裏(うら)


第1話

あの人、足をけがしたんだ......そう気付く。
今のバイトを始めてからもう1年以上。1年以上も同じ交通手段をつかった通勤をしてると
「地下鉄で以前見たひと」なんていうジャンルの人も自分のメモリパックに登録されていく。

その、以前見たあの女性は足をケガしていた。
そのとき、「domestic violence」が頭に浮かぶ。もともと、彼女からは「負」のイメージしか 出てこない。まぁ地下鉄で一人で笑ってこれみよがしに明るい印象を振りまいている人がいるわけ ないんだけど。

自分と同じ駅で一緒に地下鉄を降りる。やっぱり彼女は「地下鉄で以前見たひと」だったんだ。 大体、恒常的に地下鉄に乗る人は乗る車両も同じになっていく。だからやっぱり彼女は幾度となく 地下鉄であう人ってわけ。

私の方が歩くのが早いから地下鉄の駅の構内では、どんどん彼女を後ろに引き離していく。 足音でわかるほど彼女は足をけがしている。

交通事故でもあったのかな.......

次の日、バイトオツカレサマーー!といった風に地下鉄に乗る。
深く席に腰掛けて、缶コーヒーを開ける。そしてコーヒーを飲みながら地下鉄の車内を 見回す。いつもみる専門学校の広告、週刊誌の広告。いつもの地下鉄そのものだ。
というか地下鉄がいきなりそんなに大きな変化するわけないんだけど。
そしてその変わらない風景の中に彼女はいた。


やっぱりけがしてる。

『地下鉄日記』より






第2話

貯金おろさないと。
時は正午。2時間目が終ったところ。所詮、キャンパスと家は目と鼻の先くらいの位置関係。 家に帰って昼ごはんを食べても、十分3時間目には間に合うし。
というわけで一旦、下校する。まぁ高校の時から、昼ごはんは家で食べてたからそのことに関しては まったく抵抗はない。高校の先生は黙認してたけど快く思っていなかったようだ。時折、不機嫌な 担任に苦言を言われたのはまだ記憶にあるところ。
先生ゴメンナサイ。高校から家に帰ってご飯食べて、午後の授業休んじゃって。
とは言ってもそんなのは数年前の話。時効でしょ。

そして、学校を出る。よく晴れた日に学校を飛びだしたのでとても気持ちいい。あーー 学校サボってデートしたいなぁ。でも相手がいないといけないし、さらに平日の学校をサボってくれる人じゃないとなぁ。 この学校は結構真面目な人多いから2重で無理なカンジだな。てかまずは相手だろ。相手がいれば交渉次第ってヤツだし。
貯金をおろしてセブンでおにぎりとサンドイッチとタバコを買った。 家に帰ってきたのは12時25分。1時からの授業には30分弱はのんびりできる。テレビを見ながら一人のんびりとご飯を食べて一服してたらもう12時45分。

しかたないや。

昼間のテレビさん、テーブルさん、時計さん、もう学校行かないと。もっとのんびりしたいのは山々なんですが こっちにも単位という制度がありまして。単位の世界も甘くないんですよ。ゴメンナサイ。

後期の初日ということもあってか、いつも生活してるはずの部屋の昼間の様子に名残惜しく部屋を飛び出す。

はぁー。学校かぁ。頑張りますかね。
歩を進める。

昼間の時計さん!しっかり時間を進めてくださいね。

『10月1日 正午』より





第3話           

午後5時40分
折からの雨の少々弱まり、私がバレーボールを半年ぶりにすることをまるで空は励ま してくれているよう。しかし雨が降っている。他の人はサークルには乗り気ではないはず。 あえてそのタイミングをつけばどうにかなるはず。

午後6時5分前
やっと市民センターに到着。ここの市民センターは今年の7月に出来たところ。てかどこで靴を 脱ぐんだ?さらに何階に体育館があるんだ?

午後6時5分
やっと体育館に到着。冷たい視線を感じるが、荒天と平日のサークルということもあり 現在私を含めて5人。よし!いける!
バレーボールは言うまでなく最低2チーム12人でプレーするもの。かつてしっかりサークルに行ってたころ 水曜日のサークルは日曜日のそれとは異なりなんとか12人集まる程度の時もあった。 本当に人が集まらない時はゲームをやらず軽めに練習して解散orアフターにいってしまうこうと時々あった。

そう。どう考えても半年ぶりに真面目な運動するのにいきなりフルスロットルでいくことは 死に等しい。今日は荒天かつ平日。12人も集まらずのんびり体作りに専念したい。

午後6時20分
サークル開始。とりあえず、アップで疲れそうな予感。

その後
体操、ストレッチをしたらボールを使ってのアップ。パスをし始めた途端、足が動かないことに 気付く。全く安定しない。そしてひざも固すぎる。
はぁ少々体動かしていけばよかったな。
そのあとは、スリーメン、スパイク、サーブ。スリーメンは基本的に動きが悪い。もう無理。 全然思ったとおり動かない。ホントに自分の動きに腹が立つ。しかしあれだけの堕落した生活を していたのだから仕方ないか。てかそのあとも同様。スパイク全然打てない。サーブあんまり 届かない。とりあえず焦燥感と疲労がたまるばかり。

午後8時  ゲーム開始
なんとジャスト12人集まってしまった。疲労困憊とはこのことだ。はぁ。やばいな。
同20分  この文章を書くことを思いつく。もうこんなことを考えながら疲労を紛らわす しかない。
同30分  膝が微笑みだす。膝が笑い出したらホントに動けないが、膝に少し力が入らない 程度に動かない。つまり微笑んでいるカンジ。
肺もマックスに深呼吸ができない。煙草が効いてるのかな。
8時40分   
最後のゲームがなんとデュースに!えーーー。もう無理だ。
8時50分
サークル終了。オツカレサマ。もう無理です。

『バレーボールサークルの巻』より