vol 14 光より速く...アグネスタキオン


父サンデーサイレンス
母アグネスフローラ
母父はロイヤルスキー
兄はダービー馬のアグネスフライト
思わず小躍りしてしまいそうな血統馬...

つやつやと光った栗毛の馬体
うさぎの様に長い耳を折り曲げて
疾風に良く似合う長い耳...
ぐんとせり出した胸板
軽やかにすっと伸びる四肢
走り終わっても息を乱すことない強靭な心臓...
光より速く走るために
神様が用意してくれたもの

タキオンは輝くその栗毛で
競馬史をも駆け抜けた....

ラジオ短波杯2歳ステークス
ジャングルポケット、クロフネという
ライバル達を見事に打ち破り
年明け弥生賞では不良馬場にもかかわらず
楽勝の快進撃を続けて
無傷でのぞんだ皐月賞

いつからか彼は
光より速いとその名をとどろかせ
ファンの熱い期待を集める様になった。

脚元のちょっと弱い血統のもとに生まれながらも
持ち前の元気さで君はいつでも
回りの人間をちょっとだけてこずらせていたね。
ゲート入りを拒んでみたり
調教コースへ入るのも嫌だとダダをこねたり
それでも君は
だからこそ君は
たくさんの人間を巻き込んで
心地よい走りっぷりを
披露してくれたのかもしれないね
河内騎手に大事に大事に育てられ
皆の期待を一身に背負いながらも
見事に君は皐月賞を
快勝し4戦4勝を成し遂げ
光より早く走りぬけた。

みんなの夢は現実となるはずだった
光より速い栗毛のタキオンという馬が
数々の競馬史をこれから
ぬりかえていくはずだったのに...


必要以上に皐月賞のゲート入りを
嫌っていた君を
無理やり押し込んだ
厩務員は胸が痛んだだろうと思う
頭のいい君は
脚の故障に繋がることを
感じていたんじゃないかって....
あとで言っていたからね
だけど多分
そこまできたら
止められないのが競馬なんだ...

競走馬はその背中に騎手だけでなく
たくさんの人の思いと願いと夢を
乗せている。
それは想像を越える重さなのだ...

これからと思われた皐月賞で
君は有終の美を飾る
それは伝説の光よりも速い走りで
他者をよせつけることなく...

皮肉なことに
競馬史もあっという間に
駆け抜けてしまったね...

4月13日は君の誕生日
皐月賞で消えた伝説のターフ上のタキオンは
まだまだやっと5歳....
本当ならまだまだたくさんの
素敵なため息をつかせてくれたはずなのに...

たくさんのファンに見送られて
はじまった君の種牡馬生活。

サラブレットがサラブレットとして
生きる道は大きく二つ
一つはもちろんレースで好成績をおさめること
もう一つは、後世にその血を残すこと...
君は新たな伝説に向かって走り始めた
光より速いと言われた馬の後継者を
送り出すために...


走れアグネスタキオン
光より速く....




                 武ゆたこ

バックナンバー
vol.1「サラブレッド」
vol.2「仔馬の様なオグリ」
vol.3「エイシンサンサンの事」
vol.4「トップロードのくれたもの」
vol.5「夢の申し子」
vol.6「ナリブに白い花束を♪」
vol.7「マーベラスクラウンちゃんのこと」
vol.8「シルクボンバイエの野望」
vol.9「ベガはベガでもホクトベガ」
vol.10「ルドルフの涙」
vol.11「寂しがり屋の彼....」
vol.12「そよ風の名をつけられた馬」
vol.13「二度引退した幸せな馬」
vol.14「光より速く...アグネスタキオン」
vol.15「母の命をうけついだ馬」
vol.16「逃げて逃げて逃げて....」
vol.17「不思議な逃げ馬」
vol.18「繊細なひまわりフーちゃんの事」
vol.19「ローゼンガバリーの見た夢」