするるといふは・・・・万法に証せらるるなり。
万法に証せらるるといふは・・・・

あぁ・・・・なんだッたッけなッ・・・・あとが・・・・でてこないなッ・・・・思いだせない

あッ・・・・聴こえてくる・・・・聴こえてくる・・・・

あぁーッ・・・・

くるる・るるる・crrrr・・・・
くるる・るるる・crrrr・・・・
くるる・るるる・crrrr・・・・

あぁ・・・・親・・・・子・・・・孫・・・・
鶴の家族たちの・・・・
精一杯の生命讃歌・・・・

あぁーッ・・・・
浄土へと導く・・・鶴の大群だ・・・
須弥山を超えていく、鶴、鶴、鶴・・・・

あぁーッ・・・・
須弥山超えの大群・・・・
おぉーッ・・・・
陽光に映える・・・・峰、峰、また峰・・・・

「万法すすみて
自己を修証するはさとりなり」

道元だ、これが道元なのだ・・・・
そうだ、そうだ・・・・そうなのだ・・・・

ひたすら、努めよう・・・・
ひたすら、求めよう・・・・
ひたすら、羽ばたこう・・・・
もっと、高く、もっと、高く
遥かに、遥かに、高く、高く、高く
崇高な天空を目指そう
浄土の彼方にも・・・・必ず・・・・
なにかがある・・・・
なにかがある・・・・
なにかがある・・・・

・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 
阿弥陀如来の荘重な声が・・・聴こえる・・・・

「煩悩即菩提・生死即涅槃
浄土などは存在しない・・・・
あなたがいた『この世』の裏・・・さらに深い世界が・・・・
即、『浄土』なのだ・・・・」

そうか・・・・ボクは・・・いま・・・現世回帰の軌道上にいるのだ・・・

・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 
聴け、謡い、舞う鶴たちよ・・・・
如来のみ座に
いま、湧き起こる歓喜の声明
須弥山の霊峰に、
いま、どよめき渡る勝利の旋律
・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 


・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 
ばんざあぁい・ばんざあぁい・ばんざあぁい・・・・
・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 
あッ・・・・あぁあッあッあッぐうううウウウーッ・・・・
・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 
[終り]

[注1]
ブッダの最後の言葉の英訳・・・・
    Work out your own salvation
with diligence!
・・・・は、”Biddhism, Christmas Humphreys,
Penguin Books, p41” による。

[注2]
「ももと踏み揚がりや」の句など、
おもろ関連記述・・・は、
日本思想大系 18おもろさうし、
外間守善・西郷信綱、岩波書店 による。